第2話 入院


彼・女・心配だな。何もなければ良いけど、そういえば草薙さんの家族も海外に赴任していると聞いた事がある。

という事は彼女も一人暮らしなのだろうか?

身の回りの世話をしてくれる人がいると良いけどな。

俺の処置は終わりベッドに寝かされている。痛み止めを飲んではいるものの痛いものは痛い。

看護師さんがいなくなり部屋を見回してみると、どうやら二人部屋らしい。草薙さんと二人か……

別に何があるわけでもないが、心がそわそわしてしまうのは、男子高校生としては仕方のない事だろう。

その後草薙さんは二時間経っても戻って来なかったので、さすがに心配になり丁度部屋に来た看護師さんに聞いてみる事にした。


「あの、すいません。一緒に運び込まれた彼女、草薙さんはどうなったんでしょうか? 全然帰ってこないんですけど、何かありましたか?」

「ああ、もうすぐ彼女さんも戻ってきますが、彼女さんの親族の方の連絡先とかお分かりですか?」

「いえ、彼女の両親は海外に住んでいるはずなので分からないです。すいません」

「そうですか………後ほど医師から説明があるかもしれません」

「医師から? そうなんですね……」


医師から説明? 草薙さんに何かあったのか? そもそも何で俺に説明があるんだ? 俺はたたのクラスメイトだぞ? しかも草薙さんとはこの二年間ほとんど話したこともないんだけど。

それから三十分ほど経ってから医師がやって来た。

「医師の竹原です。この度は大変な目に遭われましたね。彼女、草薙さんですが、高嶺さんが庇われたお陰で外傷らしい外傷は殆どありませんでしたが、頭部を地面に打ち付けられた様です。それも外傷は殆ど無く特に治療も必要のないレベルでしたしCTの結果も特に問題ありませんでした」


「そうですか。それは良かったです」

「ただ、頭部をぶつけた影響か、落ちた事によるショックからなのか記憶が失われている様です」

「え…………」

「全てではない様ですが、この1〜2年の記憶が思い出せない様です」

「1〜2年もですか………それじゃあ高校に入ってからの事全部ですか」

「はい。今の段階では一時的なものなのかそれとも時間がかかるものなのか判断は出来ませんが、当面彼女にはサポートが必要となります。ただ外傷が無いので長期入院という訳にはいきません」

「サポートですか……でも彼女の両親は海外に……」

「伺っています。他に親族の方がいれば良いのですが」

「すいません。俺には分からないです」

「そうですよね。とにかく彼女の不安は計り知れません。ご両親がすぐに来られないのであれ尚更あなたが支えてあげてください」

「え…………俺ですか?」

「当たり前じゃないですか彼女でしょう」

「あ………はい」

「頼みましたよ。とりあえず高嶺さんと同じ日に退院となりますがその後も定期的に検査で通院していただきますので、頼みましたよ」

「分かり……ました?」


記憶喪失? 大変な事になったな。草薙さんは大丈夫なのか? 心配だ……

1〜2年の記憶がないという事は当然俺の事も覚えてないよな。

まあ元々覚えてもらってたか微妙なレベルではあったと思うが。

それにしても彼女にサポートが必要になるのは当たり前のことだと思うが、俺がサポートするのか?

そもそも、俺あんまり彼女の事を知らないぞ?

どこに住んでいるのかさえ知らないけどどうすれば良いんだ?

それともこれはあれか? 入院中のサポートの話か?

いや、でも検査通院もって言ってたよな。

記憶喪失のサポートってどうしたらいいんだ? 全く分からないんだけど。

しばらくすると彼女がベッドに乗せられて運ばれて来た。

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