ゲートK~よくわかる狐娘ハザード~
アカバコウヨウ
プロローグ 狐の尻尾捕獲作戦
「聞いてねぇぞ……この腐れ狐娘共が!」
暗い建物の中に響くそんな怒号。
それと同時聞こえる銃を乱射する音。
そして――。
「こやーん」
「こややーん」
あの忌々しくも可愛らしく、おぞましい狐娘達の声。
「……っ!」
本当に。
本当にこんな事になるとは思わなかった。
(狐娘は夜は動かない……それがこんな――)
「
そう、今は余計な事を考えている場合ではないのだ。
「こやこやーん」
狐娘だ。
「こやこやこや」
時には四足。
時には二足。
壁、天井、床――あらゆる場所を足場としながら、おおよそ人間的でない奇怪極まる動きで近づいて来る狐娘。
(作戦のためにも、ここでやられるわけにはいかない!)
時雨は恐怖を意思の力で押さえつけ、すぐに銃口を狐娘へ向けようとするが――。
「あぁあああああっ!」
響く声。
響く銃声。
時雨と同期の隊員――
彼はあろうことか、銃を乱射しながら狐娘のいる前方へと駆け出して行ってしまう。
完全に取り乱している。
「待て、花田! 不用意に近――」
「ぎゅぽ――」
と、時雨の言葉を遮り聞こえてくる妙な声。
見れば、花田の腹から手が生えていた――狐娘の色白で、細くて可愛らしい手が、花田の腹を貫通していた。
「あ、ぅ……」
崩れ落ちる花田。
しかし、事態はそれだけでは終わらなかった。
「お、ごぇ……ごやぁああああん」
狐娘は自らの手を、自らの口の中――喉の奥へと突っ込みまさぐり始めたのだ。
そして次の瞬間。
ビチビチ。
ビチビチビチ。
狐娘が口の中から引き抜いた手に握られていたのは、狐の尻尾の様な生物だ。
狐娘はそれを倒れ伏している花田の口に押し付け――。
「やめろぉおおおおっ!」
気が付くと時雨の体は動き出していた。
時雨は花田の上にのっている狐娘を全力で蹴りつけ、吹き飛ばす。
そしてすぐさま。
「俺達人間を舐めるな! この畜生共が!」
撃ちまくる。
時雨は狐娘への怒りで我を忘れ、ただひたすらに狐娘へ銃口を向け、トリガーを引く。
結果。
カチカチ。
カチカチカチ。
弾倉が空になる頃になってようやく、狐娘はその動きを止めていた。
「はぁ……はぁ……はぁ……っ! 花田……花田!」
目の前の敵を排除したことで、少し落ち着きを取り戻した時雨。
彼はすぐさま先の花田へと駆け寄る。
「花田! 大丈夫か、死ぬな! 俺が絶対に研究所まで連れ帰ってやる! それまで死ぬな、そうすればこんな怪我くら――」
「し、時雨……俺、俺……」
と、時雨の方へ手を伸ばしてくる花田。
彼はそのまま涙を流しながら続ける。
「嫌だよ……あいつらにやられっぱなしなの……こ、こんな……こん、こんな、こんこん……こ、こここ――」
「はな、だ?」
「こんこんこやーん、こやーんこやんこややーん」
「っ!」
時雨が咄嗟に飛びのいた瞬間だった。
花田の体――骨格から顔つきに至るまで、その全てが一瞬にして狐娘に変貌したのは。
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