第16話 満ちへの道

「腹が痛い。おい、魔王。そんなに力を込めなくてもいいだろう」

「いえ、リズが狂気に取り憑かれるのが悪いのですよ」

「......御尤もで」



 私は現在、魔王の足元で這い蹲っている。

 理由は《狂乱地獄ケーニヒ・デァ・へレ》のデメリット効果の一つ《状態異常:狂気V》が付与されて魔王に襲い掛かったが、鳩尾に魔王の拳がクリーンヒットし、絶賛悶絶中というわけだ。

 さらに、装備が燃えてしまい半裸状態だ。

 HPや状態異常などは回復してもらった。


*****

狂乱地獄ケーニヒ・デァ・へレ

 真なるスキル。狂乱を統べ、悪魔を統べ、そして地獄を統べる王に至らんとする力。

 しかしまだこの力は未完である。その為、感情を越えし感情、【狂情】を知ろ。そして、大罪の狂情を支配しろ。

種類:狂情系

属性:地獄

効果:SP消費 常時5秒で10消費する CT 168h

   SPを常時消費することでLUK以外の合計数値を×3.0する(抑制中)。

   種族を一時的に【地獄の王ヘルロード(狂乱)ヴァーンズィン】へと変化させる。

   装備しているものに《地獄の業火インフェルノ・ノヴァ》と《狂乱瘴気バース・オブ・ヘル》を付与する。スキルの解除後、どんな装備でも破壊される。

   半径25m圏内にも《地獄の業火インフェルノ・ノヴァ》と《狂乱瘴気バース・オブ・ヘル》を付与する。

   自身に《状態異常:狂気V》を付与する。

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地獄の王ヘルロード(狂乱)ヴァーンズィン

 地獄を統べる王が転生する種族。魔王に類する種族の一つ。

 全ての種族が至れる上位種族である。常に地獄の炎と瘴気を帯びている。

 また、今代の王は狂乱も統べる王。まさに地獄に相応しい王。

効果:狂気・地獄・闇系統属性のスキル効果上昇(大)

   【天国の王ヘブンロード】との戦闘時、ステータス上昇(大)+スキル効果上昇(大)与ダメージ量増加(大)+被ダメージ量増加(大)

   統率・狂情系スキルの効果上昇

   天国・光系属性のスキル効果低下(大)

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地獄の業火インフェルノ・ノヴァ

 地獄それは果ての地。それは終末。それは希望。業火という罰に焼き貫かれて、新たに生まれ変わる。始まりにして終わりの炎。絶望を焼き、希望へと変革させし炎が今放たれた。

効果:地獄の業火に触れると500のダメージを確定で与える。

   半径3m圏内にいる生命体に毎秒ごとに10のダメージを与える。

   ■■値が低いほどダメージ量が増加する(不明)。

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狂乱瘴気バース・オブ・ヘル

 狂乱を齎す地獄の瘴気。狂気を越える万物を蝕む呪いをこの世へと排出する害悪の空気。瘴気に侵されればあなたはあなたで居られなくなる。

効果:瘴気に触れたものに《状態異常:狂乱》と《状態異常:異形化》を付与する。

   30秒経過した瘴気はその効力を失う。

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 こんな感じでとても危険で中二感が溢れ出るスキルを習得してしまったのだ。

 《狂乱地獄ケーニヒ・デァ・へレ》の効果によって、装備もすべて燃えて消えてしまった。どうしようか。砂漠で人がいない(魔王を除く)とはいえ、私は露出狂ではない。


 フェリスのドロップアイテムは武器だったしな。服ではない。前に暴れた時のドロップアイテムも武器ばっかりで服系はなかった。

 フィリス戦のドロップアイテム、幸福に煌めく王の肉叉フェリスを取り出す。

 だいたい50cmくらいで、銀色が主に使われている。三又に分かれており、右は赤に染まり、左は青に染色されている。三又の先は鋭くギザギザに研がれているため、殺傷能力が高いと思われる。

 取っ手の部分にはフェリスと思われる蟲が彫られており、心にぐっと来るようなものを感じる。


*****

幸福に煌めく王の肉叉フェリス

 虚変熱王蟲フェリスの気持ちたましいが宿りし肉叉。彼の王は今もなお幸福を追い求める。民の為、友の為、家族の為に。

 リズ、お前にも幸福を届けるために力を貸す。掴むといい、その幸福みらいを。俺は死んでも、リズを見守っているぞ。

種類:右手

属性:虚変

等級:D(変動可)

補正値 MP+100 STR+50 AGI+30 DEX+10 LUK+77

耐久度 なし

効果:絶対不壊

   炎氷纏→MPを毎秒ごとに5消費して、幸福に煌めく王の肉叉フェリスに炎と氷を纏わせる。

   熱操作→MPを消費して熱を変化させる。1℃ごとに50消費する。

   ???(使用不可)

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 嗚呼、フェリスらしいな。

 使ってやるよ、フェリス。私の幸福よくぼうの為に。



「なんかいい雰囲気出していますが、今半裸ですからね。わかりますか?は・ん・ら」

「あっ。魔王、なんか服はないか?あったらくれ」

「身勝手ですね。らしいと言えばらしいし、雰囲気もあってますが。う~ん、これとかどうです?」



 と言って、魔王が出してきたのは白と黒でカラーリングされたフリルたっぷりのゴスロリドレスだった。

 イケメンな私にゴスロリドレス。女装みたい?女なのに!



「......似合うか!他はないのか?」

「ふむふむ、これはどうです?」



 次に取り出したのは黒を基調とした貴族服だった。赤っぽい金で彩られたエレガントな服。

 着ている私を想像してみると、......似合っているな。



「よし、これをくれ」

「はいはい。他にも靴やグローブを用意しました。......おっと、少し用事ができました。また会いましょう、リズ」

「ああ。じゃあな、魔王」



 魔王は巨大な白い翼を生やして空へと舞い上がり、消えていった。

 彼女が翼を生やしている時、一瞬見えた悪意、狂気に包まれた表情。彼女も私たち側の存在だということが分かった。一体彼女が何に対して狂っているのかは分からないが、私が気にすることではないだろう。だが、私を邪魔した時は、殺す。ただそれだけ。

 魔王 空亡 狂愛。何に対して彼女は狂えるほど愛しているのだろうか。

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