【分割版】数寄の長者〜竹馬之友篇〜
月桑庵曲斎
第一章 動乱前夜
序服 安赦帰堺(壱)
生まれしも帰らぬものをわが宿に
小松のあるを見るが悲しさ
紀貫之『土佐日記』より
上背が
「なんぞ……ごよ
店先へ掃除をしに出てきたのだろう。
「あんたさぁ、
その男は舌っ足らずに
「これ、
「もうし
「お前は変わらんな。皆、息災か?」
「そりゃぁもう。おぉ~い、
茂吉が店先から奥に声を掛けると、店の中から何事かと様子を窺う者が出始めた。近くの
斗々屋は鵆屋ある中浜筋を挟んだ向かいにあり、
「ところで――この
「はた――ぁあ! あンのキレでごぜますか」
これは母との思い出の品でもあった。印度更紗の中央にある千鳥の刺繍は母が幾日も掛けて仕上げている。囲炉裏の傍で刺繍をする母の膝に寝ぼけ眼で縋り付いていた子供時代が鮮やかに蘇ってきた。この千鳥を格子状に連ねたのが『利休間道』という白と紺の糸で織りだされた極細の縞地の名物裂で、大名物『松屋肩衝』の仕覆に用いられている。ここでようやく父が母を深く愛していたのだと気がついた。
「よいちろさぁが、このままぁにせぇ、と」
「伯父上が」
「あぃ」
茂吉が
故に
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