第二百三十七話 空とリーシャと褒美②

 現在、空はリーシャの案内のもと剣の技能書売り場にやってきていた。

 のだが。


「……これ、全部が剣の技能書?」


「はい!」


 と、何かを期待するようなリーシャの瞳。

 とりあえず空はそんな彼女にお礼を言うが……正直、乾いた笑いしかでない。

 理由は簡単である。


「なんかイメージ、地下街道でみた魔物の群れの如き量の技能書があるんだけど」


「さすがクウ様です! 適格かつ面白い例え、尊敬いたします!」


 と、お祈りモードに入るリーシャ。

 彼女はそんな状態のまま、空へと言葉を続けてくる。


「あんまり大きな声では言えないのですが、このお店はすごく高級なお店なんです」


「う、うん……だろうね。それは入ったときになんとなくわかった」


「クウ様、本当に素晴らしいのですね。まさかそこまで優れた観察眼まで――」


「ちょっと待った、お祈りは嬉しいけどもういいから、リーシャの話の続きを聞きたいな」


「は、はい! ありがとうございます!」


 と、リーシャはもう一度だけお祈りしたのち、空へと言葉を続けてくる。

 彼女が言ってきたことをまとめると、こんな感じである。


 この店はもの凄く商品の価格が高い。

故に当然、商品は売れ残る。

 しかし、この店の主はどこからか、どんどん技能書を仕入れてくるというのだ。


 結果どうなるかというと。

 棚にどんどん商品である巻き物が増えていくというわけだ。

 それらこそが、商品が大量にある真相である。


 どうして潰れないのかは、リーシャも知らないどころか、エクセリオンの七不思議の一つとして、数えられているとのこと。

 もっとも時々売れているので、それで採算とっているのでは……との噂もあるようだ。


 とまぁ、今のところ空にとって最大の問題は――。


「クウ様! この中に欲しい技能書はありそうですか?」


 と、笑顔で言ってくるリーシャ。

 つまりそう、この大量の技能書の中から目当てを見つける必要があるということだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る