鳥食べたいなァ……

ぽんぽこ@書籍発売中!!

何食べよっかなァ……


肉が食べたい。


夜のスーパー。精肉コーナーの前で立ち、私は腕を組む。



肉が食べたい。


噛みしめると肉汁が溢れる肉の塊に、ガブっとむしゃぶりつきたい。


一週間に二度三度、そんな欲望がムラムラと湧いてくる。



己の中に棲む獣を鎮めなくては。


しかし、どの肉を選べば満たされるだろうか。



目の前に広がる肉の海を眺めてみる。


牛……原油価格の高騰のあおりなのか、ここ最近の牛肉はやたら高い。普段からよくお世話になっていた牛コマ肉でさえ、僅かなグラム数のパックで数百円もする始末だ。財布の中が寂しい今ではちょっと手を出しにくい。


豚……使用できる料理が幅広く、美味しい。――のだが、レパートリーが尽きた。それに最近は調子に乗って豚キムチだの豚しゃぶだのを食べ過ぎたせいで、若干飽きてきてしまった。




私の視線は、自然に鶏肉へと向かっていく。


こういう時に鶏肉というのは有難い。



頭で思い浮かべる理想の肉料理。


さて、なんだろう。



パッと思い付くのはシンプルなソテー。


国産の鶏もも肉に塩コショウを振りかけ、フライパンでジュウジュウと炒めるだけでできるお手軽料理だ。


皮目は強火でしっかりと焼いてやれば、噛むときにパリっとした食感が味わえるのもまた良い。




しかし今はもう少し手の込んだ料理が食べたい。


強いて言うなら、醤油ベースの味付けが良い。




鶏むね肉のヨダレ鳥。


ヨダレ鳥か……良いかもしれない。


何と言っても、あのタレが絶品なんだよなァ……。



醤油に刻みネギ、ごま油に酢を加える。


更にニンニクやショウガ、唐辛子などの香辛料が入ることで風味がグッと上がる至高のタレ。



サッパリとした胸肉に、あの赤々とした刺激的なタレが絶妙にマッチする。


ご飯がモリモリと進むのは間違いない。


もちろん酒のツマミにも合う。





……酒のツマミかぁ。



牛、豚、鶏肉と来てその次にあるもの。


端っこに置かれた調理済みの御総菜コーナー。


値引き狙いのオバちゃんにさえ選ばれることの無かった、焼き鳥の詰め合わせ。





……。


…………。



私は無言でタレと塩の焼き鳥パックをがばりと掴むと、缶ビールを迎えに酒コーナーへと大股で歩き始めるのであった。




料理? そんなの、やりたい時にやれば良いんですよ。



お惣菜、美味しい! 最高!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

鳥食べたいなァ…… ぽんぽこ@書籍発売中!! @tanuki_no_hara

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ