3章 人の理を喰らいし、狂気の真理

第59話 創星譚ーー内なる神と外なる神ーー

 荘厳かつ神々しさ溢れる図書館にて、お目当ての本を見つける。

 その本は灰色の配色で、辞書かと言う程に分厚い。そして、その本のタイトルは『創星譚・上』。この世界が出来た訳が書かれた書。下界マテリアル・ワールド、私が先程まで居た神族インナー・ゴッズが住む事が出来ない領域には存在しない禁書級の本。


 ここは世界図書アカシックレコードと呼ばれるスピリチュアル・ワールドに存在する此の世総ての情報が本として保管された世界の中でもトップクラスに大事な場所である。

 そんな場所に私が入れているのかというと、【小世界を識った者】という称号の効果のお陰だ。この称号により一部とは言え、世界の情報を読める権利が与えられるのだ。


 私自身、まあまあこの世界の成り立ちについては理解していると思っているが、如何せん情報量が多くて自身の脳だけでは処理し切れないと判断した。そこでここにある書物力を借りて、情報の整理をしようとし、今の状況に至っている。


 今回は『創星譚・上』を読もうと思う。

 プレイヤーはこの世界の始まりを知らないままスタートする。そう考えると、私がプレイヤーの中で最初に星の始まりを知る事になるのだろう、多分。


 では、読んでいこう。


*****


 在りと凡ゆる世界軸の内、最も繁栄し、外なる世界に於いても優秀かつ偉大な地と呼ばれた地、星の生誕と内なる神と外なる神の闘諍の記憶を此処に記す。


 遍く星々の中でも秀抜と評されし星の成り立ちは一柱の最上位神、記憶や保管、調停と設定を司る大神、【神算天脳フューニアU・N・E・I】により創造される所から始まる。

 彼の大神の御身は鴻大な生命の保管庫たる脳のような形で出来ている。其処には人らしい感情は一切なく、一つの機械そのものである。


 彼の神は50日掛けて、星の源たる星核を創り出した。星核の神性の純度が高い程、星が熟み、凡ゆる星々に差を付けれる。

 神性を混ぜる事は己が神としての素質を廃棄する事と同意義である筈なのだが、大神は自身の存在意義さえも削り、完成させた星。それがこの星なのだ。


 全知全能の存在により、大地を創り、大海を作り、天空を創造した。更に、生命の材料となり得るモノを各地にばら撒き、星の理を定めた。

 また、地球と呼ばれる星を参考にし、新たな天則を設定した。より情報を身近なモノとする為にステータスという現在世界にて常識とされる概念を形創った。

 更には、地球にて覗き見た戦乱の無情さを嘆き、自己を守る為のスキルを創った。……それは最早、遠き昔の話であり、スキルの用法は現在では変容してしまった。


 それはさて置き、偉大なる父神は至大な星を効率良く治める為に、己が神格をまた削り、新たな眷属神を創造した。




 赤熱とした混沌の海を照らす一つの巨星。巨星から伸びる幸福の光をよりこの星に届け、皓皓たる時を管理する神。


 この星に隣接する星の輝き、煌々たる時が沈みし時に、その星の輝きを以って、生命に安らぎと希望を与えし時を管理する上位神。


 星を覆いし、空の帳。天を天たらしめる空の王たる眷属神にして上位神。


 星の住民に水という恵みを育む原初から生まれし眷属神であり、上位神。


 星の基盤となりし、父なる大地を管理する世界の覇者たり得る上位神。


 時を、空間を掌る、最上位神にも劣らない力を持つ理の権威、世界を管理する者として申し分なき力を持つ、幾万の時の定めを見下ろした父神。


 生命の神秘を見守り、生命の進化を慈しみ、生命の衰退を嘆いた超常の母なる神。


 星の善きを守る、善なる冀望。善性と過ぎ去りし時を共に歩み、今も尚伴い続け、未来永劫不変たるであろう善の代弁者にして、体現者たる神。


 星の悪しきを是とする、悪なる絶望。悪性と共に過去、現在、未来を悪の繁栄に努めた、人智を超えし、悪の支持者にして、悪の創始者たる神。


 万物、万象に破壊を齎した発展の基礎を司る崇拝されし、世界の始まりの神。


 万物、万象を維持した発展の結果を示す愛されし、世界の始まりの上位神。


 万物、万象に創造を齎した発展の終局を司る敬愛されし、世界の始まりの神。


 万物、万象に定められた、理を表した性たる属性総てを管理、支配、放棄の権能を持つ在らねばならない星の神。


 生きる上で必要不可欠な要素である技術を司る、理の守護者たる世界の神。


 システムと呼ばれる権能を設定する事が出来る上位神が一柱、生命総てが持ちし役職を司る星の神。




 これら15体の上位神を創造し、星の管理に努めた。


 星はより熟成し、他の星々よりも一歩進んだ力を持っていた。しかし、そんな繁栄の一途を止めざるおえない事態が発生したのだ。

 

 神とは基本的に星に宿し、管理者であるが、例外も存在する。

 混沌の海にて冒涜と背信に酔い、悪を悪にて煮詰めたような沙汰すべき虚無なる邪悪。星々を喰らいし、凡ゆる神々に嫌われた神ならざる神。希望や絶望さえも消え失せ、忌諱せし空虚の概念が象った嘔吐を催す反吐のような生まれながらの嫌悪物。外法を許容し、嘲笑う巨悪。それが外族アウター・ゴッズ。星の理を拒絶せし、全宇宙の大敵たる存在。


 彼らは邪神や悪神とは根本的に異なる。この世星に住む邪神や悪神と類いされる存在は悪を容認し、擁護するが、星という概念もまた、愛している。『愛する』という感情を持っている。形は歪であるのは間違いないが、それでも星の危機とあらば、己が神格を賭けて戦うだろう。というより、実際に戦った。

 しかし、外族アウター・ゴッズは『愛』を知らない。彼らにとって、感情は『如何に星を滅ぼすか?』か『如何に愉しむか?』の二つだけである。


 そして、そんな外道と言える神ならざる外なる存在がこの星に侵略しに来たのである。


*****


 ……ここで終了か。まあ、整理は少し付いたが、私が知りたいのはそこではない。外族アウター・ゴッズ神族インナー・ゴッズの闘争なんかは興味がない。

 神に至る方法、違う本でも探すか。悪魔神、いや、大罪神が言っていた事も実行しているが、成果がない。学校も始まり、退屈な生活が始まる。

 儘ならないものだな、人生は。


 それにしてもこの星の名前は何と言うのだろうか?

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