焼きチキン

水谷一志

第1話 焼きチキン

 「チキンハートは焼いて食べてしまおう!」

最近僕は、こんな広告を見つけた。

何でも本物の肉のチキンではなく、あくまで人間の心の「チキン」を食べて、それをなくすことができるらしい。

最近、その店の1号店がオープンしたそうだ。


 そしてそんな広告に反応してしまう僕は、かなりの臆病者だ。

学校でもいじめられ、さらにそれもあって一挙手一投足に自信が持てない。

僕はそんな自分を変えたい……!というわけでその広告の店に行くことにした。


 「いらっしゃいませ!」

 その店はファストフード店の雰囲気と全く変わりがない。ただ中に入ると、簡単なアンケートを書かされた。

 その後、店内で順番待ちをしていると、いわゆる鳥のチキンナゲットのようなものが出てくる。

 「これがお客様のチキンハートです。アンケートを元に作成致しました。これを食べて頂けるとチキンハートは消滅致します」

 そう言われ、店内のイートインスペースで食べると……。

『なんか、心が軽くなった!』

 すぐに効果が現れ、僕はなぜか自信で満ち溢れた心になった。


 その後学校でも僕の態度は見違えるようになった。内面からくる自信は周りにも影響を与え、いじめっ子たちは僕に近づかなくなった。これはものすごい効果だ!そう思った僕は周りの自信なさそうな人に店の宣伝をするようになった。すると……、あれよあれよという間に街の人間たちは自信に満ち溢れ、結果いつの間にかその店はなくなっていた。


 「店長。この星でのチキンハートはもうとれなくなりましたね」

「ああ。みんな臆病者ではなくなったからな。我々の“オイル”が枯渇した現代、“チキンハート”は必要不可欠な資源になっている。早く次の星を探さなければ」 (終)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

焼きチキン 水谷一志 @baker_km

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ