第二十四エロ 夢
――ここは?
キョロキョロと辺りを見渡した俺は暫くぼおーっとした頭で考え込んだ。
確か吸収スライムに攻撃をされて…それからそれから…
記憶がない――
もしかして俺、死んだ…?
よくよく考えればここっていわゆるお花畑ってやつなんじゃ?
よく見たら周りは綺麗な色とりどりの花が咲いてるし、蝶々も飛んでるし鳥もさえずってるし。
「勇者様!気が付きましたか?」
あれ?純純だ。確か宿屋でルブマやアンアンと一緒に待機してなかった?
ってことは俺死んだわけじゃないってこと?
「助態さん。いつまで寝てるんですか。」
ルブマまでいる。両腕を組んで何やら怒った態度を見せている。
寝てた?気が付いた?そうか!俺は死んだんじゃなくて気絶してたのか。
それにしても…
「ここは?」
「そんなことも忘れちゃったんですか?助態さん。」
ルブマはまだ怒っている。
「勇者様。箱の庭園ですよここは。」
純純が優しく教えてくれる。
「箱の庭園?」
俺が聞きなれない場所の名前を繰り返した。
「はい。険しい道中での休憩所みたいな場所です。」
「助態さん大丈夫ですか?」
にこりと答える純純の隣で、さっきまで怒っていた表情をしていたルブマが今度は困惑の色を見せる。
「大丈夫…ではないかな…ところで他のみんなは?」
サイドキョロキョロ辺りを見渡しながら俺が訊くと、予想外の返事が返ってきた。
「他のみんな…ですか?」
純純とルブマが顔を見合わせる。
まさか…他のみんなは吸収スライムにやられてしまったのか?
「どなたのことを言っているのでしょうか?」
はて?と純純が言い、ルブマもさぁ?と返事している。
2人共何を言っているんだ?
「冗談はよしてくれよ?くびちとかもふともとかぱいおとかいただろ?ずっと一緒に冒険してきた仲間じゃないか!ティーパンさんは?吸収スライムに攻撃されてからどうなった?」
やや早口になりつつ俺が言うが、2人の反応は変わらない。
もしかして、やられてしまったことがショックで記憶から消えてしまったのか?
何か聞いたことあるぞ。あまりにもショックな出来事があった場合には、脳が身を守るためにその時の記憶をなくすとかなんとか。
もしかしてそれか?
「くびちさんにもふともさんにぱいおさんにティーパンさんですか?」
純純が首をひねる。
「吸収スライムと戦ったのは私たち3人だけですけど…」
ルブマもおずおずと言う。
「本当に覚えてないのか?そもそも2人は吸収スライムと戦ってすらいないだろ?」
「え?助態さんこそ大丈夫ですか?吸収スライムに助態さんが攻撃されて私たち2人がここまで運んできたんですよ?」
ルブマが俺のおでこに手を当てる。
「やはり攻撃されたダメージがまだ残っているのでしょうか?」
純純も心配そうに近づいてくる。
ちょ、ちょ、ちょっと待って!どうなってるんだ?
「2人とも本当に…?」
「助態さんは吸収スライムに攻撃をされて、HPが残り1だけの状態です。」
…ん?HP?ゲームの世界のような言い方だな。
「私もルブマさんも回復魔法を覚えていないので、勇者様を回復させることが出来ないんです。」
あぁ。確かに俺たちのパーティーには傷を癒すメンバーがいなかったな。
それにしてもこれはどうも、何かおかしいぞ…
「でも他に回復させる方法があるんです。」
ルブマが言うと純純が、それは。と言って続きを引き取った。
ゆっくりと純純が近づき、俺の隣に座った。
ちょうど俺を純純とルブマが挟む形となった。
「ずっと一緒に居ることです。ずっと一緒に居て愛情があれば、1日にHPが1ずつ回復するんです。」
HPとか1とかやっぱり変だな。
「そのためには勇者様を守るタンク役が必要ですね。」
「私がタンク役に転職します!」
ルブマが手を挙げる。
「では、私が勇者様に愛情を捧げますね。」
そう言って純純が目を閉じて唇を近づけてくる…
ちょ、ちょ、ちょ…
何の冗談だ2人共…
「ちょっと待てぇー!」
大声と共に助態は深い眠りから覚めた。
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