焼き鳥居酒屋じゃすてぃす
ムネミツ
第1話 焼き鳥居酒屋じゃすてぃす
「いらっしゃいませ♪」
ガラっと店の扉が開きお客さんが入って来る。
「どうも~♪ タレでつくねとコーラでお願い♪」
やって来るなり注文をするのは、赤い髪に赤いライダージャケットと全身赤のお姉さん。
「かしこまりました、お酒じゃなくて良いの
俺は瓶のコーラを素早く出して、つくねを焼きつつカウンター席に座る真紅のお姉さんに声をかける。
「うん、お酒は非番の時で♪ 何なら、また二人で一緒に飲まない?」
「それよりは家にお金落として下さいよ、つくね上がり♪」
「も~、商売上手♪ お姉さん君のそう言う所が好き♪」
茜さんはコーラをラッパ飲みしつつ、焼きつくねを美味しそうに頬張った。
「ごちそう様、カロリー取ったし気合い入れて怪人と戦って来るね店主君♪」
「ありがとうございました~♪」
素早く飲食を終えて会計を済ませた茜さんは、店を出るとバイクに乗って戦いに向かった。
「さて、次の客が来る前に片付けてっと」
茜さんがカウンター席で飲み食いした分を俺は片づける、彼女の活躍はテレビで見させてもらうか。
カウンターで次のお客に備えていくつか焼き鳥を焼いていると、また戸が開いた。
「いらっしゃいませ♪」
俺が声をかけると黒いスーツのおじさんが良い笑顔で笑った。
「よ、良い臭いだね♪ 今日は冷酒とねぎま塩で♪」
カウンター席に座りおじさんが注文をする。
「かしこまりました、
常連のお客のおじさん、鉄さんに尋ねる。
「おう♪ 久しぶりの有給よ、宇宙の警察も休むって♪」
「お疲れ様です、お冷とねぎまですどうぞ♪」
まずは冷酒の入った徳利と酒碗を差し出し、次に白皿の上に乗せた味付けは塩のねぎまを差し出す。
「いただきます♪」
酒碗に冷酒を注ぎ、グイッとあおる鉄さん。
「うん、冷たく入って熱くなる♪ 燃えるぜ、
鉄さんが笑いながら冗談で変身のキーワードを叫ぶ。
「親父の時は、店の中にも変身の光線が入って来たんですよね♪」
これからは普段は俺に店を任せると言って、自称セミリタイアした先代店主の父親の事を思い出す。
「ああ、あの頃はうっかり店の中で変身しちまって反省して頭丸めたよ♪」
今も坊主頭な鉄さんが笑いながら思い出を語り酒を飲み焼き鳥を食う。
「二代目もさ、またヒーロー復帰しなよ♪」
俺を二代目と呼ぶ鉄さんがヒーローへの復帰を誘う。
「まあ、今は店がるんでそう言う敵が出た時に呼んで下さい♪」
「ああ、俺達は待ってるぜ♪」
鉄さんも飲み食いを終えて支払いをすませると店を出て行った。
「ヒーロー復帰か、店は休むと常連さん達が困るからな」
洗い物をしつつ、今は料理に使ってる戦隊時代の黄色いナイフを見る。
高校時代はとある戦隊のイエローだったが、その時の仲間も今は色々だ。
「さて、今日はバイトに来てくれるヒーローがいないから頑張らないと」
時々ヒーローの後輩や先輩が店を手伝いに来てくれるが、今日は一人だ。
そんな中、戸がガラっと開くと三人の男女が入って来た。
「ど~も~♪ ゲンエキジャーで~~っす♪」
短い茶髪を逆立てた赤いシャツの元気の良い青年が挨拶をする。
「いや、お前先輩のお店なんだからな?」
長い髪を後ろで一つにまとめた青いシャツの眼鏡の青年がツッコむ。
「先輩、私達もお手伝いさせて下さい♪」
黄色いワンピースにお団子頭の美少女が笑顔で声をかける。
「……後輩ヒーロー達がウザ過ぎる話、とか書いて投稿するぞお前ら!」
俺は後輩共に叫んだ。
「え~? 俺達、パイセン大好きな可愛い後輩じゃないっすか~♪」
茶髪のレッドが笑いながらも、素早く動いてエプロンを付けて手洗いとうがいを済ませて手伝う用意を終える。
「まかないは、焼き鳥丼でお願いします」
ブルーもレッドに続き準備を終える。
「日当は、一人三千円でオッケ~で~っす♪」
準備を終えたイエローが日当を要求する。
「わかった、しっかり働けよお前ら!」
俺は仕方なく、押しかけバイトの後輩共を受け入れる。
「パイセンのツンデレ、いただきました~♪」
チャラいレッドには帰れと言いたかったが、仕事はできるので我慢した。
……くそ、本当に書くぞお前ら。
俺は、後輩共を使い次のお客に備えた。
「こんばんわ、今日はにぎやかだね♪」
グレーの背広に白い髪を七三に分けた紳士が来店した。
「「いらっしゃいませ~♪」」
後輩達と一緒に声を揃えて出迎える。
「星の巨人の先輩、お疲れ様でっす♪」
チャラレッドがかしこまりつつ、お冷とおしぼりを出して接客をする。
「ああ、まあ家も後輩達と頑張ってるよ♪ 僕はビールとぼんじりで」
人間に変身している老紳士の注文に答えて、俺はぼんじりを焼きブルーが
ビールを用意しレッドが差し出す。
そしてイエローがぼんじりを皿に盛りつけて、どうぞとお出しした。
「ありがとう、いただくよ♪」
老紳士が自分で瓶ビールをグラスに注ぎ、ぼんじりを食べながら飲む。
「……うん、地球に来た時からここの焼き鳥は美味いね♪」
老紳士は先々代、俺の祖父の代からの常連さんだった。
「ありがとうございます♪」
俺は目の前にいる宇宙の悪獣退治の専門家にお礼を言った。
「お、そうだ? うちの若いのが君とまた合体して戦いたいと言っていたよ」
老紳士がそう言って、大学生の時の相棒の名前を出す。
「流石パイセン、顔が広い♪」
チャラレッドが俺を褒めるが嬉しくない。
「まあ、久しぶりに彼に連絡してみます」
合体は解いても、俺の中に相棒の因子が組み込まれてる所為なのか時々感覚が繋がるので試してみようと思う。
その後も追加で店の焼き鳥を全種類注文をしてくれ、お酒もお替りしてくれた老紳士の為に調理と接客を行い彼が支払いを終えて帰ると、営業時間が終わり近くとなった。
「ふう、そろそろ閉めるかお前らもお疲れ様バイト代だ♪」
領収証も忘れずに書き手伝いに来てくれた後輩達に、バイト代を一人三万円ずつ封筒に入れて手渡しする。
「「あざ~~っす♪」」
後輩ヒーロー達三人が笑顔で礼を言う。
「さて、んじゃ焼き鳥丼を作るから食って行ってくれ」
俺がまかない用の焼き鳥で四人分の焼き鳥丼を作ろうとすると三人がカウンターの中に入って来る。
「まかないだから俺らも手伝いますよ、パイセン♪」
チャラレッドが手際よく丼を取り出して行く。
「俺も、焼くの上達したんですよ先輩」
ブルーが俺の代わりに焼き鳥を焼き出す。
「私は卵とじ作りますね~♪」
イエローは勝手に卵を使って調理を始めた。
「んじゃ、俺は牛丼屋のバイトで鍛えた腕前で飯をよそいます♪」
レッドは手際よく飯を丼によそっていく。
「お前らなあ、後片付けするのは俺なんだぞ?」
俺はため息を吐きつつ後輩達に作業をさせ、一緒にまかないの焼き鳥の卵とじ丼を食った。
そして、後輩共が帰った後で片付けと明日の仕込みを始める。
「ヒーロー復帰か、まあ暫くはできそうにないな♪」
いくつかのヒーローを経験して、実家のこの店を継いだ俺。
この店を愛して通ってくれるヒーロー達の、喉と腹を満たすのが今の自分の戦いだと思いながら俺はまた焼き鳥を仕込むのであった。
焼き鳥居酒屋じゃすてぃす ムネミツ @yukinosita
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます