あたしの対空技バニシングフィスト(←→↓→↑+P)で一緒に鳥焼いちゃおっか
鮎河蛍石
バニシングフィスト(対空) : ← → ↓ → ↑ + P
「勝者!バニシング
2022サイキックファイトの勝者がここに決した。
鳴りやまぬ歓声のなか、勝者のバニシング焔は対戦相手のバードストライク飛鳥に手を伸ばす。
「いい勝負だったわ飛鳥」
「最終奥義を破るなんてね」
バードストライク飛鳥はバニシング焔の手を取って立ち上がり、勝者の右手を高々と掲げた。
歓声の熱気は更に増しバニシング焔とバードストライク飛鳥のベストバウトを称えた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
優勝賞金一千万と書かれたフリップを持った焔は勝利者インタビューを受けている。
「バニシング焔さん今のお気持ちはいかがでしたか?」
「熱いですね」
カメラのフラッシュが焔に降り注ぐ。
「今のお気持ちを誰に一番伝えたいですか」
「飛鳥いる? あ居た飛鳥こっちこっち」
「え? 私?」
準優勝五百万と書かれたフリップを持った飛鳥が焔に呼ばれ、インタビューに参加する。
「このサイキックファイト大会の賞金を焼き鳥屋台経営の運転資金にします」
「あなた正気!?」
焔の言葉に記者がざわつく。
あの娘は何を言っているんだと。
「あたしは超能力者の格闘技術を競うサイキックファイトの未来について考えていたのです。そして思い至ったのです。サイキックファイターの持続可能な活動について」
「それが焼き鳥屋台だっていうの?」
「順を追って説明するね飛鳥。サイキックファイターの競技者寿命は極めて短く、二十代後半から減少傾向を示し、三十代前半のファイターが占める割合は競技人口の1%を下回ります。なぜこのような数字を示すのか? わかる飛鳥?」
「能力が減衰するから?」
「その通り! あたしたちのサイキックは加齢に比例して減衰します。最新のサイキッカー研究によると、将来の不安がストレスとなり能力の出力不調が出ると明らかになりました。サイキックファイターが抱える将来の不安、それは経済的な不安です。超能力者雇用均等法の施行が十年前に成されましたが、実情は芳しくなく。サイキックファイターの社会貢献の機会創出は大きな課題となっています」
「あんたそんな真面目なことを考えていたっていうの……」
飛鳥は自分の視野の狭さを焔の勝利者インタビューで思い知る。
目の前の勝ちに拘った彼女と、サイキックファイターの未来まで見据えた焔。
この意識の差が、勝敗を分けたのだと飛鳥は痛感する。
「現在あたしは高校三年生ですが、サイキックファイターの活動に力を入れ過ぎてしまい、受験及び就職活動は行っておりませんでした。ですから、ここは飛鳥の鳥を召喚するバードストライクの能力と、あたしのバニシングフィストの能力を生かし焼き鳥屋台を経営し、サイキックファイターの雇用モデルを提案したいのです」
「話が飛躍し過ぎよ!」
飛鳥のもっともすぎるツッコミに合わせ、カメラのフラッシュが激しさを増し、ツイッターのトレンドは#バニシングJK焼き鳥がランクインする。
「飛鳥のバードストライクをあたしのバニシングフィストで撃ち落とし、バニシングストライクチキンとして提供しようと考えています。店舗展開を最初に考えましたが、防災の観点から火災の危険があるため、屋台での野外営業を行おうと思っています」
「消防法が許しても保健所が許さないわよ!」
焔は食品衛生責任者養成講習会の修了書と調理師免許を取り出し掲げる。
「噓でしょ……」
「大会賞金の一千万納税後に残る額を商業高校に通う飛鳥に弾き出して欲しい」
「もう好きにしなさいよ」
「あたしの対空技バニシングフィストで一緒に鳥焼いちゃおっか?」
飛鳥は焔の差し出した手を取った。
あたしの対空技バニシングフィスト(←→↓→↑+P)で一緒に鳥焼いちゃおっか 鮎河蛍石 @aomisora
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
新生活、やることが多い/鮎河蛍石
★3 エッセイ・ノンフィクション 連載中 3話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます