主様のために焼き鳥なるものを作成します!

花月夜れん

焼き鳥とは

「今日は主様のために頑張るぞ!」

「おー!」

「でもでも、どうするんですかぁ」


 私達三人は大好きな主様のために『焼き鳥』なるものを作るため今日一日自由時間をいただいた。

 普段は女剣士の私ティナ、魔法使いの格好をした武闘家ユリア、武闘家の格好の魔法使いローズ、それから主様ことタスケ様でパーティーを組んで魔王討伐の旅をしている。


「大丈夫だ、問題ない!」


 胸を叩きながら私は言う。


「でもでも、焼きはわかるのですが、とりというのはなにかわかるんですかぁ」


 困り顔のローズはそう言いながら髪を二つに結い始める。この世界にとりという動物はいない。


「うむ、そこはちゃんと主様に確認済みだ」

「そうなのか。で、どうするつもりなんだ?」


 冷静に聞いてくるユリアは短い髪をいじりながら聞いてきた。

 私はこれにも胸をはって答える。


「空を飛ぶ翼がある動物ということだからな」

「ほう」

ドラゴン飛竜で代用できると思うのだ!」


「「…………」」


 二人はじとりとこちらを見てくる。なんだ、私の案に何か?


「なるほどなるほどです! でもでも、ドラゴンって食べれましたっけ」

「いや、聞いたことがある。たしかものすごく精力がつくと――」


 二人は納得したように頷く。


「さぁ、ドラゴン退治に行きましょうか!」


 ◇


「さぁさぁ、ラストいくですよー!」


 ローズが鼻先を蹴り、がら空きの足元で私の剣が線を引く。


「出来たぞ! ユリア」

「了!」


 線の先に立つユリアがこぶしを地面にぶつける。


「魔の法第六・炎術導空柱」


 引いた線を伝って赤い炎がこちらに来る。


「っわわ! 避けるよー」


 ローズがドラゴンを蹴り飛び退く。

 私はそのまま炎が来るのを待った。体に炎を纏うイメージをする。


「これが、私達の焼き鳥だぁぁぁぁぁ!」


 先に魔法陣から出た炎であぶられているドラゴン目掛けて私は剣を突き立てた。


『串を刺したとり肉を火で炙った食べ物なんだ』


 主様は確かにそう言った。


 ◇


「ど、どうしたんだい。ティナ……」


 主様が全力で引いている。焦げた肉がついた剣を向けたのが悪かったのだろうか?


「主様! お覚悟を」

「なっ、何を覚悟するんだー!?」


 む、流石は主様。真剣白羽取りされてしまいました。


「ティナティナ、切りかかってどうするのぉ」

「そうよ。しかもわたし達二人を縛るなんて、ひどいな」


 脱出されてしまいましたか。もう少しもつと思っていましたけれど。


「「「主様、ハッピーバースデー!」」」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ」


 主様のもとの世界の好物である焼き鳥を用意しましたよ。私達の愛を受け取って下さい!!

 外にはまだまだおかわりがいっぱいありますからね!

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主様のために焼き鳥なるものを作成します! 花月夜れん @kumizurenka

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