第6話

それは虫の予感だったのだろうか?

長かった雨が止み夏が本格的に始まろうとしてから一週間ほど過ぎたその夜、我が家の電話がけたましく鳴いた。

パパはソファーに寝っ転がったままテレビを見ていて動こうとしない、部活で遅くなった私も今は食事中なのでもちろん動かない。

ちなみに今日のメニューは夏場お馴染みのそうめんだ。

最近はこればかりで少し飽きてきた。

そんなそうめん作りの達人であるママは台所から慌しく走り受話器を手に取った。

ママが電話を取ると同時にテレビの音量が下がる、見るとパパがリモコンも手に持っていた。

そんな気遣い出来るなら最初から電話に出ればいいのにと思う。

向こうが一方的に喋っているのか、ママは一向に声を出さない。

なんか嫌な雰囲気がする。

なんでかわかんないけど、空気が変わった気がした。

ジメリとしたような嫌空気に。

「はい、はい。いえ、うちはなにも・・・はい、そうですね」

受け答えをし出したかと思うと酷くママの機械的な対応が余計不安感を煽る。

しばらくして電話を切ったママをパパと私は何事かと見つめる。

「大変、柿崎さんのところのお子さんが帰ってこないらしいの」

「柿崎って町内長の?」

「そのお孫さん、確かまだ小学生上がったばかりだったはずよ」

時計を見ると時刻はもう午後8時を過ぎていた。

どう考えても小学生が家にいないといけない時間を大幅に過ぎている。

「警察に連絡をしたほうがいいんじゃないのか?」

パパも時計を見ながらそう言う。

「そうよね、この前あんなことがあったばかりだし心配よね」

行方不明の子供その話を聞くとどうしてもついこの間起きた自動殺人事件を思い出してしまう。

まさか今回も?

そんな事考えると胸が激しくざわめく。

とても居心地の悪い気分だ。

私はこれ以上その話を聞くのが嫌で、食事を早々に切り上げお風呂へと逃げた。

その日はよく寝れなかった。

目を閉じるとどうしても、今日に電話のことが頭をよぎる。

あの後、パパは地域の人たちと一緒にその行方不明になった子供を探しに行ったらしい。

私が生まれ育ったこの町が今とんでもないことになりつつある、そんな予感が私の中でも芽生え始めていた。

どうか、何事間なく無事に見つかって。

布団の中で祈るように背を丸めていると、不意にパトカーのサイレンの音が聞こえてきた。

窓を開け外を見ると、一台や二台ではないサイレン音が聞こえてきた。

何事かと、外に出て様子を伺っている人もいる。

そんな状況を目の当たりにして、私は多分先ほどの願いは叶わないだろうと漠然と感じていた。

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