第64話 さて、尋問です。

 ラインバッハ家から屋敷に戻ると、カミラとミラグロス、アーネが出迎えた。

(あれ? ミラグロスの服装が鎧じゃない。

 ボディーラインがはっきり見えるような服。

 筋肉質な中でも胸と尻でできるくびれが目立っている。

 なぜに?

 特に胸が強調され冷るな……)

 ケインがミラグロスをガン見していると。

「「「お帰りなさいませ、旦那様」」」

 カミラ、アーネ、ミラグロスの三人が声を揃える。

 そのあと、

「黒ずくめの男は申しつけの通り、既に催眠状態にしており、いつでも尋問が可能です」

 カミラがニコリと笑う。

「わかった」

と、ケインが頷いたあと、

 あと、ラインとの婚約が成った。

 やることは残っているがね」

 ラインバッハ家で起ったことを説明する。

「それは良かったですね」

カミラは頷くと、

「それならば、レオナさんも……。

 ルンデルさんも乗り気なのですから、ちゃんと声をかけませんと……」

 心配するように言うのだった。

「そうだな、レオナも何とかしないと」

と頷くケインだが、

「それよりも……何これ?」

 ミラグロスを指差す。

「『これ』と言われてしまった」

 と言って少しミラグロスがヘコんでいる。

 すると、

「お疲れの旦那様へ抱き枕のプレゼントです。

 ミラグロス様も納得なので、遠慮しないでください。

 ほら、旦那様の好きな……」

 ニコリと笑ってカミラが言うと、

「疲れたのに疲れろって?」

 ケインが聞き返す。

「いいえ、そういうつもりでは……。

 私が旦那様と一緒だと、いろいろしてしまって……疲れてしまうでしょう?

 だから、添い寝係でミラグロス様を……」

 カミラがポッと頬を染めた。

 そして、

「ああ、襲うのも同意済みですが、襲わなくても問題ありません」

 とカミラが意味深に言う。

(いや、意味は分かってるけど……)


 ケインがミラグロスを見ると、

「年上は嫌ですか?」

 心配そうにミラグロスが聞いてきた。

「んー、俺実年齢四十過ぎてるしなぁ」

 頭を掻きながらケインがポロリと言ってしまう。

(イメージとしては、ミラグロスは大学の一年生なんだよなぁ……)

 悩んでいるケインを見て、

「それはどいうことです?」

 ミラグロスが聞くと、カミラが、ニヤリと笑った。


「旦那様、折角我が家に住んでいるのです。

 言っていないことは言っておきましょう」

 カミラが言うと、

「えっえっ、何ですか?」

 アーネも食い付いてきた。

「他には言わないことを約束できるか?

 まあ、言ったとしても『何馬鹿なこと言っているんだ?』と思われるだろうけどね」

 ミラグロスとアーネに言うケイン。

 すると二人は頷いた。

 そのあと、「慧が死んだケインの魂の代わりに入った魂であり、異世界の記憶を持っていて、その知識のままに鍛えた結果、今のケインになっている」ということをケインが説明すると、

「ああ、そういう事だったのか……。

 だから、バケモノのような強さなのだな」

「ご主人様は規格外なのはそういう理由なのですね」

 二人に妙に納得されてしまうのだった。


 屋敷の風呂に入って、ベッドに入るとミラグロスが俺の部屋に入ってきた。

 そのままスッとベッドに入ってくる。

 そして背後から大きな体で俺を抱きしめると、背中にカミラを上回る何かが触れた。

「まあ、いっか」

 ケインはカミラとは別のものを堪能して、肌の温かさで寝入る。

 次起きた時は夜中だった。



 ケインはミラグロスを置いたまま部屋を出ると、リビングに向かう。

 カミラとアーネが起きていた。

「手を出さなかったので?」

 カミラが聞いてくる。

「無理だ。

 今手を出すと結構大変な気がする」

 ケインが言うと、

「確かにミルドラウス侯爵から何か言われるでしょう。

 でも同衾するだけでも言われますよ?」

 との指摘。

「そう仕向けたのはカミラだろ?」

 ケインが文句を言うと、

「ええ、ミラグロス様が『ケイン殿は私に興味が無いのだろうか?』と悩んでいましたので、『旦那様はオッパイ星人という者らしいので、見事な乳を持つミラグロス様の乳を見てまさぐるでしょう』と言いました。

 嫌いじゃないでしょう?

 五歳にして私の胸をまさぐったのですから」

 カミラは笑って言う。

(確かに、胸は嫌いではない。

 大好物だ)

 苦笑いするケイン。

「旦那様はちゃんとミラグロス様を抱き枕にしたようです。

 ですから、とりあえずはミラグロス様は納得できる」

 頷くカミラに、

「そんなもんかね?」

 とケインが言うと、

「ええ、自信を持つきっかけにはなるでしょう」

 カミラが笑うのだった。



「黒ずくめの男はどうしますか?」

 カミラが言と、

「問題ないなら、今から尋問だな」

 ケインが答える。

「畏まりました」

 カミラとアーネがすっと立ち上がり、俺たちは牢に向かう。

 牢に行くと、吊り下げられた黒づくめの男。

 焦点が合わず涎を垂らしている。

(アーネがやったんだろうが、若干亀甲縛りっぽいのはやめて欲しいかな。

 正直男のを見ても興覚めだ)

 ケインは嫌な顔をする。


 カミラが既に黒ずくめの男を催眠状態にしてある。

 ケインが顔を抓っても、ほおをニーっと広げても何もリアクションは無かった。

「じゃあ、アンタを雇ったのは?」

 ケインが聞くと、

「マクダル王国、アルフ・マクダル王子」

 焦点が合わない目で呟くように言う黒ずくめの男。

 カミラは首を傾げ、

「仲がいいと聞いていますが……」

 と言う。

「俺も、仲がいいと社会の授業では学んだんだけどねぇ。

 裏ではいろいろなのかね?」

 ケインも首を傾げた。

 しかし、

「マクダル王国のアルフは我儘だと聞いていますね。

 一人息子のせいで、厳しくできなかったとか。

 気に入らない者は殺されたりするらしいです」

 アーネが言う。

「良く知ってるな」

 驚くケイン。

「ご主人様。

 私も一応、姐さんのように生きてきましたから。

 それなりに国を渡っているんですよ?」

 フンとアーネが鼻息荒く言った。


(さて、どういう理由でリズを襲ったのやら……)

 ケインは黒ずくめの男に、

「エリザベス王女をなぜ襲った?」

 と聞く。

「アルフ様はエリザベス様との婚約を希望した。

 しかし、その婚約をむげに断ったのだ。

『好きな男が居る』と言って……」

 黒ずくめの男が言うと、じーっとケインを見るカミラ、アーネ。

(はいはい……)

 ケインは目を逸らす。

「そこで、指令が下った。

 エリザベス王女に危害を与えろと、殺すまでもないが死ぬほどの恐怖を与えればいいと言われた。

 そこで、影でトップの俺が選ばれ、エリザベス王女に危害を加えに来た。

 このことはアルフ様しか知らない」

 黒ずくめの男は続けて言うのだった。


「殺すつもりはないとはいえ、女に振られた腹いせで、女に危害を加えるか……。

 カミラ、こいつにアルフって奴を殺す指令を出せるか?」

 ケインが怒気を表に出して言う。

「はい、可能です」

 カミラが言うが、続けて、

「しかし、その影を操ったほうが面白いのでは?

 そうですね、襲撃は成功と報告をさせておき、バルト王の目の前で影に暴露させるというのも面白いかと……。

 まあ、そのためにはエリザベス王女様にマクダル王国に行ってもらう必要がありますが、私を含めアーネ、ミンク様が居れば、どうにでもなるかと……」

 ニコリと笑って言った。

「ミンクが暴れたら災害にならないか?」

 そこまでするつもりはないケイン。

「そこはそう……旦那様が頑張れば」

 再び笑うカミラ。

 ケインはカミラの目が笑っていない事に気付く。

(うわっ、カミラが怒っとる……。

 エリザベスを妹のように扱っていたからなぁ……。

 これは血を見るな)

 後に起こることに恐怖を感じるケイン。


 とりあえずは……と、

「その辺はエリザベスと相談だろう」

 誤魔化すようにケインが言うと、

「とりあえず、催眠は深層に残すようにしておきます」

 と聞きなれない言葉を言った。

「深層?」

 ケインは首を傾げる。

「ええ、ある言葉を言えば催眠状態になるようにしておきます。

 まあ、この世界の者が言わないような言葉です」

 カミラが再びニコリ。

「エリザベス王女への嫌がらせは成功し、マクダル王国へ帰国中という記憶を植え付けて、適当な場所で解放しておきます。

 わかりましたね、アーネ」

 静かなる怒りに怯えたアーネが、

「ねっ姐さん、承知いたしました!」

 震えながら頷くのだった。

 

 このあとケインは自分の部屋に戻り、

(俺はオッパイ星人だから)

 と、ミラグロスの背後から抱き付くと、寝ているミラグロスの乳を再び堪能する……。

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