龍戦士・ドラグウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウンンン!!!
サマリノ
第1話 プロロォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオグ!!
「ねぇねぇ、お母さんこれ読んで!」
幼き私がそこにいた。まだ字も上手く書けない私は母に、絵本を読むようせがんでいる。
「えぇ、またぁ?それ、昨日も読んだでしょう?」
食器を片付け終わった母は呆れながら、私の方を振り返ってくる。
母が呆れても無理はないが子どもというのは、何度も同じものを楽しめるのだ。好きな物ならなおさら。
「いいからっ早く早く!暖炉の方に来てっ!読んで!」
裾を引っ張り居間の暖炉まで連れていく私。子どものころのお気に入りは暖炉の前にある椅子だった。
「もう、仕方ないわねぇ。じゃあ、これ読んだら良い子にして寝れるかな?」
「うん!」
「うん、なら読んであげるね」
「やったー!」
椅子に母が座り、私はその膝の上。
背を母に預け、私は母の語り部の世界にいざなわれる。
「昔、昔、悪い大魔法使いが異世界の扉を開けて、中にいた魔物を解き放ちました。
魔物は人間の心から生まれ、人間の怖がる心や怒る心を食べるために人間をたくさん襲いました。
中でも、すごく力を持っていて賢ったのが、ドラゴンです。ドラゴンは山のように大きく火を噴き、空を飛び、尻尾で街を薙ぎ払ってしまいます」
「怖いねぇ?」
「うん、すっごく怖いねぇ。ほら、よく見てごらん。
人々はドラゴンを倒そうと矢を放ちますが鱗ではじかれ、また魔法で縛り付けようとすれば爪で魔法を壊されてしまいます。
とうとう、打つ手のなくなった人々は絶望に陥りますが、そこに一人の冒険者が現れました。」
「お父さんと一緒!」
「そうだよ、お父さんも冒険者だからねぇ。ならお話に出てくる冒険者さんはどうしたかな?」
「冒険で集めた、たくさんの道具を使ってドラゴンをやっつけました!ブシュー!」
母が問いかけ、話しの腰を折ってくる私を再び物語の世界に誘導しようとしたが、幼い私はすっかり興奮してしまったらしく、母の膝の上から飛び降り、部屋中をぐるぐると駆け巡る。
「あっ、こら走らないの!」
「えいやっ、すくすくキノコ!それっ、食らえ人食い花のねばねば液!最後に…大砲でドカーン!」
母が鋭い声で叱りつけるが、私は構わず物語に出てくる言葉を次々に喋ってしまう。
「良い子にするって約束でしょう!」
眉をひそめた母が私を抱きあげた。
「だってだって、ワクワクしたんだもの!やっぱり寝られないよ!」
母の腕の中で手足を広げ、私は興奮を身体全体を使って表した。
「全く…この子は。昨日はちゃんと寝られたでしょう?」
「でも、明日はお父さんが帰ってくるんだよ?ワクワクして胸がドキドキして止まらないよ」
「そうね、久しぶりに帰ってくるものね。でも良い子にしていないとお父さんに怒られちゃうかもね~」
「そ、それはやだ!」
「なら、早く寝ないとねぇ」
母は私の背を優しく叩きながら、寝室へと続く階段を上っていく。
興奮した熱くなった身体は冷め睡魔に徐々に支配されていく。それでもその睡魔に抗い私は力なき声で言う。
「…まだ寝たくないな。寝ている間にお父さんどっかいったらどうしよう」
「そんな、すぐ行きはしないわよ…多分ね。ほらもう寝ないとお父さんが帰ってくるときまで眠くなるよ」
「ねぇ、…お母さん」
「もう、今度は何?」
「僕、冒険者になれるかなぁ?」
「…きっとなれるわよ。あの人の子だもの」
母はいつも通りの優しい声音でそう言った。
私の意識はそこで落ちた。
思えば父はとても忙しい人だった。記憶を手繰っても父よりも母の記憶が多い事に呆れてしまう。
それでもそんな父を私は好きだった。
だが、私はやはり父とは違い冒険者にはなれなかった
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