異世界転生したので焼き鳥屋をやってみた 

OFF=SET

第1話

「へい、らっしゃい!」



 異世界に転生して半年。俺は焼き鳥屋を経営していた――――



「わぁ、これが話題の焼き鳥って食べ物かぁ」


「何か美味しそうな匂い」


「……お腹、すいた」


「ああ、お客さん達も焼き鳥、初めてで?」


「はい」



 旅人の格好をした三人組、剣を提げた青年、白いフードの女性、黒い三角帽子の小柄な少女。どうみても勇者とその御一行だ。

 カウンター席に座り、メニューを見ている。



「まあ、始めはモモや胸からではどうだい?」



 メニューで悩むのも仕方ない、この世界の人々は、焼き鳥という存在を知らないのだから。



「お、おまかせでお願いします」



 三人は声を合わせて言った。



「あいよ」



 炭が込められたコンロ、串に刺さった鶏肉を置く。



「ビールでいいかい?」


「え?」


「飲み物だよ、飲み物」


「あ、はい」



 焼き鳥にはビールが合う。ジョッキに注いだビールを青年の前に置く。

 スパークリングワインを白いフードの女性の前に、少女の前にはオレンジジュースを出した。


 しばらくすると焼けた鳥にタレをつけて再度コンロに乗せる。じゅわっと、肉の焼ける音と匂いが広がる。


 「わぁ」と、珍しそうに身を乗り出して三人は焼き場を覗き込んだ。

 その瞬間、店の窓や天井からモンスターが飛び込んできた。ワニの口をした大型のカエルのようなモンスターだ。


 この辺りでは珍しくないモンスターだが、今日は数が多い。



「お、お前ら」


「ここはおまかせ下さい」



 勇者とそのご一行は、カウンターを背に、戦闘態勢をとる。なんと頼もしい姿なのだ。




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