第三百話 空とムカデの王

「僕はこいつの相手をする」


 空が言った直後、空の真下から現れたのは超巨大ムカデである。

 巨大ムカデは大口を開いており、このまま空を飲みこむ気に違いない。

 だが、そうはいかない。


「魔法『ブラックスミス』!」


 空は巨大のムカデの口の中に剣を作り出す。

 要するにツッカエ棒の様な形だ。


「っ!」


 けれど、巨大ムカデの勢い自体が止まるわけではない。

 空のはそのまま穴の天井に叩き付けらる。


「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!」


 背中から襲い来る凄まじい衝撃。

 身体をバラバラに引きちぎられるような痛み。


 …………。

 ………………。

 ……………………。


「っ!」


 気が付くと、空の周りの景色は変わっていた。

 眼下に広がるのは街並み。


 現在、空はビルにして三十階分くらいの位置に打ち上げられていた。

 どうしてこうなったかなど、考えなくてもわかる。


(あの巨大ムカデ、なんて力だ……僕を押し付けながら地面をぶち抜いたのか!?)


 地上をよく見れば、先の巨大ムカデが地面付近から顔を出している。

 地面をぶち抜いた際、空は上空へぶっ飛んでしまった。

なので、巨大ムカデはああして空が落ちてくるのを待っているに違いない。


(どうする……本当なら一旦、地面に足を付けて体勢を立て直したいところだけど)


 そうするには、あの巨大ムカデの攻撃を再度防いだ後、地面へ降りる必要がある。

 正直な話、今の空ならばそんなことは造作もなくできる。

 問題は――。


(もしもムカデが暴れたら、周囲に甚大な被害が出る。でも、魔眼を使用したら……だめだだめだ!)


 あのムカデは超巨大なのだ。

 体力も相応にあるに違いない。

 それになにより、あのムカデは早かった。


(王の魔眼を使用したとしても、どれほど遅くなるかが未知数だ。息絶えるまでの間、ほぼ動かないでいてくれるかがわからない)


 不確定要素が多すぎる。

 そんな事に、一般の人々を巻き込むわけにはいけない。


「…………」


 ならばやるしかない。

 王の魔眼を発動させたうえで――。


「一撃で……初撃であの巨大ムカデを倒す」

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