第六百十一話 空とあれから②

「あ、あーん」


 と、空はリーシャが差し出すスプーンを咥えた。

 その直後。


 バァアアアン!!


 響き渡るのは、テーブルを叩いたかのような音。

 胡桃だ。


 彼女はどこかぎこちない。

 見ていて恐怖を感じるようなスマイルで、空へと言ってくる。


「ねぇ空、どうしてここに集まったんだっけ?」


「え、えっと……ここ最近の情報の整理、だったような」


「うんそう、情報の整理。空は女の子とイチャイチャするために、ここに集まったわけじゃないわよね?」


「いや、別にイチャイチャは――」


「そうです、クルミ様!」


 と、話に参加してくるのはリーシャだ。

 彼女は胡桃へと言う。


「わたしとクウ様はイチャイチャしていません! わたしはクウ様を労わり、クウ様はわたしに労わられているんです!」


「どこがよ! どう見てもイチャイチャしてるだけじゃない!」


「仮にクルミ様が言った通り、わたしとクウ様がイチャイチャしているとしてです。それがクルミ様にどう関係があるのでしょうか?」


「あんた知ってるでしょ!? あたしはこいつのことが好きなの! 寝ても覚めてずっと考えてるくらい好きなの! そのあたしの前で何やってんのよ!」


 と、テーブルを叩きながら立ち上がる胡桃。

 そんな彼女に対し、リーシャも立ち上がりながら言う。


「クルミ様を見てれば、そんなのわかります! それと正直、わたしは今まで少しだけ……ほんの少しだけクルミ様に譲っていました」


「な、なにをよ?」


「クルミ様とクウ様は同じ世界の住人……最終的に一緒になるのなら、同じ世界の住人同士の方がいいのではと……でも!」


 と、今度はリーシャがテーブルを叩く。

 そして、彼女は珍しくも強気な様子で胡桃へと言う。


「ニホンと異世界が繋がった以上――いつでも行き来が出来るようになった以上、もう遠慮する必要はありません!」


「なっ!?」


「わたしもクウ様が……いえ、クウくんが大好きです! これからのわたしは聖女としてでなく、一人の女の子としてクウくんと接していきます!」


 そして余計に強まる視線。

 ものすごく恨みの籠った周囲からの目。


 胡桃も言っていたが、空はいったいここに何をしに来たのか。

 と、空がそんなことを考えたその時。


「ごちそうさまだ! シャーリィはもうお腹いっぱいだ!」


 シャーリィのそんな声が聞こえてくるのだった。

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