第百四十話 空と女子会②
「以上、梓さんが最近言っている独り言です」
と、時雨は責めるような視線で空を見てくる。
けれど、空としては言えることなど一つしかない。
「ちょっと待った! 誤解だって! 僕はデートの約束なんてしてないよ!」
「おまえ、いい度胸ね」
と、言ってくるのは氷菓である。
彼女は蔑むような視線で、空へと続けてくる。
「凄まじい量の目撃証言。私もあの子が『くーくーくーくー』言ってるのを何度も耳にしたわぁ。もちろん、デートがどうのと言った件もね」
「だから本当に――」
「おまえ、私に嘘を吐いたらどうなるか、わかっているかしらぁ?」
と、一気に部屋の温度が下がる。
時雨はさっさと毛布で身体を包んでしまっている。
そう、氷菓が《アイスエイジ》を発動したのだ。
ここから先の返答は冷静に、慎重にした方がよいに違いない。
(でも、本当にデートの件は心当たりが……ん、いや待てよ)
と、空は一つだけ思い当たることがある。
空はそれを氷菓へと言う。
「あ、そういえば胡桃と出かける予定があるんですよ! それを胡桃がオシャレな感じで『デート』って言ってるだけじゃないですかね?」
「そんなオシャレ聞いた事がないけれど……まぁいいわぁ。じゃあ梓胡桃が毎日、おまえの名前を愛おしそうに呼んでるのは、いったいどういうことなのかしらぁ?」
「それは簡単ですよ! 胸が苦しいって言ってたんですよね? 胡桃は僕のことが嫌いみたいなんで、胸が苦しくなるほどイライラしてる……そういうことじゃないですか?」
「……おまえ」
「……兄さん」
と、氷菓に続き頭を抑えてうなだれる時雨。
この日、空はなんだかよくわからないが、二人に呆れられたのだった。
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