第14話 入学試験②

 声のした方を見る。


 一応鑑定しとくか。まずは男の方だ。宝石をジャラジャラと鳴らしながら、女の子の手を掴んでいる。丸々と太った体に宝石がジャラジャラか。くそ野郎のテンプレみたいなやつだな。



名 前: ドルトス・フォン・アンドレス

性 格:傲慢、選民思想

スキル:【剣術】


演説力:60

人 望:30

武 勇:50

政 治:40



 ふむ。フォンとついているということは貴族だな。アンドレス? どこかで聞いたことがあるような…… あ!! 父上の弟の家系だ! それにしてもひどいな。軒並み一般人と同じくらいだ。平均的な一般人って感じだな。いや、人望が滅茶苦茶低いから、一般人以下だな。普通の人でも60はあるぞ。性格が影響してるんだろうな。あらかた、父の影響を受けて性格が捻じ曲がったってとこだろう。


 対して、女の子の方は、平民の衣服を小綺麗にした衣服を身につけていて、可愛らしい顔立ちをしている。黒髪と相まって庇護欲を掻き立てられるような子だ。将来は美人になるだろう。



名 前:セシリア・フォン・ミリード

性 格:おっとり、真面目

スキル:【光魔法】


演説力:80

人 望:95

武 勇:50

政 治:60



 ふむ。女の子の方も貴族か。僕は一応家名は子爵ぐらいまでは暗記してるんだけどな。聞き覚えがない。ということは男爵位か準男爵位ってところかな。演説力と人望が高い。正直これだけあれば為政者としては十分と言えるだろう。それに加えて【光魔法】持ちだ! 国にとっては貴重な人材だぞ。


 これは、ドルトスが100%悪いに違いない。でも、万が一でも間違えると大変だから少しだけ話を聞いてみよう


「痛いですっ!!! 離してくださいっ!!!」


「お前の父の身分は?」


「男爵位です……」


 やはり男爵位だったか。これじゃあ、身分の差がありすぎて埒が明かない。


「ハハッ。くそみたいな身分だな。俺は、公爵家のドルトス様だ。お前の父なんぞ一瞬で殺せるぞ!? 俺の女になれ」


「い、嫌です…… なりたくありません……」


「じゃあ、お前の父を殺すしかないみたいだな。いや? 母親はいるのか?」


「います……」


「じゃあ、母親は俺の遊び道具になってもらうか。ストレスの発散ぐらいには使えるだろう。ハハハッ。泣き叫びながら俺の性道具になるだろうな。ギャハハハッ」


「や、やめてください…… それだけは…… 私はどうなっても構いません! なので、家の取りつぶしだけは……」


 こいつはくそだ。とんでもないくそだ。万死に値する。こんな奴が僕の親類だって? 虫唾が走る。こんな奴が? 


 こんな奴は人でもない。ただの化け物だ。


「おい。やめておけ」


 できるだけドスを効かせた声で声をかける


「なんだお前? 今はいいとこなんだよぉ!! 引っ込んでろ!」


 僕の顔も分からない程のバカなのか? これでも僕は王子だぞ? 公爵家の一族なんだからそれぐらいは覚えとかないといけないだろう。


「俺の顔も分からないのか?」


 周囲にいる何人かが僕の顔に気づいたみたいで顔が青ざめている。何回かはお披露目会とか社交場に出たりしてるから知っている者も多いはずだ。


「お前の顔なんか知るかよ。それより邪魔をするな」


「お前!! このお方になんて言い方を――」


「良い。エルド。今は黙ってみてろ」


「しかし――」


「こいつには学園のルールを叩き込まなければいけない」


「学園のルールだぁ?そんなもんはあってないようなものなんだよ。俺様こそがルールだ。」


「ほう? じゃあお前は王族さえも自分のルールのもとに動くべきだと言っているのか?」


「本当は俺の父上が王位に就く予定だったんだからな。俺も王族のようなものだ」

「そうか。だが、お前は王族ではない。ただのクズだ。くそだ。人の皮を被った化けもんだ」


「お前! 俺様に向かってなんて口のききようだ! 殺すぞ?」


「殺せるものなら殺してみろ。俺の名前は、ユーリ・アレクシオール。正統な王族家だ」


「なっ///////// おまっ。貴方が王族?」


「周りの奴は大体気づいてるぞ。お前を不敬罪で処刑することも可能だが?」


「そ、それだけはっ!!!」


「じゃあ、謝れ。そこの女性に。」


「この俺様がこんな奴に謝罪など――」


「どうする?死ぬか?」


「あ、謝りますっ!」


「そうか。なら謝れ」


 僕の言葉を受け、ドルトスは手を離し、セシリアに「申し訳ない」と謝った。


「もうお前の顔を見たくもない。去れ」


「なっ/////// 分かりました……」


「あと一つだけ。学園では、身分を使い権力を振りかざすことは固く禁じられている。そのことをその未熟な頭に刻み込んどけ」


「は、はい……」


 怒りの表情を浮かべたまま、ドルトスは自身の取り巻きを連れてこの場を去った。正直あんな奴がこの国の貴族の息子だということ自体がくそみたいだ。変えていかねばならない。だが、あいつも公爵家だから、迂闊には手を出しづらい。用意周到に行わなければ。

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