第48話 壊力乱震

 轟音と爆風を齎しながら、聖なる獣が体勢を崩し、地に伏す。しかし、HPを見てみると、まだまだ余裕がある。大体8割……それ以上は残っているだろう。


 重力が通常時に戻り、上空から尋常じゃない程の殺気が向かってくる。まあ、リーシアで間違い無いだろう。だが、この殺気は一般人でもわかるモノだな。恐らく、体を抱えて慄いている事だろう。

 そんな事よりも、早く逃げないとな。リーシアの攻撃に巻き込まれて、致命傷を負うなんて恥でしかないからな。


 あぁ、次いでにあのスキルを使って去ろうか。



「《傲慢なる王の手イヴィル・オーダー》」

「《重力拳》!!!」

「……おっ、と」



 あっぶなかった。アレは確殺されるところだった。私を狙って放った気がしたが、気のせいだろう。


 それよりも、何も手に入らなかったな。無償で使用できるとはいえ、確率が低い。使い過ぎて、殺されるのも腹が立つからな。程々にして行こう。



「リズ、今が鬱憤を晴らせる時だよ!早く来なよ!」

「ああ、今行く」



 巨大な龍の頭を殴りつけ、ニコニコと笑いながら、私を誘う悪魔の構図は大分サイコだが、私は慣れているのでスルーする。


 私は幸福に煌めく王の肉叉フェリスを構え、《炎氷纏》を発動させる。

 そして、NEWSの瞳に狙いを定めて、《残虐なる刃》を発動させ、突っ込む。グチャァと嫌な感触が手を通して感じられた。でも、それも私は慣れている。更に、奥へと突き刺し、行ける所まで続ける。



『GEOOOORAEEEEAAAA!!!』



 耳を劈く騒音が辺りに響き渡る。


 NEWSは私たちを振り落とそうと、首を回す。が、リーシアがいつの間にか龍の顎下に移動しており、《重力脚》を発動させ、回し蹴りを出っ張っている所……喉仏に叩き付ける。

 硬い鱗に覆われているといえ、超強化されたリーシアの攻撃を易々と防ぐ事はできなかったようだ。

 喉が陥没しており、もう声を出す事はできないだろうというレベルの外傷を受けていた。まあ、HPから見ればまだまだ余裕があるが。


 それよりも、私の仕事に戻るか。

 幸福に煌めく王の肉叉フェリスが肉叉の半分まで突き刺さった事を確認すると、瞳を回してくり抜く。くり抜く?くり抜ける?……瞳が大き過ぎて、上手くくり出せない。血管が太く、瞳の大きさも異常だから、私では無理なのか?いや、私に無理な事は殆どないはずだ!



「ググぅ、グっ!アアアア、ラァ!!」



 黒い血が噴き出すと共に、巨大な龍の瞳をゲットした。みんな瞳モンゲットだぜッ!……少し巫山戯たくなっただけだ。気にするな。


 ググッと、HPゲージが削れた様に見えた。と言っても、7.5割以上は残っているのだが、な。というより、コイツはゴリ押しじゃないと勝てないんじゃないか?


 そして、NEWSは口を大きく開いている。ならば、私がするのは一つだけ。

 幸福に煌めく王の肉叉フェリスをスイングし、目玉を顎門へとシュートする事だ。

 ……ナイスシュートだ。いい顔だ。その嫌悪感に塗れた色。いい、素晴らしいな。


 うーん、こっからどう攻めようか。なんか鬱憤の方は私は晴れたしなぁ。リーシアは知らんが。

 一応、状態異常でも掛けておくか。


 紫煙呪縛と《魅了の瞳》や《色欲なる王の瞳イヴィル・オーダー》に《傲慢なる王の手イヴィル・オーダー》を使用する。


 リーシアを見ると、同じような事をしていた。母体が同じだと、考えも似るのだろうか?組織に後で聞いておこうか。


 《状態異常:呪縛》を付与できたようだ。先程の攻撃で《状態異常:出血Ⅲ》も与えられた。更に、スキルを奪えた。しかも、このスキルを奪えたという事は不安要素が消えた事だな。


*****

刻刻流転ジクウモンソウゾウ

 とある混沌の御使いが気紛れに創り出した封印すべきスキルの一つ。

 絶対に使用してはならない。絶対だ。絶対に、だ。

種類:真理系

属性:時空

効果:残っているMPとSPを消費する。(MP+SP)×5s前の状態に体を戻す。使用後、このスキルは消滅する。

   しかし、上記の効果は下記の効果の副次効果であり、延長線上にあるというだけだ。

   本■■効果は■■られた■■■の■魁たる■■■■■の解■と、■■■の■■の■■である■■■■■で■る■■■■ ■■■の能■■■上化や■■の智■■■覚、能■を複製■■■与す■■■■うもの。■■■、■■の■■■■■■■■で通■時では■■■■■■を■■■こし、■■を■■に■とす。■を■■■■為■■の最■■低の■■■■■スキル。

*****


 使われていたら、なんか起こっていただろうと思うスキルだった。

 しかし、伏せ字が矢鱈と多いな。世界ゲームの根本に位置するスキルや情報なんだろうな。


 リーシアの方に近付き、話し掛ける。若干顔を下に向けている所を見ると、スキル徴収は失敗に終わったのだろう。



「リーシ……ア?」

「ハイ、マジデスミマセンデシタ。ホントウニスミマセンデシタ!……あっ、リズも一緒に謝って!リズも共犯なんだからね!」

「は?……あっ」



 リーシアが顔を下に向けている理由がわかってしまった。

 そう言えば、二回目のリスポーンの時に来いとか言われていたなぁ、と他人事のように考えていた。


 フレンド機能にはチャットの他にもホログラム機能があり、目の前には苛立ちを隠し切れていない……いや、隠そうとする気がない白鎧のプレイヤーが居た。

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