返せ、魔法の青い実

 年中、不思議な青い実が多く実る豊かな森。しかしそこへ人間の一団が訪れ、森中の青い実を独占し持ち去ろうとする。森に住んでいた小人たちは、青い実が食べられなくなってしまう。困った小人たちは人間に攻撃し、小人と人間の間で激しい戦いが始まる。


 人間の「勝ちたい」という願いに青い実が呼応したのか、人間は小人に圧勝し、青い実をすべて奪うことに成功する。一方で、惨敗した小人たちは「人間に相応の罰が当たるように」と願うのだった。


 持ち帰った青い実を食べた人間たちは強い力を手に入れ、森の他にも山や海など世界のあらゆる場所を支配するようになった。青い実には不老不死の効果もあり、いつしか人間たちは世界の支配者となった。


 しかし人間には無限に湧き続ける欲望があった。やがて大きな山も荒れ果て、広い海も枯れ果て、森も不毛の砂漠と化してしまう。食料も底を尽きるが、人間たちは死ぬことなくずっと生き続けた。


 わずかに残った青い実を巡り、人間同士で争いが起こった。最後に勝ち取ったのは一人の青年。彼が青い実を手に取った時、精霊が彼の心に語りかける。


「この最後の青い実で、最初の農園を作りなさい」


 精霊の言葉通りに、青年は地面に青い実を埋めた。しばらく経つと芽が出て、木になり、やがて青い実をつけた。落ちた青い実からは新しい芽が生え、青い実の木はどんどん増え、大きな青い実の森になった。時が経つにつれ、森はさらに広がり、年中豊かな土地に変化した。


 どこもかしこも青い実が実る森を青年が歩くと、再び精霊が語りかけてくる。


「あなたは森を元通りにし、人間の罪から解放された。ようやくあなたたちは安らかに眠ることができる」


 精霊の言葉を聞いてからというもの、青年は美しい森の中で永遠の眠りについた。他の人間も生の呪いから解放され、青い景色に包まれながら安らかに眠るようになった。



おわり

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