深淵の底





 私達はスライム人間を倒し、少年を回収した後、一階の探索に入っていた。


 暗闇に包まれた病院の一階を歩く、なんて。

 ホラー映画にでも出て来そうな状況だが、そんな感想も今の状況を考えればあながち間違いでも無いのが世の中の恐ろしいところだ。

 テロリストに占拠された暗闇の病院を徘徊なんて、誰が好き好んでやるものかと心底思う。


 行く先々には、これでもかとばかりに完全に意識を飛ばした『泥鷹』の構成員達が床に転がっていた。

 強くはないが、それでも意識を失っている構成員達からは異能持ちの出力を感じる。

 普通の一般人には完全武装しているこんな奴ら、制圧することなんて出来る筈が無いから、やった人間はおのずと限られてくる筈だ。

 恐らくだが、私が背負っているこの金髪の子供がやったのだろうか、なんて思う。

 まだ二桁にも達していなそうな子供なのにこんな力を持っているなんて……、と慄きながらも寝入る子供を投げ捨てる訳にもいかず、私はそのまま先を行く神楽坂さん達の後をせっせと追いかけた。


 床に転がるそれらを、ほぼ無限に収納できる“紫龍”が煙に回収していくことで、目を醒ました彼らが反撃する可能性を完全に潰しつつ、ICPOの人達を探しに歩き回るが、これが中々見つからない。

 そしてこれは悪いことでは無いのだが、恐れていた滅茶苦茶強い異能持ちにも何故だか遭遇することも無いまま、ただ時間だけが過ぎていくこととなっていた。


 病院の一階全てを捜索し終えたのではと思う程歩き回り、すっかり体力を消耗した私は、足を震わせながら必死に神楽坂さん達の後を追う。



「……居ないな、誰も」

「暗闇が消えてないってことは倒したってことは無いだろうが……ま、まさか、国際警察の奴ら負けたのか!? お、おい、どうするよ……!」

「ビビるの早過ぎるだろ……異能持ちは異能持ちの出力とやらが分かるんだろ? 他の異能持ちの居場所を探ってみてくれ」

「この暗闇のせいか全然異能の出力が感じ取れないんだよ! 色んなものが阻害されてる気分だ! ……ここから何とか脱出するためにも、一旦降参するって言うのはどうだ?」

「却下だ。こんな行動を起こしてる時点で交渉の余地なんてないだろ」

「いやいやっ、俺の煙にどんだけ構成員が収納されてると思ってる! こいつらを明け渡す代わりにって言えばいいだろ! それに信用を勝ち取ったあと裏切れば万々歳だ!」


「な、なんでも良いですけど……はぁはぁ……取り敢えず外に出て見ましょうっ。ダラダラ話してるのが一番無駄ですから……」



 どうやら“紫龍”の異能探知は練度が低すぎて多少の阻害要因があっただけで機能しなくなるらしい。

 それどころか、さっきやたらと大きな異能の出力があったのにそれすらも感じ取れなかったとか……。

『UNN』によって異能を開花させられた自然発生型じゃない異能持ちであることと、異能を持つようになってからそれほど時間が経っていないのが影響しているのだろうか。

 私は今も異能持ちを捉えられているが、私が異能持ちと知られたくないから言い出せないジレンマ。

 本当にうまくいかないものだ。


 だがまあ、それとなく誘導することは無理ではない。

 私の何気ない提案で、外に感じる三つの強力な異能の出力のある方向へと向かっていくことに何とか成功する。



(本当は大きな異能の気配がする場所になんて行きたくないけど、どうせ行かないと解決しないだろうしなぁ……)



 そんな諦観を抱きながら、私は背中にいる名前も分からない少年を背負い直す。

 私にとっては何気ない動作だったのだが、それを面白く思わない奴がここにいた。



(ズルい……ズルい……)



 ……この緊迫した異能持ち同士の衝突とは別になのだが、私には解決したいどうでも良い感じの問題がいくつかあった。

 それは、何と言うか、中々言葉にしにくい問題だし、それほど深刻そうな問題ではないのだが……形の無い大きな奴が私の頭の中で駄々をこね始めているのだ。



(マキナも頭を撫でられたイ抱っこされたイ、おんぶされたイ。マキナも御母様の体温を感じたイ。ズルい、その子供だけズルイ)


「……うるさ……」



 ICPOの子供を背負って歩き始めてからと言うもの、マキナはずっとこの調子だ。

 駄々っ子のように怨嗟の思考を届け続けるマキナに、思わず私が文句を口にするとさらにその駄々が強くなる。

 完全に五歳くらいの子供を相手にしてる気分になって来た。



(マキナの方が役に立てル。マキナの方が優秀だモン。マキナの方が…………恨めしイ……無償の愛を享受するその子供が恨めしイ……これが、嫉妬と言う感情っ……!)


「……」



 すっかり感情を理解してきたインターネットの意思(自我形成から8年程度)。


 と言うか、私としてはテロ組織の襲撃なんて言うシリアスな場面でギャグみたいな言動は控えて欲しいのだが、現実に肉体の無いマキナはそんなこと意に介さないらしい。

 と言うか、結構マキナの事を可愛がってるつもりなのに、こんな赤の他人へのおんぶに嫉妬するとかよく分からない。


 これが一つ目の悩み。

 そしてもう一つが私の背中に背負われている少年の事だ。



(……掴む力強くない? 普通の子供の力じゃないような……と言うか、痛い、いたたたたっ)



 駄々をこねるマキナの件もあり、早急にこの少年を背中から降ろしたいと思っていたのだが、ぎゅっ、と私の首に回されている手にはかなりの力を込められている。

 まるで絶対に降ろされたくないとでも言うような力の強さに、顔が思わず引きつった。


 嬉しさだとか、安心感だとか、そういう好意的な感情を抱いているから何か悪意があって私に引っ付いている訳ではないようだが、いくら少年が軽いとはいえ非力な私には長時間誰かを背負い続けるなんて出来るものでは無い。

 早めにどうにかしないと私が戦闘とは関係のないところで潰れるのは時間の問題だ。


 そもそも私はやけに子供と縁があるが、別に子供が好きな訳ではないのだ


 辛い、とても辛い。

 最初に変な意地を張らなければこんなことにならなかっただろうし、周りを警戒し、先行していく神楽坂さん達は私が苦しい思いをしているのにちっとも気が付いてくれやしない。

 まったく周囲への気配りが出来ていない。

 これだから神楽坂さんも“紫龍”も異性からモテないのだ、多分。



「うぅ……神楽坂さん達早いよぅ…………あれ?」



 そんな状況で悪戦苦闘していた時、空間を揺らすような巨大な異能の出力を探知した。

 と言うよりも、探知するまでも無くその出力の余波がここまで届いたと言うべきだろうか。

 その証拠に、探知がドヘタな“紫龍”すら体を跳ねさせ、私の背中で寝入っていた少年もその異能の出力を感じて飛び起きる。


 それぐらい、色んな感覚を阻害する暗闇の中であっても、この異能の出力は異常であった。



「はっ!? はっ!? な、な、な、なんだ今の馬鹿げた異能は……あ!? も、もう一個バカデカい異能がっ!? 何だこりゃ!? 人間じゃねえっ!! ……いや、駄目だこりゃ……もう諦めた……俺、もう牢屋に帰る……」

「いきなり何言ってるんだお前……? 変なこと言ってないでさっさと行くぞ」

「お前これが怖くないなんてっ……あーあー、これだから異能を持たない雑魚は。化け物みたいな異能の出力を感じる必要が無くて逆に羨ましいぜ」

「は? ビビってるだけの癖に何を偉そうに」

「状況も把握できない奴にとやかく言う資格なんて無いんだよ! この鈍感アホ脳筋野郎!」



 なんて、そんな情けない言い争いを始めた大人達を尻目に、私の背中で目覚めて混乱するように辺りを見渡している少年に話し掛ける。



「起きたみたいだけど大丈夫? 身体に不調なんかはないかな?」

「あ、あっ、え、っと、あの、お姉さん、今どうなってるか分かる?」

「君が眠っちゃったから私が背負って、今は病院の1階を回ってみてるんだけど誰も居なくてね。皆はどこかなって探してるんだけど……君には分かる?」

「分かる、けど……うん、お姉さんありがとう。僕はもう大丈夫だから、お姉さん達は危ないからどこかで隠れてて。今、危ない人たちが戦ってるみたいだから」



 そんなことを言って私の背中から降りた少年がすぐに駆けだしていこうとするが、体調不良がそんなにすぐ良くなる訳も無く、予想通りバランスを崩して転びそうになったのを支える羽目になる。



「ほら、危ないから」

「あ……あ、ありがとう、ございます……」



 掴まれた手に動揺する少年の体を軽く観察する。

 “影”の毒の浸食は見る限りほとんど無いくらい落ち着いている。

 しかし、麻痺した体が完全に復調しておらず、その影響で思うように体を動かせなかったのだろう。

 必要以上に心配することは無いが無理はさせられない、そのくらいの認識でいる。


 激しい衝突音が僅かに聞こえ始めた。

 異能の出力的に飛鳥さんともう一人別の誰かがいて、敵対している巨大な出力が『泥鷹』のボスとやらなのだろう。


 戦況は均衡に近いが飛鳥さんが限界を迎えるのが先。

 そして、倒すべき『泥鷹』のボスは私達の存在に気が付いていない。

 状況は思ったほど悪くはない。



「ほ、方向は分かったけどよ。多分走って行ったら一分もしない内に着く距離だけどよ。……マジで行くのか? 絶対ヤバいぞ? な、なあクソガキ、なんか良い策でもないか? むやみやたらの突撃なんて絶対駄目だよな? な?」

「お前……この状況で作戦なんて、取り敢えず状況が見える距離まで行ってみる以外ないだろうが……」



 そうやって“紫龍”が異能の出力元に行きたくないがために私へ話を振って来る。



「いえ、例えばですけど、超能力みたいなのを持っている人同士何となく分かるのでしたら、警戒されてるだろう超能力持ちではなく、私が一人で見える距離まで行って合図を送る、なんて言うのも効果的かなって思ったりします」



 考えを聞いてきた“紫龍”にこれ幸いと考えていたことを話した。

 最高のタイミングを狙って攻撃するのはどんな戦いでも共通する必勝法だ。

 基本的な安全かつ効果的な動きとしては、これで間違いはない筈。


 それなりに自信を持っていた解答だったのだが、私に質問を投げて来た“紫龍”は私の返答を聞いて気持ち悪いものを見るような顔で私を見てくる。

 ……こんな顔される謂れは微塵も無い筈なのだが。



「……聞いたのは俺だけどさ……お前キモイな」

「突然の罵倒っ!? くっ……一体何なんですか、時間が無いので聞き流しますけど、次は許しませんからね! それで、一番効果的な行動をするためにも貴方方の超能力の詳細を簡単に確認させてください。まず貴方の――――」





 ――――そうやって話をしていたのがついさっき。


 そして、話していた通り、私は飛鳥さん達が目に見える距離で一人隠れ、急造の作戦が成功したのを見届けた。



(入った)



 あの少年、レムリア君の異能による転移と攻撃が『泥鷹』のボスの防御を貫通するのを視認する。


 レムリア君の拳から放たれた、戦車すらへし折る物理衝撃がまともに脇腹部分に突き刺さったのだ。

 骨が折れるような音が暗闇の中鳴り響き、血反吐を撒き散らしながら地面を転がっていく『泥鷹』のボス。

 どれくらいの損傷があったのかははっきりとは見えないが、少なくとも昏倒させたのは確かだ。


 作戦の成功を私の合図で知った“紫龍”と神楽坂さんが飛び出してくる。

 “紫龍”はレムリア君が『泥鷹』のボスを殴り飛ばしたのを見て歓喜し、神楽坂さんは周囲に倒れる血に濡れる一般人や警察関係者を見て顔を歪めた。



「やったっ! 勝ったんだな!? うおお!! クソガキ共っ!! 俺の煙による援護があったとは言えやるじゃねえか!!! 俺の給料が入ったらうまい居酒屋にでも連れてってやる!!! よくやった!!!」

「……お前、そんな自由に出歩ける訳ないだろ……それに子供を居酒屋に連れてくんじゃねえ」

「良いんだよこういうのは雰囲気だ!! あ、お前は来ても良いが奢らねえからな! お前は大して活躍もしてないからな!!」

「うるせえ、そんな事よりも怪我人を救助するぞ。一分一秒遅かったら死ぬ人間が出てくる可能性もある」

「うぐっ……わ、わかった」



 大して警戒もしないで喜んでいる“紫龍”に、私は叫ぶ。

 周囲を包むこの暗闇が敵の異能のよるものなら、それが解除されていないのが何を意味しているのか、少し考えれば分かると言うのに。



「油断しないで! 最後まで無力化をっ、早く奴を煙に収納するんですよ!」



 私の大声に驚いた“紫龍”が、「何をそんなに焦ってんだ」と言いながら吹っ飛ばされた『泥鷹』のボスを見遣り、そして絶句した。


 周囲の暗闇が『泥鷹』のボスを中心に渦を巻くように集まっている。

 “影”が男の体に張り付くように集まり、腹部に出来た大きな傷を覆い隠していく。

 そんなもので傷が治る筈ないのに、とは思うものの、そのおぞましい光景には追い立てられるような危機感を禁じ得ない。


 意識を奪えたのは一瞬だけ。

 およそ人間離れしたタフネスによって、恐るべき速さで意識を覚醒させたこの男は行動不能となった体を異能によって無理やり動かすために活動を開始している。



(レムリア君や飛鳥さんは――――駄目だ。レムリア君は異能を使った影響でまた不調があるし、飛鳥さんは想像以上に満身創痍。これ以上の無理は危ない。ここは)


「う、おお、しゅ、収納をっ……!」

「駄目です!!」



 おぞましい光景に“紫龍”は慌てて煙を使って『泥鷹』のボスを無力化しようと動くが、僅かにでも意識を取り戻した奴に対してそれはあまりに危険だ。

 私が声を張り上げるが、遅かった。


 倒れていた男がその場から掻き消える。

 そして、瞬きする間もなく、異能の出力に反応して“紫龍”の目前に現れたその男。

 人とは掛け離れた歪な姿、羽毛のように体中に纏った“影”と顔を覆う鳥の顔の様な兜。

 まさしく『泥鷹』と言うべき姿をしたソイツは、木の洞のような歪な目で“紫龍”を見下ろした。



「ヒッ……!!」

「馬鹿野郎固まんな!!」



 地面から生えた影の針での串刺し。

 薄皮一枚の差で、恐怖に顔を引き攣らせた“紫龍”を掴み、神楽坂さんが回避する。

 そして、回避した先への追撃が神楽坂さん達を取り巻くように開始された。


 “紫龍”が最も厄介だと言うのに即座に気付き、何としても始末すると言う動き。


 襲い来る異形の姿と圧倒的な異能の出力を前にした恐怖で、“紫龍”がまともな判断を出来ていない。



「自分と神楽坂さんを煙にして逃げるんですよ!」

「っっ――――!!」



 私の声に反応して“紫龍”は寸でのところで神楽坂さんともども煙となり、攻撃を回避した。

 ほんの数瞬の差で、神楽坂さん達がいた場所が大きく陥没する。

 少しでも反応が遅れていたら無事ではすまなかった筈だ。



(整理しろ私。読心は当然として、思考誘導、認識阻害、ここら辺も誤認と併用すれば派手さは無いし異能の出力は感知されない。でも、派手な感情波や精神破砕は駄目だし、マキナなんてもっての外。周囲に隠れる場所はいくつかあるけど、転移を頻発するアレ相手に鬼ごっこは圧倒的に不利。視界が奪われた暗闇の中、大きく逃げ回ると倒れる一般人に被害が及ぶ可能性がある。私はこの条件下でこれから来る脅威に対して――――)



 その異形、『泥鷹』は、ぐるりとその不気味な鳥の顔を私に向けた。

 何もない空洞の様な空っぽの鳥の目が私を見る。


 “紫龍”を取り逃がした今、大声で指示を出していた私を標的にするのは百も承知だ。



(――――対処する必要がある)



 一つ残らず見切ってやると、目を大きく見開く。


 “読心”を全力で使った先読み。

 回避の隙を作るために精神誘導と誤認を併用。

 その上で自分を軸とした認識阻害を発動させる。



「逃げろそこの少女!」



 見知らぬ男性の声が響く。

 誰かが『泥鷹』の注意を引こうと狙撃するが、“影”の羽毛に遮られ行動の阻害にすらなりはしない。


 そして『泥鷹』の姿が再び闇に掻き消える。

 私目掛けて、空間を跳んでくる。



(正面。右下、左、後ろ飛びの後に右へのフェイント)



 目前に現れた『泥鷹』による私へ目掛けた攻撃を、先読みし回避する。

『泥鷹』の、心の芯まで染みついた異能持ちでない者に対しての油断でその攻撃は単調。

 先読みさえできれば私でも回避は難しくない。


 だがそんな油断なんてものは、長続きはしない。

 ずっとこのままでいるなんて無理な話だ。

 だから、私は少ない手札の中、均衡が崩れる前に攻めに転じる必要がある。


 自動防御があることを信じて、私は熊用スプレーを『泥鷹』の顔目掛けて投げ付ける。

 予想していた通り、『泥鷹』の羽毛からの自動反撃により、砕け散った熊用スプレーの内容物が撒き散らされ、『泥鷹』の顔に降り注いだ。

 鳥の顔の様な兜がある上からそんなものを掛けてもどれだけ効果があるかなんて分からない。でもこれでいいのだ。


 私が作る必要があったのは、距離と時間と油断だけだった。


 つまり、必要なそれらを満たすことには、既に成功していたのだ。



(完璧なタイミング)



 視界が切り替わる。

 私の目前にいた『泥鷹』が遠くに。

 そして、その『泥鷹』の目前にはレムリア君が拳を引き絞った体勢で存在していた。


 私とレムリア君の位置がすっかりそのまま入れ替わった。

 そんな事、事前に彼の異能を理解していないと理解できないだろう。


 二度目となる、レムリア君の地を揺らす物理衝撃が『泥鷹』に突き刺さる。

 何が起きたのか分からないまま、体に纏った羽毛のような“影”を撒き散らしながら『泥鷹』は転げ回っていく。

 あれだけ荒事に慣れている筈の奴が、逃げる事も反撃も許されなかった。


『泥鷹』が反応出来ないのも当然なのだ。

『物理衝撃』に関する異能を持っていると思っていた少年が、これほど神出鬼没に現れるなんてありえないと思うだろう。

 普通はそうだ、これまで見て来た常識から考えてその考えは何も間違っていない。


 例えば、レムリア君が二つの異能を持っているなんて事が無い限りは、だが。



「――――お姉さんっ! 大丈夫!? 怪我とかは無いよね!?」



 レムリア君の異能の出力は歪だ。

 彼からは、まったく違う二つの異能の出力を同時に感じさせる。

 だがこれは、勘違いや感覚が間違っているのではなく、本当にレムリア君は二つの異能の出力を持っていることによるものだ。


 一つは、『物理衝撃の吸収、貯蔵及びその放出』

 一つは、『指定した対象と対象の交換』


 最初に、奴に攻撃を叩き込んだ時の小石とレムリア君の位置交換も二つ目の異能によるものであり、私の意識誘導と想定になかった転移系統の異能により完全な奇襲を成功させた訳だ。


 勿論、ただでさえ希少な異能を、一人が二つ所持するなんてどんな天文学的な確率だと思う。

 やっぱり世界は広いし、彼が秩序側の人間であることを考えれば……まあ、私的には他の非人道的な思想な人が所持するよりは幾分かマシだろうと許容できる。



「こっちは大丈夫だよ。ありがとう」

「危ないからロランのところに……ううん、暗闇の中だと安全なとこなんて無いよね。僕の目が届くところにいてくれれば何とかするから!」



 最初に会った時のような弱り切った様子は見せない。

 身体を蝕んでいた大部分の“影”は処理したが、それでも体調は万全ではない筈なのに、周りを心配させまいと無理に元気な様子をアピールしているようなのだ。

 こんな体調不良の子供に任せてこのまま何もしないのは……なんて思ったのだが、私と『泥鷹』に割って入るように飛び込んできた見覚えのない男性と飛鳥さんに邪魔だと言うように手で制されて、反論も出来なくなる。


 私の隣に、神楽坂さんと“紫龍”が姿を現した。



「これは……そうか。お前の異能か」

「あ、あ、危なかった……死んだと思った。す、すまねえ、クソガキ、助かった……」



 状況が理解できず周りを見渡した神楽坂さんと蒼白な顔の“紫龍”は、変貌した『泥鷹』の姿を見遣る。

 レムリア君に殴り飛ばされた『泥鷹』は、体に纏った羽毛で衝撃を幾分か吸収されたようで、先ほどのように意識を失うことも無く、じっとこちらを観察していた。

 闇の中に潜むその異形の姿はおぞましい。


 あんなものに遭遇して襲われでもすれば、恐怖に足が竦むくらい普通だ。



「……アレを見て怖がらない人間なんてそういないですよ。むしろ、神楽坂さんの方が異常だと思います。いや本当に」

「だ、だよな!?」



 私の言葉に顔を明るくした“紫龍”とは反対に私の顔は渋くなる。

 何だかやけに気が合うが、コイツと気が合っても全然嬉しくない。



「一般の方は下がっていてください。大丈夫です。すぐに私達がアレを何とかしますから」



 こちらを一瞥もせず、飛鳥さんがそう言った。

 私が怪しまれない為なのだろう、疑われるような言動を一つもしない飛鳥さんに私は少しだけ動揺する。



「飛禅、お前ふらついてるぞ」

「先輩は黙ってください。無理をしてでもアイツは何とかしないと駄目なんです」

「お前な……」



 険しい顔をした神楽坂さんの指摘に対しても飛鳥さんは全く取り合わない。

 異常に引き上げられている異能の出力は相当なものだが、あれはどう見たって無理をしている。

 このまま続ければ命に関わるのは目に見えていた。



「話をしてる暇は無いみたいだ。ほら、もう来る」

「っ……!」



 先ほど私に声を掛けた見知らぬ男性の言葉に従い『泥鷹』のいた場所を見れば、ソイツは大きく空に飛び上がっている。


『泥鷹』の周囲の影が物質化する。

 空を覆い尽くすような“影”の雨が、私達がいる場所どころか、病院外一帯全てを巻き込むように降り注いだ。


 近くに降り注ぐものを“紫龍”が、遠くのものを飛鳥さんが、その他で誰かに直撃しそうなものを見知らぬ男性が、それぞれ処理するために慌てて異能を行使する。

 そうして完全に攻撃を防がれているにもかかわらず、『泥鷹』はその黒い流星群の様な攻撃を辞めるどころか、さらに数を増やすようにして攻撃を続けて来る。


 その目的は一つだ。



(こいつ……私達の時間切れを狙うつもりだ)



 砕かれた残骸や地面に降り注いだ“影”が気化するように溶けていくのを見る。

 直接的な物理攻撃だけを狙ったものではない、私達の周りを包む空気中の“影”の割合を多くすることで、毒による行動不能を早める考え。


 “影”による毒。

 生命活動の阻害。


 既に長時間この暗闇の中に閉じ込められている私達にそれほど時間的な余裕はない。

 この暗闇は最初の状態でさえ数時間あれば成人を昏倒させるほどの毒性を持っていたのだ。

 それが、異能の所有者が昏倒させる毒性に主眼を置いて攻撃を用いれば、その時間はさらに短縮される。


 そして、一般人を守ろうとする人が相手なら、一般人を狙うだけで充分その時間を稼ぐのは容易いのだ。



「ぜっ……ぜっ……な、なんだ、やけに息が苦しい。……お、おい、これってまさか」



 最初に異変に気が付いたのは“紫龍”だった。

 苦しい呼吸と痙攣する自分の体に目をやり、レムリア君に会った時の事を思い出したのか顔を青くした。


 原因不明の衰弱。

 それが向かい合っている敵の異能によるものの可能性に思い当たった“紫龍”が、体に取り込んでしまった毒性を吐き出そうと何度も咳き込むが、体調は戻らない。

 まだ動けない程ではないが、それも時間の問題だと理解した“紫龍”が助けを求めるように私を見てくる。


 それでも未だにコイツは私が異能持ちの可能性なんて考慮して無い。

 異能持ちは出力を感じ取れるもの、と言う考えが固定されているからだ。



「そうだロラン! この“影”の中にいると、体の調子が悪くなるんだ!」

「……まったく、時間も掛けられないなんてやってられないね。レムリア、異能の行使は行けそうかな?」

「大丈夫!」

「レムリアは無理するからなぁ、レムリアの大丈夫ほど信用できないものはないんだけど」

「……悪いけど、すぐにでも倒れそうだから。何かを決めるなら、早く……」



 飛鳥さんの言葉にこれ以上時間は掛けられないと判断したのか、ロランと呼ばれた男性が銃を地面に叩き付けるようにして構える。

 そして、長い銃口だったライフル銃が高熱に溶かされた様にみるみる形を変形させていく。


 巨大で、重厚なものへと変貌する。

 それは銃と言うよりも、巨大な砲台に近い形へと変わり、空に浮かぶ『泥鷹』に向けて照準を定めた。

 到底個人で扱う様な大きさではない戦艦にでも付いていそうな砲台に、懐から取り出した特性の火薬を詰め込んだ。



「火力偏重なんて、碌に移動もできなくなるから好きじゃないけど。ま、威力は保証するさ」



 これから何をする気なのか、何の説明も無く作り出した砲台を男性は即座に起動させた。



「“blast”」



 一瞬、周囲の暗闇を塗りつぶすほどの光に包まれ、爆発と共に異能の出力が存分に込められた巨大な弾丸が『泥鷹』目掛けて飛来する。

 このロランと呼ばれた男性の異能は、鉄に関するもののようで、放たれる弾丸は人間の体に含まれる鉄分へ自動追尾する。

 だから、小回りを利かせる程度の回避では避けられないことを理解していた『泥鷹』が、銃弾を直前まで引き付けてお得意の転移をするのは当然だった。


 自動追尾とは言え、銃弾の速度を思えば急な方向変更は出来ない。

 ロランの本当の標的が『泥鷹』であれば、回避は間違いなく成功したのだろう。



「――――つ、貫いたのか!? 天井の“影”の壁を」

「!!??」



 周囲を包んでいた“影”の天井部分が破壊され、太陽の光が降り注ぐ。

 空気中に充満していた“影”が解け、体調不良の要因が一時的にだが消え去った。


 自分達に与えられていたデバフ要因の解除。

 彼らにとって、勝負を決めるのはここしかなかった。



「レムリア、頼んだ」



 転移し、回避していた『泥鷹』のすぐ隣にあった物質化した“影”とレムリア君が交換される。

 即座に危険を察知した『泥鷹』は全身に纏った羽毛を刃の様にして反撃しつつ、その場から逃げるため暗闇に溶けようとするが、鳥の兜のような頭をレムリア君は片手でがっしりと掴み取った。



「分かってるよロラン。ちゃんと仕留める」



 冷徹なレムリア君の双眸が『泥鷹』を捉えている。

 反撃の為の羽毛の刃など、どれ一つとしてレムリア君の肉を裂くことは無い。

 そもそも『泥鷹』の放つ物理攻撃など、レムリア君に対して有効なものは1つとして無かったのだ。


 レムリア君と戦わないと言う、『泥鷹』の最初の選択は間違いなんかではなかった。



「■■■――――!!!」



 ぐしゃりと、レムリア君に掴まれていた兜が手の平から発生した衝撃波に破壊される。

 現れた男の頭をそのまま掴むと、直後、もう片方の腕による一撃が腹部に突き刺さり、さらに足の裏に衝撃を発生させ加速させた蹴り上げが顎を砕いた。


 目を白黒とさせる『泥鷹』の頭を両手でしっかりと掴み取ったレムリア君は、そのまま重力に従って落下して『泥鷹』を地面へと叩き付ける。

 叩き付ける際に衝撃波を使用したのか、地面は大きくひび割れ、『泥鷹』の体が跳ね上がった。



『これで、最後』



 馬乗りになったレムリア君が両手を後ろへ引き絞る。

 これまでの『泥鷹』の耐久性能から生半可な攻撃では駄目だと判断したのだろう。

 文字通り、限界まで練り上げた異能の出力がレムリア君の両手に行き渡った。


 それは、間違いなく星を砕く一撃。



「まずっ……!! 全員、身構えろ!!」



 ロランのその言葉が、差し込む光が消え始めた暗闇の中に響き渡る。

 身構える暇は無かった。


 私は初めて、地形が変形する瞬間を目の当たりにした。


 大地が陥没し、巨大な亀裂が地面を走り、大地震が発生したかと錯覚するほどの揺れが発生する。


 膨大な物理衝撃はその余波だけで病院をすっぽりと覆っていた“影”の壁にさえ罅を入れる。


 その衝撃の中心に居るであろうレムリア君と『泥鷹』の姿を目視することは出来ない。


 私は、揺れる地面に耐え切れず地面を転げ回って、必死に近くにあったものにしがみ付いていたからだ。



「あばばばばっ!? 何なんですっ!? 何なんですか!? 死ぬっ、死んじゃうよぅ!」

「痛いっ!? ば、馬鹿! しがみ付かないで痛いってばっ! ちょ、混乱するのも分かるけど、アンタが今しがみ付いてるの私っ、私だからねっ!? わ、分かったわ! 少し浮かせるからっ、だからいったん離れてっ……!」

「恐いっ……! こんなのが異能なの!? 異能持ち怖い! こんなアホみたいな天変地異をポンポン起こされてたら恐くて夜も眠れないってばぁ!」

「あ、アンタ……意外と余裕あるわね……」



 ようやく揺れが収まって、しがみ付いていたものを見ると息の絶え絶えの飛鳥さんだった。

 想定していなかった状況に驚くが、まあ、飛鳥さんに入り込んでいた毒性も何とかしたいと思っていたので、これ幸いとレムリア君にしたような応急処置をしておいた。


 私が落ち着いたのを見て、溜息を吐いた飛鳥さんが優しく私を立ち上がらせる。



「アンタはまったく…………ほら、大丈夫ですか? 怪我はありませんか? 地面に亀裂が入っていて危ないので私の手を取ってください」

「あ、そういう……」



 取り敢えず飛鳥さんは他人のフリを継続するつもりらしい。

 私の為を想ってくれているのは分かるが、これはこれで寂しいものだ。



「……そ、そんな寂しそうな顔しなくても……ちょ、ちょっとどうなったのか見て来るので待っていてください。危ないので動かないでくださいね」

「はい、分かりました」



 離れていく飛鳥さんがある程度体調を取り戻しているのに安心する。

 異能の使い過ぎも心配したが、これなら後遺症や命に関わることも無さそうだ。


 周囲を見れば神楽坂さんや“紫龍”、その他一般人もけが人は無さそうで全員が無事である。

 怪我人は多いが、幸いここは“医神”と呼ばれる医者がいるらしいし、きっと何とかしてくれる筈だと考えれば、テロリストの襲撃に対してこれ以上無いくらいの最善で収まったのだろう。

 飛鳥さん達警察官やICPOの人達、認めたくはないが“紫龍”も含めて、多くの者達の努力がこれを掴み取ったのだ。


 僅かに光が差し込んでいるだけになった“影”の天井を確認して、私は溜息を吐いた。



「……まったく、しつこい奴」



 そうやって愚痴を呟いた私は、そっとその場を後にした。





 ‐1‐





 一人の男が全身に傷を負いながら逃げていた。

 特に重傷の腹部を抑え、暗闇の中を這う這うの体で進んでいく。

 もう、その男に戦いを続ける気力は残っていなかった。



『はぁはぁ……! 糞がっ……この俺様が何故っ……! どいつもこいつも、束になって群れやがってっ……! 最強は俺様なのにっ、俺様に勝てる奴はいないのにっ! ゴミカス共が、浅知恵を働かせやがって!』



 その男、グウェンは血塗れの体を引き摺って倒れ込むように物陰に隠れる。

 吐き出す悪態に肯定する部下はもういない。

 グウェンの異能を恐れ、従順になる者はこの場にいない。

 悪逆の限りを尽くした、全てを失った者の成れの果てがこれだった。



『ロランの裏切り者め……! 策を弄すことしか出来ない『UNN』の腰抜けどもめっ……! 下らない秩序を守り続ける権力者の犬どもめ……! 俺様が、この世界の王だと何故分からん……! 最も強い者が支配する事が正しいのだと何故分からんっ! 糞がっ、ゴミカス共が……』



 入り込んだ光に邪魔をされ転移が出来ず、レムリアの最大の一撃を全力で防御したもののこのざまだ。

 爆撃さえ防ぐはずの自慢の防御も、レムリアのあの攻撃の前ではまるで足りなかった。


 何とか意識は保ったものの、既に死に体の満身創痍。

 もはやどう足掻いても正面切っては勝ち得ない。

 そんなことは分かっているから、全力の攻撃をして隙だらけになったレムリアに対して反撃することも無く、こうして転移で逃げ出したのだ。


 プライドも何もない、生にしがみつく様な逃走だが、それでもグウェンは歪んだ笑みを浮かべていた。



『だがっ……奴らは仕留めきれなかった! この俺様を、あれだけの数で畳掛けて仕留めきれなかったんだ! くっ、クハハッ、結局最後は生き残った方の勝ちだ! 奴らの体に蓄積した毒性はもう致死量に届く! この空間の“影”をさらに濃度を増して、後は転移で逃げ続ければ良い!』



 ゲラゲラと、品性も無く笑うグウェンは穴の空いた天井の“影”が再生し切るのを見届けてから、物質化した“影”を細分化して空気中に撒き散らす。


 より深く、より深淵に。

 異能の使用者であるグウェンですら周囲が全く見えない程の“影”が空気中を充満し、浸食していくのを見届ける。

 これだけの毒性を持たせれば、これまでの蓄積と合わせておよそ数分で致死量に届く。


 無力化された使えない部下もろともこの場にいる者全てを処分して、とっととこの国を去ろう。

 そう考え、周囲を警戒していたグウェンに声が届いた。



「正直、貴方がこれだけの暗闇を出してくれるのをずっと待ってました。視界はおろか、これだけ異能の出力の感知を阻害させてくれる“影”があれば、多少派手な事をしても誰にもバレないからです」

『――――は?』



 誰もいない。

 誰もいない筈なのだ。

 自分でさえ周囲が見えなくなる“影”を出す前に周囲の確認は入念に済ませた。

 そもそもレムリア達から逃げるために、誰も居ない場所を選んで転移したのだから、ロランに妙な粉を付けられたとはいえ、こんなすぐにここに辿り着けるはずがない。


 何よりも、“影”の異能の使用者は自分だ。

 だから、視界は見えなくなっても散らしている“影”の反応から周囲の状況はおおよそ把握できるのだから。


 誰も居ない筈のすぐ近くから声がするのは、あり得ない。



『て、転移を……――――?』



 ここに来て正体不明が現れたことに危機感を覚えたグウェンが即座に転移で逃げようとするが、どうもうまく発動しない。

 何度もやろうとするが、体が“影”に溶けて消えることが出来ない。



「転移ですか? それ、やり方間違えてません? ほら、よく思い出して。前はどう使っていたのかよく意識して思い出してください」

『ひっ……!?』



 さっきよりも声が近い。

 足音がそこら中から聞こえてくる。

 姿が見えないソレが、未だに“影”で探知できないソレが、人語を発する人間ではないナニカに思えて仕方がない。


 恐怖が、湧き上がる。



『く、来るなっ! 何なんだお前はっ、どこから現れた!? お前はICPOなのか!? それとも『UNN』の奴なのか!? ふざけるなっ! どいつもこいつも俺様をコケにしやがってっ!! こっちに来るな!!!』



 グウェンの悲鳴のようなそんな叫びで、一瞬足音が止んだ。



「アハ」



 返答は、笑い声。



「あははははは!!! 私がそんなものに見えるんですか――――本当に?」

『ヒッ……や、止めろっ、来るな、来るなァ!!! 姿を見せろ怪物っ!! 化け物めっ!!!』

「難儀なものです。自分で自分の視界を奪っておきながら、暗闇に潜む私を恐怖している。そんなに怖いなら、異能を解いて私の姿を見て見れば良いのに……そうは思いませんか?」



 確かにその通りだ、グウェンは心底そう思った。

 この暗闇に潜む怪物の姿が確認できないからこんなにも怖いのだ。

 未知に対する恐怖が自分の思考をこんなにも阻害しているのだと心底思った。


 早くこの暗闇を解かないといけない。

 早くこの病院を包み込む“影”の壁を解かないといけない。

 早く異能を解いてこの訳の分からない未知から逃げないと。


 そう考えるグウェンの思考には、その異常さに気が付く余地は残っていなかった。



「ばーか」



 異能を解除した。

 あれだけ強固で解けることの無かった“影”の檻が、他ならぬグウェン自身の手によって解除された。

 漆黒であった周囲がようやく光に包まれて、太陽の光が燦燦と地面に降り注ぐ。


 グウェンは安堵した。

 これで迫りくる未知の正体が知れるのだと安堵した。

 異能を解き、正面を見据え、未知であったそれ――――顔の無い巨人が、笑いながらグウェンの全身を掴んだのを見ることが出来た。


 そのまま巨人に握り潰されるまで、グウェンの心は安堵に支配されたままだった。






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