ミハルが神社の階段を上がって行くと境内に人影が見えた。連絡はしてなかったけれど風美さんが出てきてくれたのだろうか。ミハルは階段を上がりきる何段か手前で足を止める。

「やっぱり来た。銀ちゃんのカン冴えてるね」

「なんでわかったの」ミハルが小さな声でつぶやく。

「あいつの部屋に行きたくなかっただけだよ」

 銀平は笑顔でミハルに近づく。

「どっちにしろ、何も決まってないんだろう」

 ミハルは銀平の顔を見ないままうなずいた。

 風美の手に引かれてミハルは境内を神前のほうに歩いていく。銀平も後を追った。

「どこで過ごすかはお前が決めればいい」

「こっちにいたいのなら僕が親父に話してやるよ」

 風美とミハルは無言のまま神前で手を合わせる。

 銀平は二人の後ろでそれをじっと見ていた。

「銀平、今日はあたしがミハル預かるよ」

「おじさんは明日帰るの」

「どうだろう、わかんないや」

 そう言って銀平はゆっくりと神社の階段を下りていく。何がミハルを引き留めているのか。いとこと言っても伯父さんたちはずっと音信不通で、あいつがこっちに来てからの付き合いしかないし。

 銀平は人気のまばらになった商店街を歩いている。店の近くまで行くと春樹が戻ってくる銀平を待っていた。

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