ギャル魔王様!2

まこちー

第1話

真っ赤な空に紫の雲が浮かぶ魔界、長太い尻尾を引き摺って歩く男が一人。

「はぁ……勘弁して欲しいよ、全く」

男はため息をつき、王宮を見上げる。

「誰が処理すると思ってんの、コレ」

魔王の城は半壊していた。



「アイツは帰って来ないしさ。迎えに行った部下も怪我で入院するし。困ったもんだよ」

男の翼が揺れる。

「天使のヤツらは俺らに責任押し付けて天に帰っちまうし!俺っていつも損な役回り。可哀想な男だよな」

男の尻尾の先が揺れる。

「ま、中でアイツが待ってるし行くしかないか。ふふふ……」

不敵に笑い、城へと足を踏み入れた。



「あー!知らねぇって!!魔王は今どっか行ってんだよ!何回言えば分かんだよ!!配給はないの!!!……鬼!?悪魔!?……あぁそうだよ俺は悪魔だよ!切るからな!!」

ガシャン!

電話を切る音に耳を塞ぐ。

「荒れてるねぇ。レニー」

赤毛の男が勢い良く振り向く。細い尻尾がバタバタと動いて抗議をしている。

「トラビー!!荒れもするぜ!ったく、魔王マジでどこ行ったんだよ」

「人間界さ。さっきカラスが帰って来て報告してくれたよ」

長太い尾を持つ黒髪の男の言葉に、細い尾を持つ……赤毛の男が絶句する。

「俺は社長だぞ!?何で公務員をしねぇといけねーんだよ!」

「それに関しては本当に悪いと思っている。だが、まぁ……有り体に言うと人手が足りないんだ。魔王がここで暴れたときにたくさんの魔族が死んだ……悪魔も天使もな。だから公務員が足りなくなった。人手がいる後処理に優秀なあんたを呼んだのさ」

黒髪の男が首を傾げて目を細める。

「っ……ま、まぁ俺は?優秀だからよぉ〜。手伝ってやらんこともないが?」

「ふふふ、ありがとう。助かるよ」

レニーが自分の角のピアスを触る。

「カラスの奴、帰ってきたんだな。とりあえず良かった」

「全治1ヶ月だがね。ま、喋れてるから大丈夫だよ」

「まーた『魔王のわがまま砲』か?」

魔王のわがまま砲……城を半壊させた技だ。魔王はもっとかっこいい名前をつけていたが、覚えるのも面倒なので通称名で通している。

「そうらしいな。怪我の状態から、そうだと判断した。人間界であれだけの力が使えるなら大丈夫だろう。自分の身は自分で守ってもらわないとね」

「そうだな……魔王なら大丈夫だよな。うん、変な心配しないでおくか」

「あぁ。それよか、電話鳴ってるぜ」

「はっ……!お、お前が出ろよ!」

「ふふ〜ん」

「鼻歌で誤魔化そうとすんな!出ろって!どうせクレームだから!」

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