第七十二話 空と初めてのダンジョンボス③
ダンジョン最奥のボス部屋。
そこに響く数多の剣戟の音。
空とスケルトンキングの戦いは未だ続いていた。
「あぁああああああああああああああああああああああああっ!」
空は全力で剣を横に振う。
すると、スケルトンキングはそれを回避――距離を取るように後ろへと後退してくれる。
ようやく息を突く暇が出来たわけである。
「っ……は」
まずい。
まずいまずい。
(戦いを長引かせ過ぎてる。スケルトンキングの動きはどんどん早く――いや、魔眼の力が弱まってきているせいで、僕はどんどん遅くなってきてる)
空の全身はもはや痛みを感じてすらいなかった。
左目からはただただ血が流れ、全身からは血が滲みだすように垂れ落ちている。
要するに限界。
一度膝を突けば、もう二度と立ち上がれないに違いない。
(だから、僕は絶対に剣を下ろせない……こいつを、倒すまでは!)
空は再度スケルトンキングへ走り寄り、斬撃を繰り出す。
左から右上へと切り上げ。
剣で弾かれる。
弾かれた勢いを利用しての回転切り。
これも盾で防がれる。
空はあらゆる攻撃を繰り出すが、その全てが決め手にならない。
(これじゃあこっちが消耗していくばかりだ……シャーリィには悪いけど)
こうなれば仕方ない。
もうこちらが致命傷を負わないで撃破。
そんな前提を捨てるしかない。
というより、空の身体は魔眼の反動ですでにボロボロだ。
今更怪我を負っても、たいして変わらないに違いない。
「どうなっても、ここで死ぬよりはましだ……」
空は両手剣をまっすぐ構えた後。
再びスケルトンキングへと突撃。
空は両手剣を右手だけで振りかぶり、攻撃のモーションへと移る。
するとスケルトンキングは案の定、隙が出来た空へ剣を振り下ろしてくる。
だが。
「そう来ると思いましたよ」
空は右手で剣を振りかぶったまま、空いている左手を動かす。
拳を引き絞り、一点を狙って。
「拳技『破砕』!」
鎧を砕く技能を乗せて放った左の拳。
それが向かう先はスケルトンキングの鎧ではない。
剣の腹だ。
「ぐ……っ!」
空の拳はスケルトンキングの剣とぶつかり合う。
できれば、ここでスケルトンキングの剣を弾き飛ばしたかった。
けれど、空の技が身体の痛みで鈍ったせいか――はたまた技能そのものの力不足か。
それはスケルトンキングの剣をただ弾き、その体勢を崩すだけに留まる。
「まだまだぁああああああああああああああああああああああっ!」
空は今度こそ右手の剣を振り、スケルトンキングへと攻撃を行おうとする。
しかし、スケルトンキングはすぐさま盾を構え、防御の姿勢を取って来る。
このままでは空の攻撃は入らないに違いない。
故に、空は右手の両手剣を捨てる。
「拳技『破砕』!」
放つ二回目の『破砕』。
それはスケルトンキングの盾の中央に吸い込まれ、今度こそそれを破壊する。
まだだ、まだ終わらない。
「拳技『破砕』!」
空はスケルトンキングの胴めがけ、三発目の『破砕』を左手で。四発目の『破砕』を右手で、五発目の『破砕』を左手で放つ。
魔眼を使っているからこその拳技連続発動。
結果、空の両手はボロボロ……だが。
スケルトンキングの鎧。
その胴体部分には腕一本通るくらいの穴が空いていた。
これで勝ち筋は見えた。
「終わりだ……拳技――」
空は言いながら、スケルトンキングの鎧の穴へ手を伸ばす。
それとほぼ同時、スケルトンキングが彼へと剣を振り下ろしてくるのだった。
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