第9話 プロポーズ②

「最近、殿下は宝石屋を日に5軒、回っているそうですね」

「ええ。いよいよ、ご結婚かしら?」

麗子は仕事場である王宮内の統括省部に向かって歩いていると、コソコソメイドの声が聞こえてくる。


「プロポーズされたら、入籍届にハンコ押して終わり?」

訪ね相手は友人でもあり、同じ唯一の20代である高山陸。

「まぁ。ざっくり言うと、そうだけど。そうじゃないと言うか・・・」

陸は机の上の書類を束ねると、麗子を見る。

「お互いの親に挨拶して・・・。俺の場合はだが、まず、女側の家に手見上げを持って挨拶に行って。次に男側の家に挨拶に行く。その後、結納をするのであれば結納か顔合わせ食事会をするのが一般的だな」

麗子は携帯で結納を調べる。

結納とは、お互いの家を結び納めると漢字のまま。

結納を行う場所も、正式結納は女側の家。

仲人さんがいて、新郎新婦の両家を行き来し結納をかわす。仲人は男の家から結納品を預かり、女の家に届ける。

そのとき、女の家は仲人をもてなし、結納品を受け取った受書を運んでもらう。

また、結納品は9品が正式とされている。

な、な、なるほど。

めんどくさい。


略式結納は、ホテルや料亭で結納し。男の家が結納品を用意して、女の家が受書を用意する。仲人はどちらでも大丈夫。


顔合わせのみは、両家で楽しくご飯を食べるだけでもいいし。婚約指輪とそのお返しを記念としてお披露目するのも大丈夫。


よし、めんどくさい。

麗子は携帯の画面を閉じた。

「プロポーズされてから、どうするかを考えたらどうだ?殿下のことを鷺洲公爵夫妻もどこの誰ですか?とは言わないし。公の場で仲良い姿は目撃してされてるんだしさ」

「それもそうね」

麗子は自分の席に行くと、仕事を始めた。

今日は、我が国の他国との貿易問題について。貿易省の幹部たちが来る。


同じ頃、玄翠も携帯を見ていた。

結納だの、食事会については麗子伝に親の意向を書いて貰えばいい。

問題は、相手の家に挨拶に行く時の言葉だ。


お父様、お母様。麗子さんをください!

・・・っいや。違うな。麗子はものではない。


お父様、お母様。麗子さんを幸せにします。結婚を認めてください。

・・・っいや。この場合、認めないと言われれば俺はどうする?認められるように頑張るだろうが、最終手段は、公爵家を潰されたくなければ。麗子をよこせっとなるのではないか?

って。おいおい。

これじゃ、誓約結婚と変わりがない。


この度、結婚する歩みとなりました。

・・・っいやいや。これじゃ、事後報告のような感じとなり。印象が悪いのではないか?

玄翠は机に膝をつくと、頭を抱える。



「メイドたちから、昼夜問わず、悩んでいると書いた。どうした」

父親が声をかけてきたのはそれから2日護衛。

「いや。なんでもない」

「なんでもない訳がないだろう」

玄翠は黙り込む。

今年、玄翠は29歳になる。

三十路の漢が親に恋愛相談なんて・・・。なんと言うか、気まずくてできない。

「仕事ではないようだな」

うっ。

当たってやがる。さすが、父親だ。

感心するのもつかの間。

「麗子ちゃんのことか?だったら、こちらは、問題ないぞ」

「は?」

「鷺洲公爵とは、中々、良い共になったな。お前が30歳になるまでに結婚させる約束は既にしてあるし。麗子ちゃんもお前の事を好いているようだ。後は、お前がきちんと男になって。プロポーズと、向こうのお家に挨拶に行けばことはすむ」

「・・・そうか」

「まぁ。プロポーズを受けてもらえるかは、分からんがな」

「おいっ。親父!」

玄翠は声を上げると、父親は笑いながら出て行った。


3月14日。

「ご飯、おいしかったね」

美味しいご飯を食べて、最高の夜景をバックに写真を撮って。

2人は仕事終わりにホワイトデーという時を満喫する。

「今日という日をプレゼントしてくれて。ありがとう」

麗子は玄翠の手を取り、にっこり微笑む。

それは、明日も仕事だし。帰宅しよう言う合図でもある。

玄翠はご飯を食べている時もずっと話し続け、夜景を見る時も人が多く、写真を撮ることに一生懸命だったため。

渡しそびれてなるものかと、2人の邪魔にならないところで待機していた護衛に目配せをすると護衛が城の紙袋を玄翠に渡した。

「バレンタイン・・・。ありがとう」

「どういたしまして」

麗子は紙袋を開けると、中には白いふわふわの熊がなぜか・・・おなかの前で、小箱を茶色のロープで括りつけられているのが目に入った。

「ふっははははははは。何、これ?え?熊が縛られてる」

あまりにも予想外の贈り物に、熊を抱えて、おなかを丸めて笑い出す。

よし!良く分からないが、ウケはばっちりだ。

笑ってる。

玄翠はよしよしっと心の中でガッツポーズを握る。

本当は、かわいい。

何が熊が箱を持ってるわ。あっこの仲間は・・・っと言う展開を期待していたが。理想と現実は異なる。

「いやぁ。可愛そう。可愛いクマが、昔の罪人のように縛られてるわ。助けてあげなきゃ」

麗子はクスクス笑いながら、熊のロープを丁寧に取る。

「箱の中身はなんだろう」

箱の中を開けると、婚約指輪。

「正式に・・・結婚しよう」

「喜んで」


【完】

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金と権力ある俺様王子が、最強令嬢を溺愛結婚する件 林檎の木 @ringonoki4111

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