第15話 王の最期
靄の軍勢との戦いを終えた後、フェリスと共に魔王が戦っているところへ向かっていったが、ぜえぜえと絶え間なく息を吐き続ける魔王しかいなかった。
戦っていただろう場所は至る所に白い炎が立ち上り、黒い薄い靄が掛かっていた。そこから、戦闘の激しさが伺えた。
魔王がこちらに気付くと、息を整え、私たちの方へゆっくりと歩いてきた。
「貴方たちの方は片づけられましたか?」
「ああ。その感じだと殺せなかったか」
「はい。奴らはスキルが効かないので」
「はぁっ!?」
「驚きますよね」
侵略者って勝てるのか?
多分、ラスボスみたいなのだろうけど。
フェリス全然喋らないな。
「何体ぐらい殺せているんだ?」
「まだ二柱と一柱です。合計で十柱の内三柱、凄くありませんか?」
「何故分けている?」
「一柱は
あっ......(察し)。
いろいろな不穏なワードが出てきたが、私が行うことは何も変わらない。人を喰らうのみ。
そうだ。魔王に言わなければならないことがあるんだった。
「おい、魔王。途中でMPやSPの回復してくれただろう、ありがとう」
「ふふっ。ありがとうですか、何時ぶりでしょうか。それよりも
「それって。まあ、決着をつけるか、フェリス」
『
「邪魔するなよ、魔王」
「わかりました。我から手出しはしませんよ。存分に殺し合ってください」
魔王のその言葉を聞くと、誰が言うまでもなく全員が離れていく。
フェリスとの距離は25m程。
フェリスのHPは大体600。回復されてないな。魔王はそんなに【UIM】が嫌いか。
私はHPなどはマックス。私はSP以外は500代。いい勝負ができると思う。フェアではないが。
「行くぞ、フェリス!」
『
最期の戦いが幕を開けた。
*****
開始直後に私とフェリスは中央部に駆ける。
フェリスが炎と氷を纏いながら強靭な顎で噛み砕こうとする。
しかし、フェリスは体が巨大だ。初期動作で何を行おうとしているのか丸わかりだ。
ギリギリまで引き付け、回転しながら飛びあがり、手に持った双剣(始める前に変えた)で《飛翔双刃撃》を発動させ頭部を切り裂く。
炎と氷が散り、幻想的な描写が完成する。
その後、逃げるために頭部を蹴り後ろに跳ぶ。《状態異常:凍結Ⅱ》がつま先に付与されたが、動きづらいだけなので我慢する。
着地した瞬間に、身を低くし、次の攻撃に移る。
私は守りの一手を打つよりも攻めの一手をどんどん打つほうが性に合っている。
何故なら、私は狂獣だからだ。
左にコーナーを曲がるように走る。
双剣から大剣に変え、フェリスの横っ腹を切り裂く。
フェリスは頭部をやられた反動で動けない。今が猛攻を仕掛けるチャンスだ。
たまたまゲットできた鉤爪を両手に装備し、大剣でできた傷跡に差し込み、全力で走る。
外道?何も悪いことはない。外道、私にとっては誉め言葉だ。
血が肉が体液が体中に掛かるが気にしない。
フェリスは壮絶な痛みに身体を捻り、暴れるが必死に食らいつく。
尾の方まで走り抜けると、
「《残虐なる刃》ァ!!」
スキルを発動させ、肉の奥まで刃を埋め、血肉を抉り取る。
フェリスは今まで経験したことのない痛みに悶絶する。
私は攻撃を終えてバックステップで戦線離脱しようとするが、フェリスの尾に叩きつけられダメージを負ってしまう。
今は私のHP100ぐらいか。
フェリスは200程。もう少しで決まるか。
フェリスは痛みに慣れたのか、ゆっくりとこちらに顔を向け、話しかける。
『
「私もお前を乗り越えて私の欲望を満たさなければならない。この世界を謳歌するために。希望も絶望も全て私が喰らってやる。ありとあらゆるものを自分の力で奪い、私の快楽のために生きてやる。だから、さあ、私のために死ね!」
[リズ=カムニバの【
「四種の
[【
[称号【大罪を宿す者】の獲得に成功しました]
くはっ、システムからお膳立てはしたということか。
いいだろう、使ってやる。
「さあ、地獄を創れ!《
『《
頭から金色の角が王冠のように五本生える。黒と紅、紫に染まった三対の鳥の様な翼が現れる。
手先は鋭く尖り、炎が立つ。八重歯が伸び、口が裂け、金と黒の炎が湧き出る。
目の結膜が黒に染まり、動くたびに赤紫の光を目から放つ。
体から地獄の瘴気を発生させ、装備し変えた大斧に業火を纏わせる。
周囲の大地から絵の具で雑に塗った様な赤と黒、金に紫など禍々しい色の炎や瘴気を発している。
まさに王。悪魔の、否、地獄の王がここに誕生した。
一方でフェリスは謎の数字や言葉、数式など未来チックなオーラを尾に纏い、空中に飛び跳ねリズに向かって断罪の鉄槌を下す。
まさに、神の一撃。
これにはリズも手足が......
「《異変ノ凶波》ァア!!!」
スキルを発動させ、確実に殺そうという考えが伝わってくる。
幾千にも上る凶器がフェリスに向かって突撃しに行く。しかも、地獄の業火を纏いながら。
それでもフェリスは止まらない。
もうHPは50もないというのに。それぐらいまでに彼は幸せに執着している。
リズという
だが、リズも止まらない。
自分の欲望と狂気のためにどこまでも堕ち続けることを決心している。
フェリスという
翼をはためかせ、短剣を構えて、スキルを二つは発動させる。
「《魅了の瞳》」
「サア、フェリス。私ノ為ニ死ネ。《残虐なる刃》」
《魅了の瞳》の《状態異常:魅了I》が付与されたことによりにより、敵対行動が取れなくなる。
よって、スキルの強制解除がされた。
フェリスの巨体が空中から落ちていく。
リズはフェリスより高い位置に飛翔し、翼を閉じて高速で蟲の王に突撃する。
深紅の刃を煌めかせながら、猛禽類のように獲物に喰らいつかんとする。
『
「どういたしまして、フェリス」
残酷な刃はフェリスの頭から尾までを真っ二つにして止まった。
[ワールドアナウンスです。【人の皮を被りし
長い戦いがここに終幕した。
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