第七話 陸と謎の敵③

「私の幼馴染に何をしているのよ、お前……魔法『ファイア』!」


 聞こえてくる唯菓の声。

 同時、黒いゴブリンの顔面に直撃する火球。


「っ!?」


 そして気がつくと、陸はゴブリンから少し離れた位置に倒れていた。


(さっきの唯菓の魔法でゴブリンが怯んだのか?)


 それで咄嗟に陸の足を離してしまったに違いない。

 故に陸は放られる勢いで、ここまで飛ばされたというわけだ。


「陸!」


 と、聞こえてくる唯菓の声。

 彼女は陸の側へと駆け寄ってくると、助け起こしてくれながらすぐに言葉を続けてくる。


「怪我はない!? 大丈夫!?」


「唯菓が助けてくれたからね。というか、それはこっちのセリフだよ」


「?」


「唯菓こそ怪我は? かなりの勢いで飛ばされてたけど」


「油断しただけよ……あのくらい」


 と、そんなことを言ってくる唯菓。

 けれど、その表情は僅かに歪んでいる。

 やはりダメージを受けていないわけではないのだ。


(なんなんだ、あのゴブリンは……)


 ゴブリンとは思えない身体能力。

 さらには。


「グゲ、グゲゲ!」


 と、そんなゴブリンは平然としている。

 要するに効いていないのだ。


(唯菓の異能『エクスプロード』も、魔法『ファイア』も全く効いてる様子がない)


 耐久力が高く、ダメージがあまり通っていない。

 とか、そんな様子ではない。


 本当に効いている様子がまるでない。


(さっき僕の足を放したのだって、多分突然の攻撃に驚いて放したからだ)


 などなど。

 陸がそんなことを考えていると。


「陸、あの敵……攻撃が効かないわ」


 と、ちょうど陸と同じくそんなことを言ってくる唯菓。

 彼女は陸へと言葉をさらに続けてくる。


「異能も魔法も無効化されるとなると、打つ手がないわ……でも」


「うん、今回は退くわけにはいかない。あのゴブリンは人間かもしれないんだから」


「応援は呼んであるけれど、到着するまで耐えるしかないわね……いずれにしろ、陸は逃げなさい。レベルの概念のないあなたは危険よ」


「危険なのはわかってる。それと打つ手がないわけじゃない」


「……何かあるのね、作戦が」


 と、言ってくる唯菓。

 陸はそんな彼女へと頷き、作戦を話すのだった。

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