第百四十一話 空と女子会③

「おまえが鈍いのは知っていたけれど、まさかそこまでとはねぇ」


 と、ため息交じりな氷菓。

 彼女は指先で、宙に浮かんだ大きな氷の結晶をつつきながら、空へと言ってくる。


「私がこの前、おまえに『初めて見た時から好きだった』って言ったの、覚えているかしらぁ?」


「は!?」


 と、なによりも早く反応する時雨。

 彼女はすぐさま氷菓へ言う。


「ちょっとそれ、どういうことですか!? 聞いてませんよ!?」


「当たり前よ。おまえには話してないもの」


「いや、ダメですよ! 兄さんとのお付き合いは、わたしを通してもらわないと困るんですよ!」


「どうしておまえの許可がいるのかしらぁ? おまえ、こいつの彼女でもなんでもないわよねぇ?」


「か、彼女じゃないですけど、保護者ではあります! 兄さんはわたしが居ないとダメなんですよ!」


 いや、保護者は父さんと母さんだ。

 空が内心そんな事を考えていると。


「今回の会議は純粋無垢な兄さんを、女の魔の手から守る! それが目的だったはずです!」


 と、ベッドの上で立ち上がりヒートアップしている様子の時雨。

 彼女はそのまま氷菓へと言う。


「それがどうして……守る側の人間が、兄さんを汚す側に回ってしまったんですか!」


「守る? バカねぇ、おまえ……空が私のものになれば、私が永遠に空を守ってあげるわぁ……ずっと、一日中傍に置いてね」


「っ……裏切者、あなたは裏切者ですよ!」


「あら、おまえが勘違いしていただけじゃなぁい? はぁ……それにしても時雨、有能だから風紀にいれたけれど……やっぱりおまえ、うっとうしいわねぇ」


 と、氷菓までもが立ち上がる。

 現在、二人は方や光の粒子を纏わせ、方や氷の結晶を周囲に漂わせている。

 空はそんな二人を見て思うのだった。


(え、これ僕が止めるの?)

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