伝説の雷鳥を焼き鳥にしてみた
武海 進
伝説の雷鳥を焼き鳥にしてみた
はるか昔は、今では物語の中の住人とされている妖精やドラゴンはこの世界に実在しており、時に人類と共存し、時に人類と敵対してきた。
しかし彼らは人類の発展と共に段々と数を減らしていき、現代で一般人が彼らを目にする事は無い。
俺はそんな伝説上の生物達の保護及び隠匿を任務とする国際機関に所属している。
「やっぱり不死身のフェニックスの方が強かったか」
今日の俺の仕事は相棒であるタナカと共にフェニックスとサンダーバードの縄張り争いによる一般人への被害が出ないかの確認だ。
炎と雷鳴が入り乱れた戦いは、サンダーバードの敗北によって決着が着いた。
「それでこいつをどうするんだタナカ? 埋めるかのか? これだけ酷い状態だと研究室行きは厳しいだろう」
フェニックスの炎でサンダーバードの死体は全身が焼け焦げていて痛んでいる。
出来ればサンプルとして研究室に送りたいところだが、これではそうもいかないだろう。
「そうだな、多少マシな部分は採取して後は手厚く葬ってやるとしよう」
こうして俺とタナカはサンプルの採取を始めたのだが、その最中にタナカがとんでもないことを言い出した。
「なあジョン、少しばかりこいつを食ってみないか?」
「……正気なのかタナカ。お前この間もクラーケンの千切れた足を食べて始末書書かされてたじゃないか」
俺の相棒は仕事は出来るのだが、何故か何でも食べたがるというおかしな癖があるのだ。
「そこにフェニックスの炎が枯れ木に燃え移ったのがあるだろ。そいつで俺の故郷の料理、焼き鳥を作りたいんだ」
今までこんなことが何度もあったので俺は知っている。
こうなったタナカは誰も止められないのだ。
「勝手にしろ。お前がおかしいのか、日本人が何でも食べる民族なのかどっちなんだろうな、全く」
俺はサンダーバードから切り出した肉でいつも懐に忍ばせている調味料と調理器具のセットで焼き鳥なる料理を作り始めたタナカを放っておいてサンプル採取を続ける。
「ふむ、流石伝説の雷鳥。痺れるような美味さだ。ジョン、お前もどうだ?」
出来上がった焼き鳥を頬張りながらタナカは俺にも勧めてくるが、俺は丁重に断る。
「やめとくよ。俺はお前と違って胃が鉄で出来ていないし、始末書を書くのも御免だ」
この後、更に追加で焼き鳥を作って食べたタナカが始末書を大量に書かされたのは言うまでもないことだ。
伝説の雷鳥を焼き鳥にしてみた 武海 進 @shin_takeumi
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