『理不尽』算数解答編

南木

解答編

 KAC用に書き下ろした短編小説『理不尽』には算数……というか、難易度的には明らかに中学校数学の問題がありました。

 とはいえ、実は私、数学がかなり苦手なので、作問自体が間違えている可能性もあります(特に第2問)。

 それらの指摘も含めて、気になるという方は是非お付き合いください。




・問1


 今年、太郎さんと花子さんの夫婦は誕生日を迎え、太郎さんは花子さんの3倍の年齢になりました。それと同時に、JRの「フルムーン夫婦グリーンパス」を使えるようになりました。

 花子さんが生まれたのは西暦何年でしょうか


 答え:2000年


 こんな問題小学5年生に出すなよっていう時点で理不尽ですが、算数や数学の知識以外も求められる点が厄介です。


 まず「フルムーン夫婦グリーンパス」というのは、年齢の合計が88歳で購入できる乗り放題チケットの一種で、問題文では66歳と22歳夫婦が利用しているがもちろん違法ではない。極端な話、夫70歳、妻18歳でも可能だし、なんなら現住所が同じであれば入籍してなくてもよい。

 太郎さんと花子の年齢差は3倍であり、かつちょうど88歳になったと考えると、数式は以下の通りになる。


 花子さんの年齢を x とする。

 太郎さんは花子さんの3倍の歳なので 3x


3x + x = 88

4x = 88

x = 22


 よって、花子さんの年齢は22歳であり、今年は西暦2022年なので花子さんが生まれたのは西暦2000年となる。


 問題の解法で普通に「x」を使った一次方程式が出てきますが、これは中学2年生で習う「数学の」科目です。

 こんな問題を小学5年生に出した辻井先生はやっぱり理不尽ですね……



 実はこの問題の元ネタはyoutubeの「QuizKnock」が出題していたもののオマージュで、元ネタの問題はこれよりもう1段階難しい内容でした。


 元の問題


  今年(※2021年とする)、太郎さんと花子さんの夫婦は誕生日を迎え、太郎さんは花子さんの3倍の年齢になりました。それと同時に、JRの「フルムーン夫婦グリーンパス」を使えるようになりました。

 花子さんが生まれた年の『今年の漢字』は?


 この問題の答えは動画を直接ご確認ください。



 ちなみに、作中で出てくる「国連人権裁判所」というものは現実世界でも存在しません。

 それに近い組織と言えば「国際司法裁判所」もしくは、国連ではないが「欧州人権裁判所」というEUの組織があります。

 どちらも日本人同士のもめごとは解決してくれないのでご注意ください。

 もちろん66歳と22歳の結婚は、日本の法律上では合法です。




・問2


 3人の先生のうち、国語の先生は社会の先生の2倍の年齢で、もう1人の理科の先生と合わせて年齢の合計が88歳になり、かつ3人の先生の年齢がそれそれ同じではないとき、先生たちの年齢の組み合わせは何通りあるでしょう?


答え:5通り


 この問題は南木完全オリジナルなので不備があるかもしれません。

 数学に自身のある方のご指摘お待ちしております。


 さて、この問題の厄介な点は単純な計算問題と見せかけて、目に見えない制限があることです。

 特に何も考えなければ、以下の通りになります。


 社会の先生の年齢を x とすると、国語の先生の年齢は2xとなる。

 3人の先生の合計は88歳なので、理科の先生の年齢は「88 - 3x」の余りとなるわけである。


 手っ取り早く考えると、90が3の倍数なので、xの最大値は30の一つ手前、29が最大値となるはず。

 なので、答えは29通り…………とはなりません。


 だって、社会の先生の年齢を29歳にしてしまうと


 国語:58歳 社会:29歳 理科:1歳


 どこの世界に1歳の先生がいるんだって話です。

 じゃあ、先生でもおかしくない年齢ってなんだよってことになるわけですが、教員免許を取得できる法律上の最低年齢は18歳なので、どの先生もそれ以上の年齢でなければなりません。

 なお、定年もあるので上限は60歳なので理科の先生の年齢が60以上になる場合もおかしいのですが(最低値:国語:2歳 社会:1歳 理科:85歳)、最低年齢だけ考えておけば最大値がそこまでならないので、今回は考えないことにします。


 ということで、仮に理科の先生が最小値である18歳だとすると、3人の先生の年利配分は以下の通り


88 - 3x = 18

3x = 70

x = 23.333...


 はいダウト。

 年齢は当然整数にならなければだめなので、いろいろ絞り込むと無理のない範囲に収まるのは以下の通りになる。

 

国語:36 社会:18 理科:34

国語:38 社会:19 理科:31

国語:40 社会:20 理科:28

国語:42 社会:21 理科:25

国語:44 社会:22 理科:22

国語:46 社会:23 理科:19


 じゃあ6通りが答え――――と言いたいところですが、問題文をもう一度読むと


「3人の先生の年齢がそれそれ同じではないとき」


 という一文があるのを見逃してはいけません。

 なので、「国語:44 社会:22 理科:22」のパターンは対象外になるため、残った5通りが正解になるという訳です。

 我ながら実にややこしい問題を作ったなと思います。


 なお、本文を書く時間よりも最後のこの問題を考える方が3倍くらい時間がかかってました。

 生まれて初めて数学の問題を作ったからね、しょうがないね。


 小説を書くのもひたすら量を書いて慣れていく必要があるのと同じく、問題を作るのにも経験値が必要なんだなと思い知らされたのでした。

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