第三百五話 空と学生ヒーローの日常

 超巨大ムカデを倒したあとも、空達天使班は毎日任務を受けた。

 時雨から――。


『まぁ、この班ならばどんな任務でもへっちゃらでしょう』


 という太鼓判を押されたので、それからはほぼ怪人相手の任務となった。

 そうなって一番喜んだのは、無論胡桃である。

 もちろん、空もレベル上げが出来るため嬉しいが。


 さて、そんな日々が続いたある日。

 時刻は夕方、場所は風紀委員室。


 現在、この場に居るのは空、胡桃、そして氷菓の三人である。

 時雨は別件で昼頃からヒーロー協会にお呼ばれ中だ。


「おほん、ではこれより反省会を始めます」


 と、聞こえてくるのは氷菓の声である。

 彼女は至極不機嫌そうな様子で、空達へと続けてくる。


「っていうかおまえ達、どうして二人くっついて座っているのかしらぁ?」


「? 空の隣の席が空いてるからですけど」


 と、きょとんとした様子の胡桃。

 氷菓は盛大にため息ついたのち、そんな彼女へと言う。


「そうではなく、どうして他にも席が空いているのに、空の隣に座るかということよ」


「それは……いまいちわからないんですけど、一色先輩は哲学的なことを聞いているんですか?」


「……もういいわぁ」


 根負けした様子の氷菓。

 空はそんな彼女を見て、珍しい光景だと思った直後。


 ガタ。

 てくてく。

 ぐいぐい。

 ぽす。


 以上、氷菓が席を立ったのち、空の椅子を引っ張り、空いたスペースに座った音だ。

 なお、空いたスペースとは当然、空の膝の上である。


「えっと……氷菓さんはいったいな――」


「な、何やってんのよ! そこは絶対に座っちゃだめなんだからね!」


 と、空よりも早く反応する胡桃。

 その瞬間だった。


 コンコン。

 ガラガラ。


「兄さん事件で……何をやっているんですか」


 仕事が終わったに違いない。遅れて風紀委員室へとやってきた時雨。

 彼女から氷点下のジト目を向けられたのは。

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