夜明け

青木桃子

第1話 幼なじみの死

 これは、私、青木桃子が中一の冬から最近まで、ようやく気持ちの整理がついて、感じたことまでを書きます。 ※気持ちの整理がついただけで、癒えたわけではないので、サラっと書いています。


 私には、小学校低学年の頃から、いつの間にか友だちになった幼なじみがいました。

 近所に住む、やさしくて、無口な女の子。



 ですが、中一の冬、火事で亡くなってしまったのです。


 思えば彼女の両親、知的障害の姉、なんなら近所に住むおばあちゃん家まで知っていました。歩いて5分、私の家は住宅街、川を挟んで田んぼの中の木造平屋建ての一軒家が彼女の家、玄関入って左側に両親の寝室、玄関右側にキッチン、その奥に姉妹の部屋。私は約束もなく家に遊びに行き、スポーツ、子供会やお祭りや、なんだかんだと遊んだように思います。

 中学に入り、マンモス校だったので、クラスは遠く離れ、だんだん交流はなくなりました。


 そんな中一の冬、11月末のことだった。布団の中で姉と恋バナで盛り上がり、夜更かしして、うとうとしていたら、近くで火事だって聞いて、私たちは玄関に出た。すると息ができない位、煙がすごくて、姉と「ゲホゲホ、苦しい」笑いながら家に帰ってきた。部屋で寝ようとしたら、電話が鳴り、父母は家を出たきり戻らなかった。

 しばらくして、深夜、また家の電話が鳴った。私は末っ子だったので渋々電話をとると、地元の新聞社からだった。


「火事で亡くなった方の漢字を教えてほしい―」


 そこで、私は初めて友だちの死を知ったのです。友だちのお姉さんも。


 私は多分、新聞社に教えたまでは憶えているのですが、そこから先はあいまいで……。寒くないのに震えていたと思う。


 台所のダイニングテーブルの椅子に座り

 姉がそばにいて

 兄が作ったココアを飲んだ。

 

 耳がぼわんとして姉の言葉も水の中から聞いているようなそんな感じだった。これが、現実で起ったことなのか、手に取ったココアのカップを持つ手の感触もなく、自分がしゃべる声も遠く聞こえるような感じ。泣いていなかった。泣くを通り越して茫然自失って感じ。あのころの気持ちが、驚き、悲しみ、嘆き……。何なのか文章が下手なので表現がわからないです。筆舌に尽くしがたい出来事、でしょうか。


 彼女が亡くなった時刻、私は何も知らず、姉とふざけ半分で家の外に出ていたなんて……。炎、煙、煤、匂い、消防車のサイレン、今でもトラウマですね。



 そこから記憶が途切れ、途切れ、


 その先は中学校での誰かが話していた噂話に飛びます。


「……ねえ、家が全焼して亡くなった子の部屋はほとんど焼けてしまったのにタンスを開けたら制服だけきれいだったって」

「かわいそうに」


「この前、学校に幽霊がいたって、火事で亡くなった子じゃない? なにか訴えたいことあるんじゃない」


「ね、実は知的障害の姉が実は放火したんじゃあって言われているよ」

「えーうそー!」


「通夜に行って、棺見たんだけど―……(割愛)」


 などなど、噂話が飛び交う。もっと色々なエグい噂もあったけど、ひどすぎて割愛。それで、結局、火事の原因はコンセントだった。時代でしょうか、そんなに注意喚起していなかったので、「そんなことで?」みんな理解できなかった。


 しばらく経つと


「どうして、両親の部屋と子ども部屋が離れているの? もっと近かったら死なずにすんだのに……」


 養護学校に通っているとはいえ、姉は高校生、彼女が中学生。両親の寝室から離れていた姉妹の部屋。気がついたときには火の海だった。助け出したくても近づけなかったそうだ。 

 悲しい気持ちの矛先が見当たらず、反動で、村の人は両親を責めるような言葉を言っていた。


 でもわかるの、死んだ友だちは家族が大好きだった。だから、両親が責められることに絶対嫌だと思う。絶対嫌だ。だからみんなの噂話に耳を塞いだ。






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