第12話評論12

「お疲れ様です」


「ふん。この私がバイトとはな。だが働くことは大事だ。この海原雄山(うなばらゆうざん)。至高の働きを見せよう」


「あ、返却された作品をもとのケースに戻しといてください」


「返却された作品?これか」


(どうやらレンタルビデオ店でアルバイト中のようです)


 ふん。アダルトビデオが多いな。こんなものを借りてるようでは寂しいのだろう。でもまあ今はネットが主流だろう。レンタルビデオ店はネットの動画配信サービスにかなり押されて家賃が払えずどんどん閉店してると聞いておる。ここは私が至高の仕事を見せてだな。もう一度レンタルビデオ店の素晴らしさを世に広めるしかないな。そもそも一枚300円で一週間レンタル出来、新作も400円だぞ。週末に借りてゆっくり自宅で見るのがおつであり、海外日本を問わず名作映画にバラエティ番組のDVD版、コナン君の劇場版などレベル高いではないか。…それにしてもアダルトはかなり借りられておるな。ふふ…、こういうフェチものが好きなものもおるのか。あ、いかんいかん!人の趣味趣向を馬鹿にするのはよくないな。ん?


「こら!お前ら!何をやっておる!」


(若いカップル)「え?僕たちのことっすか?」


「他に誰がおる。貴様らのことだ」


(若いカップル)「あのー、着物のおじさん。何怒ってんすか?」


「ここをどこだと思ってる」


(若いカップル)「は?十八禁コーナーでしょ?」


「分かっておるようだな。それでは確信犯か」


(若いカップル)「はあ?確信犯?僕ら別に万引きとかもしてませんし悪いことしてないっすよ」


「黙れ!このこわっぱが!ここは大人の男子の聖地である。一人でコソコソっと暖簾をくぐり、スペースを譲り合い、同じ作品に手をつけたなら互いに『あ、どうぞ』と譲る。同じ場所で長時間選び続けないなど紳士たちの暗黙のルールに守られた『聖地』であるぞ!そこにカップルで入ってくるとは言語道断!お前らが周りにどれだけ迷惑をかけておるか分かっておるのか!!!」


(若いカップル)「なんだこのクソじじい。いこうぜ」


周りの人たちから拍手の嵐(パチパチパチパチ)


「ふん…個人的に礼を言われる覚えは無いな。あれは国のためにしたことで、栗無位田(クリむいた)ゆう子のためじゃない」

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