「センパイ、作戦会議ですね」
「いや〜ごめんごめん! てっきりゴミの山を描いているのかと…」
部長は全然悪びれもせずに両手を胸の高さまで上げて左右に小さく振った。本当に悪いと思っているのか、と疑わざるおえない行動である。
「悪いと思っているならそのニヤニヤ顔やめてください」
「バレてたか」
「今! 顔! 見て! 話しているでしょう?!」
私がそう言って指を指すと「指は差すものじゃないよ」とそっと下ろされる。そういうところは地味に育ちの良さが伺える。
「清水部長。優良さんとお話のところ悪いのですが、挨拶をしていただけますか? もう部活動終了チャイムが鳴ってしまいます」
いつの間にか絵の具を仕舞い終わったセンパイがそう言って自身の隣の席─部長の席─を指差す。そんなセンパイに部長は「はぁい」と緩い返事をして席に座る。センパイから渡された紙を見ながら部長はブツブツと何かを言っている。
恐らくセンパイが渡した紙は今月の部活動の内容が書かれたものだろう。部長の事だ。「面倒だなぁ」とか「やだなぁ」とか言っているのだろう。なんて人だ。
「はぁい。みんなちゅーもーく! 部活終わりのチャイムが鳴るよ〜。えっと…、何言うんだっけ…? ………え? あっ、そっか。んんっ。えーっと、今月は特にコンクールはないから各々好きように作品作ってね。足りたいものがある場合はこの挨拶が終わったら言う事。えーっと…これで良い? 大丈夫そう? ありがと。じゃあ終わり! 解散ッ!」
なんだか時々センパイに助けを求めていた気もしたがまぁそれはいいだろう。私は机の上に置いてあった忘れ物箱の中から取り出した物を全てもう一度忘れ物箱に仕舞う。この子たちはいずれ元の持ち主の所へ帰るのだろうか。もしかしたら一生このままこの箱の中かもしれない。
そう考えるとなんだか可哀想に見えてきた。
「優良さん。何をしているんですか」
そんな事を思っているとセンパイに声をかけられた。ハッ、と我に返って私は声のかかった方を見る。
「センパイ」
「もう部活動が終わりましたよ。ゲームセンター、行くのでしょう?」
「もちろんです!」
「清水部長との思い出作りですか?」
「え?」
「僕もなので」
センパイはそう言うとニコッ、と笑った。やはりセンパイには嘘は付けないらしい。
「それなら今日、部長の欲しいものをリサーチしましょう。それで今度2人でそれを買ってプレゼントするのはどうですか? きっと喜びますよ」
「名案ですね。そうしましょう」
「それじゃ、今日はゲーセン以外にも遊びに行かなきゃですね」
「ですね」
ヒソヒソと作戦会議をして私はセンパイと一緒にニコッ、と笑ったのだ。
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