歩くグルメ風辞書

あーく

歩くグルメ風辞書

今日も仕事疲れたなー。


でも、今日は特別な日。


なぜなら、給料日だからだ。


ちょうどお腹もご飯をよこせと鳴いている。


自分へのご褒美に奮発するかな。


「らっしゃっせー」


というわけで近くの焼き鳥屋に来てみた。


メニューは――あった、これだ。


えーと、なになに――もも、かわ、ねぎま――塩とタレも選べるのか。


どれも捨てがたいな。


個人的には塩の方が好みだな。


タレをつけるとタレの味になってしまい、肉本来の味を楽しめないからだ。


お、つくねもあるな。


つくね――口の中でほろほろとほどけるような柔らかさ。


中に紛れ込むコリコリとした食感も忘れず、一噛みするとジューシーな肉汁が飛び出してくる。


でも、つくねは後にしよう。


最初に頼むのは、やはり王道中の王道――ももだろう。


「この唐揚げうめー!」


なんだ、隣の連中か。


ここの唐揚げは確かに旨い。


外はサクっと、中はジューシー、唐揚げを発明した人は、さぞ周りからもてはやされたに違いない。


さすが、鳥を厳選しているだけあって、焼き鳥に限らずいろんな鳥料理を振る舞ってくれる。


「じゃあ串からはずすねー」


「サンキュー」


なんだ、隣のカップルか。


串から外して食べる――俺に言わせるとマナー違反だな。


よく「みんなに配れるから」と言って串から外して食べる奴がいるが、なぜ人数分頼まない。


その方が旨いに決まってる


それに、串からは赤外線が出ている。


串から外してしまうと、穴から空気が入り、本来の焼き鳥の味を損なってしまう。


中から温まった最高のコンディションの状態を逃してしまう。


あんたたちは何もわかっちゃいない。


ま、俺には関係ない話だがな。


「か〜!ビールうめぇ〜!」


ビール――ビールも一緒に頼むかな。


キンキンに冷えたビールでぐいっと一杯。


その喉越しがたまらない。


時々酒を飲まない人がいるが、人生半分は損してるね。


酒は「百薬の長」と呼ばれているし、ビールに至っては、古代エジプト文明の壁画にも登場する。


歴史を超えて愛されてきた物はいい物に決まってる。


「これ、俺の彼女。マッチングサイトで知り合ったんだぜ」


マッチングサイト――ほら、あれだろ?


加工されて宇宙人になった写真に「クシャッとなった笑顔が好きです」とか「塩顔が好みです」とか「周りの人からは天然って言われます」とかよくわからんことが書いてあるやつだろ?


なんだよ「塩顔」「クシャッとなった笑顔」って。


で、会ったら会ったで写真と実際の顔に差があって落ち込むやつだろ?


あんなのはモテない男をカモにするためのものだろう。


結局モテる男は何もしなくてもモテる。


だから今までモテてこなかった奴らが必然的に集まるわけだが、そんな奴らに相手ができるわけがない。


もし相手にされたとしても、何か裏があるに違いない。


使ってみようとも思わないな。


「これうちのわんちゃん、かわいいでしょ!」


犬――古くから人間のお供として生活してきた動物。


猟犬、牧羊犬、警察犬など、あらゆる場面で人間を助けてきた。


ふさふさの毛並みとつぶらな瞳、そして感情豊かな仕草がさらに人間を虜にしてきたことだろう。


しかし、俺が許せないことが一つだけある。


犬に対してではなく、犬を飼ってる人間に対して、だ。


犬に服はいらない。


人間が服を着てるからといって犬にも着させるのはエゴでしかない。


服はおしゃれの意味もあるが、体温調節の機能が主なはずだ。


だが、それもわからない主人が犬に服など着せるのだ。


犬は服などなくても体温調節ができる。


むしろ邪魔に思っているだろう。


「この間サッカー観てたらさぁ――」


サッカー――ボールを相手のゴール目掛けて蹴る、11人のチームで対戦するスポーツ。


……正直あまり詳しくないからわからない。


「うちのママがやばたにえんなんだよねー」


やばたにえん――なんだ?それは?


新しくできたお茶漬けか?


「それはファンクションがアンサステナブルだからアグリーできないね」


……もはや何言ってるか分からない。


「あのー、もうそろそろラストオーダーなんですけど」


ラストオーダー――閉店時間が近づいてきたため、客はこれが最後の注文となる。


……え?ラストオーダー?


「お客さん何も頼んでないんですけど大丈夫ですか?」


「……とりあえず生で」

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