焼き鳥にされた麻雀VTuber、その言葉の意味を探る
アーカーシャチャンネル
もしかして、焼き鳥って…
彼女は、何故かコンビニで冷凍焼き鳥の売られているコーナーで立ち止まり、じっと見つめていた。ちなみに彼女の職業は配信者、実際にはバーチャル配信者の中の人でもある。
立ち止まったのには焼き鳥を食べたいからという理由ではなく、別の事案が関係する理由があった。さかのぼること、数日前……。
この時、バーチャル配信者同士でオンラインの麻雀配信を行っていた。リアルで自動麻雀卓を囲んでプレイするのとは違い、マウスで操作するだけという手間はかからないのは大きいだろう。
バーチャル配信者が自動麻雀卓を囲んで実際に麻雀をするという光景も、あまり想像できるようなものではない。実際にやろうとすれば、色々と手間はあるのかもしれないが。
『それロンですよ』
『ツモ』
『ロン!』
他の対戦相手は次々と牌をそろえて上がっていくのだが、半荘でやると時間がかかりすぎて視聴者が離れて行ってしまう……というのも杞憂なくらいにスピード感があった。
ある一人だけが全く上がれないままに半荘が終了、配信が終わるころにはスコアの方も圧倒的な状況になっていた。
さすがにスコアが一人だけマイナス点ではなかったが、持ち点が四桁だったのは彼女だけである。麻雀系バーチャル配信者が集まった対局だったのに、散々の結果と言えるかもしれない。
その半荘配信で全く上がれなかったのが、冷凍焼き鳥を見つめている彼女なのである。
『まさかの焼き鳥が出てくるとは予想外だな』
『プロ雀士の配信でも、焼き鳥はめったに出ないというのに』
『まさか?』
色々な言われようだったのは言うまでもない。ここで言われた『焼き鳥』に関して気になったので、インターネットで検索したら……。
「食べ物しか出てこない」
本当に麻雀で使われている単語なのか、それこそバーチャル配信者たちが作った捏造ワードなのか?
仕方がないので、直接足で稼ごうという事で、スーパーやコンビニ、それこそ焼き鳥屋なども立ち寄った。
しかし、トラウマが増幅してしまう……という事もあって、実際に焼き鳥を買おうとは思わなかったが。
焼き鳥屋通いなども終えた数日後、またもや彼女は麻雀配信に参加していた。またもや焼き鳥にされるのではないか、という懸念もある中で。
『今度は負けませんよ!』
自身こそはあるようだが、視聴者はまたもや焼き鳥にされるのでは……という懸念もある。オチとしては『お察しください』ではあったのだが。
麻雀で焼き鳥にされるたび、焼き鳥屋などに通う彼女は、次第に配信内でもコンビニやスーパーなどで売られている焼き鳥に詳しくなっていた。
そうしたことを雑談で語っていく中で、気が付くと『焼き鳥屋などに通う麻雀焼き鳥系バーチャル配信者』というあだ名が広まる事になる。
さすがに焼き鳥を食べる光景は配信しないが、焼き鳥の評価やレシピなどはSNS上でも評判なので、知識のレベルとしては比較的に高いのだろう。
しかし、このあだ名を彼女はどう思うかは別にして、付けられた由来を知ったら逆に……という気配もしないでもない。
焼き鳥にされた麻雀VTuber、その言葉の意味を探る アーカーシャチャンネル @akari-novel
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