『小話』や『番外編』、『こぼれ話』、『本編とは違う別ルート』等
小話:とある疑問~義理の姉と弟となる人たちに求める条件は
○とある疑問~義理の姉と弟となる人たち求める条件は(エターナル兄妹とイアンとレオン)
「キソラちゃん」
「イアンさん、レオンさん」
声を掛けられたので、振り返ったキソラはどうも、と頭を下げる。
「ノークに用事だったのか?」
「ええ、まあ……」
そっか、と返しつつ、イアンはふとした疑問を口にする。
「そういえば、思ったんだけどさ」
「何ですか?」
「ノークの相手として認める条件とかあるのか?」
イアンの疑問に、キソラは不思議そうにしているが、レオンは彼がそう聞いた理由に思い至ったらしい。
「条件ですか? そうですね……」
しばし考えるキソラ。
ノークの唯一の家族であるキソラは、ノークに好意を持つ女性たちにとって、きっと一番の山であるはずだ。
そんな彼女からの(認められるための)条件である。
もし、そんなものがあるなら、友人であるイアンたちとて気にならない訳がない。
「兄さんが好きである、というのは当たり前ですが、何と言いますかね。相手の
「あ、やっぱり?」
「あと、空間魔導師とか抜きで、兄さんをちゃんと見てくれる人」
「ちゃんと見てくれる人?」
どういう意味かを問う二人に、キソラは苦笑する。
「私たちが空間魔導師であることを知る人たちは確かに居ますが、その人が能力目当てでない方が良いかな、って。兄さんの子供や私の子供たちが、必ずしも空間魔導師として生まれてくるとは限りませんし」
「あー、なるほど」
キソラの言いたいことが何となく分かった。
『空間魔法』という能力目当てだとしたら、将来的に生まれてきた子供たちがどのような扱いをされるかなんて、分かったものじゃない。
「後は、私とも接してくれる人」
「キソラちゃんと?」
「兄さんのお相手からみれば、私は義妹に当たるんですよ? 私としても、将来、義理の姉となる人とは仲良くしたいんです」
ノークにとってもそうだが、キソラにとっての家族が増えることになるのだ。
どうせなら、喧嘩したり、無視したり、敵意を向けられる日々を過ごすよりは仲良くしたい。
「そっか」
きっと一番近くで見てきたからこそ、彼女から出てきた条件。
「いつか、良い
「はい」
それでは失礼します、と去っていくキソラを見送るイアンとレオン。
「さて、もう片方にも聞きに行ってみるか」
「聞くまでもなく、似たようなことを言われそうだがな」
「……まあ、ブラコンなキソラちゃんもそうだが、シスコンなノークがどう返してくるのか、聞いてみたいのもある」
というか、イアンの予想では、キソラの条件よりも厳しい条件が出そうな気がして仕方がない。
で、今度はノークに聞いてみた。
「キソラの相手として求める条件?」
「ふと思っただけだから、深く気にするな」
とは言いつつも、イアンがキソラの事を好きなことはノークも知っているので、疑いの眼差しを向けたままだ。
「別に、無いなら無いで良いんだが」
「条件なぁ……」
一応、考えてはくれるらしいが、聞かれてすぐに考えている所がキソラと同じだ。
「キソラがそいつの事を好きだって言うのは絶対だが、その前に実力の査定はさせてもらう」
「は?」
「未来の義弟になるとはいえ、何の実力も無い奴に何であいつをやらなきゃならない。そう簡単に大事な妹をやるかってんだ」
「……」
うわぁ、とかもう声が出ない。
レオンがイアンの肩に手を置いたが、どういう反応をして良いのか分からない。
もし、男女逆転していたら、キソラもノークのような条件を出していたのだろうか。
「そういうことだから、キソラが欲しけれりゃ掛かってこい。イアン」
「……意外と鬼だよな、お前。つか、そんな条件を他の奴らが知ったら、一斉に掛かってくるか、逃げ出すぞ」
「もし仮にそうなったとしても、俺としては別に構わないぞ。そんな軟弱者にうちの妹はやらないし、やるつもりもない」
ニヤリと笑みを浮かべるノークに、イアンが顔を引きつらせる。
ノークの方も
「でもそれだと、キソラの、嫁としての貰い手が無くならないか?」
「その心配は無いんじゃないか? あいつ自身、優良物件だし」
「兄貴が妹を優良物件とか言ってやるなよ……」
レオンの言葉にノークが返すが、それを聞いて、呆れたようにイアンは洩らす。
「だが、事実だろ? 頭も良いし、見た目も良い。料理が出来て、気配りも出来る。なおかつ何かあっても自衛も出来る。しかも、迷宮管理者にして、空間魔導師だ。いらないと言う奴がどこにいる?」
「まあなぁ……」
確かに、ノークが言った通り、こうして並べてみれば、キソラは優良物件ではある。
「戦闘時の、あの口の悪さは問題だがな」
「……」
普段は出ないが、戦闘時は口が悪くなるキソラ。
レオンの指摘に対し、それが事実であるために、何も反論できないノークとイアン。
「まあ、完璧な人間なんていないんだから、ちょうど良い欠点なんじゃね? あの時だけ口が悪くなるなんて、まだ良い方だろ」
そうフォローと言えるかどうか分からないことを言うイアンに、ノークとレオンは何とも言えない目を向ける。
「確かに、そうだな。だが、イアン」
「何だ?」
「お前にキソラはやらん」
「結局、そこに戻るんかい!」
噛み付くイアンを余所に、レオンがノークに声を掛ける。
「ああ、あとノーク」
「何だ」
「キソラが、
「……」
レオンの言葉を聞いて、ここに来る前にキソラと会い、今と似たような会話をしたことをノークは察した。
「お前が好きになった人で、空間魔導師とかではなく、お前個人をちゃんと見てくれる女性。なおかつ自分とも仲良くしてくれる人――が、あの子が出した条件だ」
「キソラらしいなぁ」
特に『自分
「まあ、俺たち自身、人を見る目がある方だと思ってはいるからな。下手な奴は選ばないと思うぞ」
「お前らだって、俺が空間魔導師だから一緒に居るわけじゃないだろ?」とノークに問われ、イアンとレオンは顔を見合わせ、頷く。
「何言ってんだ」
「そんなの、当たり前だろ」
初等部からの付き合いとはいえ、ノークが空間魔導師だと分かってから喧嘩はしても、友達付き合いを止めようと思ったことはない。
「ま、お前が何かに騙されそうになったり、惑わされたりしたら、俺たちが全力で止めてやるよ」
「ああ」
「頼むよ、二人とも」
もし、そんなことになったら、一番効果的な方法が頭に浮かばなかった訳ではないが、元学院のトップスリーである。剣も魔法も実力が無いわけではないし、だからこそ、今はこうして騎士団に居る。
「それじゃ、訓練に向かいますか」
「だな」
「ああ」
休憩時間もそろそろ終わりである。
そんなノークの言葉に、三人は部屋を出ていくのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます