鳥山さん、何やってんすか!?

黒巻雷鳴

鳥山さん、何やってんすか!?

「鳥山さん、何やってんすか!?」

 居酒屋店内の賑々しさに負けないくらいの大声で、年下の同僚に名前を呼ばれる。

 コイツの名前は…………んーと、誰だっけ?

「さっきから火を点けようとしてるの、煙草タバコじゃなくて割り箸っすよ!」

「んあ?」

 確かに、あたしが咥えているのは、1本の割り箸だった。

 ヤバいヤバい、相当酔いがまわってきてるぞ……空きっ腹にハイボール5杯は勇み足だったか。

 ん? チェイサーに伊佐美でも飲もうかな。

「にゃははは。ジョークよ、ジョーク」

「これだから、鳥山さんとサシ飲みするの怖いんすよ! 今夜はオレの愚痴を聞いてくれるんじゃないんすか!?」

「聞いてるよ? それを肴にして飲んでるんじゃ──すいませ~ん、伊佐美ロックでぇ!」

 近くを通った可愛い女の子の店員さんに注文してから、シガレットポーチを開けてケントの6ミリグラムを取り出す。バラ柄の型押しがお気に入りの愛用品は、もうすっかり馴染んで押し跡が気にならなくなった。

 煙をくゆらせつつ、同僚のどうでもいい話に相づちを打っていると、最初に頼んでいた焼き鳥5本盛りがやっと運ばれてくる。ねぎま、レバー、砂肝、ぼんじり、とりかわ──どれもいい感じに焦げ目がついていて美味おいしそうだ。先ずはレバーからいただく事にする。

「共食い……はむっ!」

「鳥山さん、毎回焼き鳥食うたんびにソレ言うの、勘弁してくださいよ」

「ふえっ? 言わなくても、そう思ってるくせにぃ……共食い……もぐもぐ」

 あたしの食べ方にケチをつけて苦笑いを浮かべる同僚。

 そして、やって来ない伊佐美。

 伊佐美はまだか!? ドリンクが先だろッ!

「ちょっとトイレ行くわ……」

「あっ、危ない!」

 よろけるあたしの身体からだを同僚が支えてくれる。

 けれどもそれは、優しさからだけではないようだ。

「……おい、やめろって。なに硬く・・してんだよ」

「は? ……いやいやいや! お尻に当たってるの、テーブルの角っすよ!」

「は? ……知ってるし!」

 掴まれていた手首を振り解く。

 かーらーの、盛大にリバース。

 自分でもビックリするくらいに全部出しきった。

「鳥山さん、何やってんすかッッッ!?」

 居酒屋店内の賑々しさに負けないくらいの大声で、年下の同僚に名前を叫ばれる。

 コイツの名前は…………んーと、誰だっけ?

 ほんと、いろいろとゴメンね。






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