第三百一話 空とムカデと英雄の一撃
「一撃で……初撃であの巨大ムカデを倒す」
あの巨大ムカデが落ちてくる獲物を――空をじっと待ち構えている今。
それ以外に奴を暴れさせずに倒す機会はない。
故に一撃。
一撃に空が持てる全ての力を込める。
となれば――。
『小僧、得物は剣なのだろう? 特意な剣技を言ってみるといい』
ふいに蘇るのはアルハザードのそんな言葉だ。
彼女があのあとに放った一撃。
剣技 『一閃』。
空と同じ技ではあったが、中身は何もかもが違った。
彼女のそれはダンジョンを吹き飛ばすほどの威力だったのだから。
(あれを今ここでやるしかない)
本来ならば聖天魔法を使いたいところだ。
しかし、あれはリーシャが居なければ使うことが出来ない。
(ないものねだりはやめだ……今の僕なら絶対にできる!)
アルハザードほどの威力はでないのはわかっている。
それでも、空は彼女に助けられた時から成長した。
レベルがあがっただけではない。
勇者の力も手に入れたのだから。
「…………」
空は片手剣一本のみに全ての意識を集中させる。
同時、巨大ムカデは空が間合いに入ったと感じたに違いない。
奴は凄まじい速度で、地面からまっすぐ上空の空へ、胴体を延ばしてくる。
「…………」
もしできなければ空は死ぬ。
それだけではない――空が巨大ムカデを倒さなければ、きっと多くの犠牲が出る。
そんなことは。
「させない……あなたは僕が今ここで、絶対に倒す!」
剣技。
「『一閃』!」
空はかつてないほどの集中力。
自らの全てを乗せる気で、一撃を放つのだった。
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