第十四話 空とヒーローのお仕事

「あ、あなたは……!」


 と、震えた声をかけてくる店主。

 空はそんな彼を落ち着かせるため。


「大丈夫です、僕がなんとかしますから。奥に下がっていてください!」


 と、声をかけ強盗へと向きなおる。

 問題はここからだ。


(レベル2になってから、慣らしなしでのぶっつけ。力に振り回されなければいいけど……いや、ヒーローはいついかなる時でも戦場、そんな甘えたこと言ってられない)


 守るべきものを安心させるため、常に自信を持って悪を挫く。


 空は心を決め、強盗を睨み付ける。

 すると。


「てめぇ……殺してやるよ、殺してやる!」


 と、強盗は空に投げ飛ばされたことで、キレたに違いない。

 強盗はまっすぐナイフを空に向け、彼の方へと駆けだしてくる。

 しかし。


(遅い……っ!?)


 空は強盗のナイフを確実な動作で軽く払う。

 強盗は次々に攻撃――突きだけでなく、斬りつけなどを放ってくるが。


(簡単に捌ける……どこをどうすればいいか、直観的に理解できる)


 レベル2。

 身体能力の上昇だけでなく、戦闘経験が昇華し蓄積された感覚。


「っ……くそが! 躱してばっかで、きもちわりぃんだよ!」


 と、再び聞こえてくる強盗の声。

 見れば、強盗は大きくナイフを振りかぶり、上段から空の顔を斬りつけようとしている。


「…………」


 空はそれを見て、直観的に理解する。

 左足を軸に、体を時計回りに回転させての後ろ回し蹴り――それを相手の腹部へ。

 この攻撃は絶対に――。


(入る!)


 空がヒーロー養成学校で習った格闘技。

 実際の戦闘で使ったことなど、初めてに等しいそれは。


「ぐぼっ!?」


 空のイメージ通りに強盗の腹部に直撃。

 強盗はそんな声を上げ、店の外へと吹っ飛んでいくのだった。

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