第2話 転生②
しばらく僕は声をあげて泣いた。泣き方すらも忘れていたので涙の止め方も分からず止まるまでには随分と時間を要した。
「――ッ すいません。泣いてしまって」
「構わないですよ。それが本来の人の反応ですから。むしろ、今までの守さんの方が異常だったんです。ここで泣いて気が晴れるのならいくらでも泣いてください」
「ありがとうございます。それで……僕はこれからどうなるのでしょうか?」
「あぁ、そうでしたね。守さん、貴方さえよければ、異世界へ転生してみてはいかがですか?」
異世界? 確か、高校の友達が「異世界ヒャッホー!!!」とか言ってたあれのことかな。
「そう、それです」
「具体的にはどんな世界なんですか?」
「そうですね。一言で言うと、中世ヨーロッパの文明レベルの剣と魔法の世界です。地球みたいな民主主義とかがあるわけではなく、世襲制の国々で成り立っています。人々は剣や魔法を扱い、人や魔物相手に戦います。更に、亜人と言われるような人種も存在しています。」
「はぁ。まず、地球よりかは文明レベルは落ちるんですね。魔法というのは誰でも使えるようなものなのですか?」
「いえ、限られた才能を持った人にのみしか使えないようになっています。魔道具という魔物の心臓でもある魔石を用いた道具もありますので、守さんも使う機会はあるかもしれませんね」
「そうなのですか。では、魔物というのはどのような存在なのでしょうか」
「怪物のような認識で構いません。詳しくは、転生した後に調べてみると良いでしょう。簡単に情報は手に入るでしょうから」
「分かりました。では、亜人というのはどのような人のことを言うのですか?」
「亜人というのは、ケモ耳が生えていて尻尾がある人など種族によって様々です。狼族に猫族などです。国や人によっては、亜人を人より下等な生き物と認識している国もありますが、基本的には人間と変わりません。少し人族より、足が速かったり、力が強かったりするだけです。貴方が転生する予定での国では、そんなことはないと思いますので大丈夫だと思いますよ。」
「分かりました。ちなみにどのように転生するのかは教えていただけるのでしょうか?」
「生まれてすぐに転生すると、守さんの精神状態がおかしくなりますので、5歳からの転生となります。それまで生きた記憶は転生した時に調和がとれるように致しますので、貴方は前世と今世、両方の記憶を保持して転生することができます」
「そうなんですね。それなら安心ですね」
「前世の記憶を消去して転生することも可能ですが…… どうなさいますか?」
「前世の記憶はしっかりと残しておきます。知識は何かと役に立つでしょうし、あんな人生でも僕が生きた証なので……」
「そうですか…… では、転生の手続きに入ります。貴方が転生する予定の家は、裕福な家庭かつ優しい家庭に設定してあります。また、貴方が生きやすいようなスキルと呼ばれる力も用意しておきます。転生した後はそのスキルを説明するために一度貴方の夢に現れますので、ご了承ください。では良いですか?」
「はい。何から何までありがとうございました。貴方のことは忘れません。ありがとうございました。」
「それでは転生させます。今度こそ貴方の人生に幸あれ」
眩しい光が放たれ、僕は意識を失った。
「貴方にはひとつ嘘をついてしまった…… 貴方のお母さんは本当にダメな人間なのよ…… それこそ貴方が立派に育ったのが奇跡なほどにね」
神様は1つ嘘をついてしまった。しかし、神様が嘘をついたのには理由があった……
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