第一服 三午生休(伍)
ニャァァァ――ニャァァァァ――
雷の音にも関わらず、微かに聞こえた猫のような声。これは産声に違いない。そして、母屋に挙がるどよめいた声。おそらく安堵の声に違いない。続いて、ドタドタドタという足音が近づいてきた。
「
晴れやかな
ガチャン!
バンッ!
甲高い音がして、それと同時に障子が開いた。そこには喜色を浮かべる
「
「それは先日、おぬしが宗匠から譲って頂いた茶垸であろう?」
「はい……。思わず手ぇ放してしまいました……」
「まぁ、缺けてしまったものは仕方ない。直しに出せばええ」
「このカケをみる度に、
何を暢気なことをと
「志郎丸か」
「入ってよいか?」
「だんさん、もうかまへんで」
産婆に断りを入れて、部屋に入ると紗衣が赤子と並んで横になっていた。綿貫の上掛けから肩を覗かせて、脱力した汗だくの顔を見せている。
「だんさん、男の子です」
「よぅやったな、紗衣。よくぞ産んでくれた。ありがとうやで」
紗衣の手を取り、
「産後の肥立ちが悪うといかん、ようけ休むんやで」
「ありがとうございます。それで、この子の名前は?」
既に名前は決めてあるものの、
「
多呂丸のときはお七夜の前に命名書を明かしてしまい、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます