コイン砂丘のウサギ
一匹のウサギは、キツネから逃げ回っているうちに、奇妙な砂漠へ迷い込んだ。
その砂漠の砂は、色こそ金色だったが、他のどこの砂漠にもない特殊な形をしていた。石のように大きく硬いが、一粒一粒、歪なものはなくすべて同じ形で、きれいな円盤状だった。
むかし、ここに砂漠はなかった。豪邸をも埋めるほどのお金を持っていたお金持ちが、ここにコインの山を捨てたために、この金色に輝く奇妙な砂漠が誕生したのだ。
しかし、キツネに追われているウサギは、コイン砂丘の謎とお金の秘密などどうでもよく、今を生きることだけ考えていた。
やがてキツネが近づいて来るのに気がつき、ウサギは大急ぎでコインの山を掘り、その中に埋もれて身を隠す。
もちろん、キツネもウサギを逃すわけにはいかず、コインの山を嗅ぎ回ったり、大きな砂粒を掻き分けたりして探した。
あちらこちら模索されたウサギは砂粒を剥がされ、とうとう見つかってしまった。
急いで素早く逃げるウサギを、キツネは全力で追いかける。
キツネのほうも、コイン砂丘の謎、そしてお金の秘密に興味なかったようだ。
二匹ともお金を使えば、自分の身を守ったり、自分のお願いを聞いてもらったりできるのに。
おわり
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