第3話 カップルの2人での意味

淡々と時間は過ぎて、お昼時にはお客さんが急に増えて、軽食を食べながら店番をしていた。

少し忙しい程、お客さんからの値段の交渉、サイズ感などを対応していたら、半分ほどブース内から出品していたものが減り、周りのお店が気になり始めていた。

「結構売れたし、早めに片付けて他の出店も見て周りたいなぁ...」

そういった事を考えながらふと、左のブースをみると、可愛いお姉さんは色鉛筆でお絵描きをしていた。手描きの絵を黙々と描き、シートの上には色鮮やかなポストカードが並べられている。

美術が好きな私には手の届かない夢であると同時に、少しの憧れと興味本位から気になった。

「観に行きたいなぁ...あとでいこう!」と、考えながらお姉さんの絵を描く姿をぼーっと見ていた...

その時、朗らかな表情のカップルさんが、

鹿のお医者さんのリュックぬいぐるみを手にし、私を見ていた。

「おいくらですか?」と優しい暖かい雰囲気で声をかける女性の隣には、同じ様に微笑んでいる男性が居た。

200円で値札を書いていたのだが、2人の素敵な雰囲気に動揺して、咄嗟に「100円です!」と応え、女性をよく見ると私より少し歳上で、「新品だね」と可愛く笑顔を見せる姿に安堵した。男性も年齢が女性と変わらない様子で、「いいの見つかったね」と優しい笑顔で彼女と目を合わせ、私の手のひらに丁寧に100円を置いてくれた。

女性が嬉しそうに手に持ち眺める姿は、平和の象徴にさえ思えた。

2人が「ありがとう。」と声を揃えブースから離れていく時に、大事にしていた気持ちから「チョッ◯ー!元気でね!」と思わず声をかけると、素敵なカップルさんは、振り返り片手づつで、ひとつのぬいぐるみを2人で持ちながら、「大切にするね」と同じ言葉を微笑みながら言い、手を振った。

私も満面の笑みで2人に手を振り返した。

2人が進むまっすぐな道に、悲しい事が起こらず幸せな家庭を育んでほしいなぁと、美しい所作で綺麗に歩き出すカップルに、暖かい気持ちと、〝愛〟について、教わった。

その時、私が感じた事を信じていたいと強く思った。


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