魔導世界の魔概改変
神坂蒼逐
プロローグ
魔法。それは世界が、いや星が齎した希望であり世界の災厄でもあった。
それがこの世界に現れたのは、幸か不幸か、人が第三次世界大戦を勃発させている真っ最中だった。
銃の殻薬莢の乾いたカランッという音が鳴り響いていた大陸西部は、いつしか人の言葉がいくつもの重なる世界へと変貌を遂げていた。
魔法の世界はかくして出来上がっていた。魔法が発現したものは否応なく高い地位に置かれていた。
……だが、それは魔法が発現しなかった者には苦しい世界になることは自明の理だった。
だから、大陸全土の国々で内乱が起きた。魔法師と、騎士との対立が原因だった。立場の違い、扱いの違い、魔法師が騎士をずっとこき使ってきたのが、原因だった。それでも、やはり魔法の前には武は歯が立たなかった。
それにより徐々に世界は魔法に侵食されていった。そして、ついには魔法を持たずして生まれなかったものは……
……生きる権利さえもない世界へと変貌を遂げていた。それは第三次世界大戦が始まる前から数えて、約10年の間の話だった——。
魔法師が騎士に打ち勝ち、魔法の需要と価値が圧倒的に上がったこの頃から、さまざまな国が併合されていった。魔法が強い国は、それくらい優遇されていた。
だが、途中からそれも衰えていった。だが、それはすぐに解決された。
魔導学院。魔法を学ぶための学び舎を作ったのだ。それを真似した各国は様々な場所に魔導学院を作り上げた。
その中でも群を抜いて発展した学校があった。それは、一番最初に築かれた、エリステル第一魔導学院だ。
そこは主に貴族しか通うことができない。なぜなら、この世界は誰しも魔力を持つようになった。そんな世界でも、魔力量の多さで位が分けられるようになっていた。
魔法の才能は生まれつき決まる魔力量で決まる。だから魔力量が一般的に多い貴族しか入学できないのだ。
だが、庶民は魔力量が絶対に少ないという訳でもない。
そして、貴族と違い、家系の遺伝がない庶民の中で魔力を多く持つものは……
貴族よりも魔力を多く持つことが多い。だが、そういうものは迫害されてしまう。適当に理由をつけて、殺される。
だが、とある家は、それを逃れた。元々庶民だったエリステイン家は魔法の実力と国王の鶴の一声で子爵の地位を得た。そして、その夫婦は貴族の地位を元々受け継いでいなかった。だからこそ、生まれたのだ。
本来庶民の間でしか生まれないはずの、魔力量が桁外れの子供が生まれた。貴族の魔力計測器が計測できないほどだった。今までもそのようなケースはあったが、その度に計測器の耐久値を上げてきた。だが、今回は今までとは違かった。
そう、計測器が一瞬にして使えなくなったのだ。そして、その少女は神童と両親から言われていた。周りからは妬みの視線を受けるも、この血が途切れることはないことは常識だった。つまり、急に現れた弱小貴族は今の貴族全員よりも遥に強いことを、全員悟ったのだ。
そして、その少女は国王からの提案に乗ってエリステル魔導学院に入学することになった——。
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