第十エロ フォレストのおばちゃんの物語

「あぁぁぁぁぁーぁぁぁぁあー!」


巨大化した触手スライムによって飛ばされた助態たちは、ラーガの村よりも東側まで飛ばされた。


飛ばされたものの、奇跡的に全員助かった。


「たぶん、ぷーれいを犯したことで満足していたのね。私達が敵意をむき出しにしてたから、遠くへ放り投げたのかもしれないわ。」


とくびちが分析するが、おそらく合っていると助態も感じていた。


「全員同じ場所に投げたあたり、意外と優しいのかもな。」


「もしかしたら、ヤらせてくれたお礼だったのかもしれないっすよ。」


助態とぱいおは笑い合うが、隣でひんひん泣いているぷーれいに気づいて笑うのを止めた。


「もうお嫁にいけません…助態さん、私を貰ってください。」


そう言うと助態に抱き着き、わーんと泣きだした。


「何言ってんだいアンタ。毎回毎回犯されて、その度に嫁にいけないって思うのかい?」


助態からぷーれいを引きはがしながらもふともが言う。


「それよりもぷーれいさん。あなたわざと犯されてるんじゃないでしょうね?」


アンアンが厳しい目で見る。


「え?わ、わざとなわけないじゃないですか。」


ぷーれいはぶんぶん首を振る。


「じゃあモンスターに犯されるのは嫌なのね?」


まだ厳しい目をしたままアンアンが質問する。


「もちろんです。嫌に決まってます。できることなら助態さん以外とはシたくありません。」


ぎゅーっと助態に抱き着き、再びもふともに引きはがされる。


「いちいち抱き着くんじゃないよ!アンタもデレデレしない!」


ピシャリと助態にももふともは注意する。


「じゃあモンスターに犯されても感じてないのね?」


厳しい眼差しのままアンアンの質問は続く。


ここでぷーれいは少し黙った。


「…あの、最初は嫌でした。痛かったですし…今でも乱暴にしてくる種族もいるので、それは本当に嫌です…でもさっきの触手スライムとかは上手で、その…」


俯きながらぷーれいは頬を染める。


「あっきれた。アンタ、感じてたのかい。」


ため息まじりにもふともが言う。


「分かるかしら助態。これは大事なことよ?この娘は、心では嫌がっているけれど体では感じているってことなの。」


くびちが助態を振り返りながら言う。


「あぁ。そりゃあそうだろうけど、だからって助けないって選択肢はないだろう?」


「アンタもお人好しだねぇ。いいかい?モンスターはぷーれいを犯した後は襲わないんだよ。で、ぷーれいも感じてる。アタイらが助けるメリットはなんだい?」


「あの…」


もふともが助態に詰め寄ると、今度は純純が発現した。


「ぷーれいさんが嫌がっていて、助けて欲しがっているなら、それを見かけたら助けるべきなのでは?」


「純純はいい子だねぇー。」


もふともは純純の頭を撫でながら、アンタがそう言うならアタイは助けるよ。と手のひら返しをした。


「ウチは別にどっちでもいいっすね。もふともさんが言うメリットがないのも事実っすし。くびちさんとアンアンさんが言いたいことって、ぷーれいさんの心の中に、少しでもモンスターに犯される期待がないのかってことじゃないっすか?あるなら、ウチらが危険を冒してまで助ける意味はないんじゃないかってことだと思うっす。」


ぱいおが珍しく真面目に言う。


「確かに、今回みたいな危険な目に遭う可能性もあるもんな。ルブマはどう思う?」


「私ですか?私は…やっぱり困ってる人を助けるのは大事だと思います。」


「みんな真面目だねぇー。ボクはその場の気分かな。」


ぶららがそう言うと、自由人のアンタは黙ってな!ともふともにげんこつされた。


「ぷーれいは?気持ちいいは気持ちいいだろうけど、それを途中で止めても助けて貰いたい?それとも最後までされたい?」


助態の失礼な質問にぷーれいが泣きながら答えた。


「助けて欲しいに決まってるじゃないですかー。」


これにはさすがにくびちももふとももアンアンも助態を非難した。


「その言い方はないよなー。」


「助態からは言われたくないと思ったから私が聞いてたのに。」


「女の気持ちを助態さんは分かってないからねぇ。」


訳が分からないでいる助態を見て、純純がクスリと笑った。


「多分ですけど、助態さんの気持ちをみんなが確かめたかったんじゃないですかね?」


「気持ち?」


ますます助態が分からないでいると、ぱいおが同情の目で助態を見た。


「助態さん。さすがに引くっすよ。助態さんがぷーれいさんのことをどう思っているのかの確認と、助態さんが危険を顧みて人助けをするのかどうか確認したんすよ。あ、あとウチ的にはぷーれいさんの疑惑もっすけど。」


それは晴れましたけどねー。と言いながらぱいおはぷーれいの傍まで行った。


「正直、ぷーれいさんがわざと犯されてて、そのせいでウチらが危険な目に遭ってたら許せなかったっす。けど、そうじゃなかったみたいなんで、これからも助けるっすよ。」


そう言ってぱいおはぷーれいの頭を撫でた。


ますます困惑の色を見せる助態を他のメンバーが放置した。


「いいのよ。あなたが私の想像通りの人って分かったから。」


くびちはそう微笑んだ。


――女ってのは男には理解できない生き物だ!


助態はそう感じながらドシドシと足を踏み鳴らしながら森の奥へ突き進んで行った。



勢いで突き進んでしまった助態は早々に後悔した。


「迷ったんでしょ?」


隣でニヤニヤしながらもふともが言う。


「ま、迷ってないし。」


助態は強がるが、確実に迷っている。


そもそも触手スライムに投げられて落ちた場所がどこなのかも分からないのに、女性メンバーに半分からかわれ、半分試されて逃げるようにその場所から立ち去ったのだから。


迷わない方が無理という話だ。


「助態さん。」


もふともの逆隣のルブマが声をかける。


「ん?」


ぶっきらぼうな返事になってしまうのも仕方ない。


「私もくびちさんと同じで安心しましたよ。助態さんが困ってる人を助けてくれる優しい人で。」


「よかったな助態。」


相変わらずもふともはニヤニヤしているが、助態の怒りや恥ずかしさが薄らいだことも事実だった。


更に幸運なことに、前方に村らしきものが見えてきた。


「こんなところに村?」


くびちは首をひねるが、とりあえず村で情報を集めることにした。


村は木で作った簡単な柵を門代わりにしていた。


「ここはフォレスト。他の町とかとは交流を持たないから、地理的なものはよく分からんが、西の方に大きな湖があると聞いたことがあるよ。」


食堂のおばちゃんがそう話してくれた。


「ってことは西に向かえばラーガがあるんじゃないのかい?」


もふともの言う通りだ。話を聞けばぷーれいは助態たちの話を聞いてから、ラーガのような他の都市と交流を持たない町に、他の都市の話を広めることを目的としたらしい。


「私は世界中の人々を繋がらせて、孤立している村をなくしたいんです。」


と語っていた。


ひとまずこの村でも他の都市の話をすることにしたらしい。


ハクダクは武器の材料を取りにリスの穴に戻る途中で、ぶららはその護衛らしい。


「私たちが扱ってる素材に、硬木ってのがあるんだけどそれを取りに行こうとしたらぶららちゃんに会ったのよ。」


「そこでボクが護衛を名乗り出たんだ。」


えへん。とない胸を張るが、無理やり護衛になっただけだった上に、護衛になっていないのは明白だった。


とにかくやることは決まった。


この村で他の都市のことを話した後、ぷーれいをラーガの村まで送り届け、ハクダクとぶららをリスの穴まで届けたらいよいよカローンの村に潜入する。


「なんかいよいよって感じっすね。」


ウキウキしながらぱいおが言う。


「ゴールが近くなってるって感じだよな。」


同じように助態もウキウキしていた。


食堂のおばちゃんにお礼を言って立ち去ろうとした時、おばちゃんが呼び止めた。


「そこの君。」


そう言って助態を指さす。


「あ、いや。杞憂だとは思うんだけど、ちょいと私の話を聞いていきな。」


おばちゃんは助態にだけ話すつもりだったのだろう。


興味を持った全員が椅子に腰掛け、おばちゃんの話を待っている様子を見て驚いた。


「君はたくさんの女の子を引き連れている。それは悪いことじゃない。君のいわばステータスだ。君の性格や見た目、色んな人を惹きつける何かがあってそれに惹かれたのがこの子たちだ。」


この子たちと言いながらおばちゃんは、助態以外の女子メンバーを見回しながら、右手を手のひらを上に向けてながら左から右へ流した。


まるでメンバー紹介しているかのような振る舞いだ。


「君が忘れてはならないのは、君の周りに集まっている子たちを絶対に泣かせてはいけないってこと。」


君と言って再び助態を指さす。


「そしてこの子たちが君に求めていることがあるなら、なるべくそれに応えてあげなさい。それはいつかこの子たちにとって大切な思い出になるから。」


遠くを見るような目でおばちゃんが言う。


「おばさんにもそういう思い出があるんですか?」


純純だ。


「あるよ。聞きたいかい?」


助態以外の女子メンバーの目は輝いていた。


こういう話には興味がないと思っていたぱいおやぶららも聞きたそうな顔をしている。


そんな姿を見ると助態は、女子なんだなー。と実感する。


おばちゃんは全員にお茶を入れると自分のことを語り出した。


「私がまだ幼かった頃。その頃は学校って言う勉強を学ぶ場所があったんだ。そこで私はいじめられていたんだよ。」


そう前置きをしておばちゃんが語り出した。



小学生のいじめは大人になって考えると、大したことじゃないんだけど、子供からすると相当酷いんだ。


机や靴を隠されたり、みんなで無視されたりね。


そんなわけだから私には友達が1人も出来なかった。


そう。本当にたったの1人も。


先生もクラスのみんなが私を標的にしていれば授業がスムーズに進むってことで、いじめを見て見ぬふりをしていた。


私の両親は共働きで家は貧乏。親に迷惑なんてかけられない私は、誰にも相談できずにいたの。


私がいじめられた理由は単純。途中で転入してきたから。ただそれだけ。


子供がいじめる理由は本当に単純で、お金持ちだからとか目立ってるからとか、大人では理解できない理由が多い。


とにかく私は途中でクラスの仲間になったことが理由でいじめられた。


そんなある日、1人の男の子が転入してきた。


正直私はほっとした。


次にいじめのターゲットは彼に移るだろう。


そう思ったから。


でも違った。


彼はユーモアたっぷりでクラスのみんなの心を掴んだの。


結局いじめの対象は変わらず私。


でも私にとっていいことが1つ。


転入してきた彼は、誰にでも話しかけるいわゆるいい人だったの。


私がいじめられても、いじめに加担することはせず、もちろんいじめを止めようとはしてくれなかったけど、それは子供ながらの防衛本能よ。いじめを止めれば自分がいじめられる。誰でも知ってることだからね。


でもね、彼は私の唯一の友達になってくれたの。


家が同じ団地だったこともあって、一緒に帰るようになったし、一緒に遊ぶようにもなったの。


私が彼を好きになるのに時間はかからなかったわ。


子供ながらに私も彼もませてたし、色々エッチな遊びもたくさんした。


特に私の体を触らせたり見せたりとかはよくした。


子供だし男の子だし、特にそういうことに興味があったんだと思う。


私は彼が私の体にしか興味がなかったとしても、別によかった。


好きな人と一緒にいられるひと時が幸せで幸せでしょうがなかったから。


ある日、いつも一緒に帰っている放課後に彼は私にその日は1人で帰って欲しいと言ってきた。


「お前今日は1人で帰れよ。俺は用事がある。」


でも彼の家の共働きで用事がないことを私は知っていた。


私は彼が私と遊んだり体を触ったり見せたりする遊びに飽きたんだと思った。


それから、他の人と遊びたくなったのだと思った。


それか本当は嫌じゃなかったけど、口では毎回嫌だって言ってたから、嫌われたのかと思った。


「待ってよ!もう私と遊んでくれないの?もう嫌だって言わないから嫌いにならないで!」


「そうじゃない。そうじゃないけど、今日は頼むよ。」


いつもと違う珍しい言い方に私は、頷くしかなかった。


でも気になって私は彼の後を追った。


こういう時に追わない方がいいって知ったのはその後。


彼には思い人がいたの。


クラスのマドンナだった。


そりゃそうだよね。ただ一緒に遊んでいるだけのいじめられっ子の私とクラスの人気者の女の子。


どっちが好かれるかなんて分かりきってたのに。


一緒に遊んで、2人だけの秘密を持ってる特別な関係。


私が好きだから彼も私のことを好きだって思ってた。


それが勘違いって知ったのはこの時。


彼がマドンナと話している表情は、私に見せたことない表情だった。


あぁ――彼は私なんか眼中にないんだ。


そう実感した瞬間だった。


私は、彼に私の前でも同じ表情をして欲しいという気持ちが強まり、彼が求めることを何でもした。


エッチな遊びはどんどん過激になっていったけど、彼が私に見せる表情は私が求める表情ではなかった。


彼は暫く経つとマドンナと付き合うようになった。


私と遊ぶ時間は次第に減っていき、私と一緒に帰ることもしなくなった。


ある日、私は彼にどうしても一緒に遊びたいと言った。


突然の私の誘いに彼は困惑し、マドンナは苦笑いしてたのを今でも覚えてるわ。


クラスのいじめっ子達が私にたくさん酷いことをして、彼から私を引きはがした。


それでも私は引き下がらなかった。


この時私は初めていじめっ子に逆らったし、彼に泣いてお願いした。


「遊んであげたら?」


マドンナのその一言で、いじめっ子も私から手を離し、彼も分かった。と言ってくれたの。


その日はいつもと違う遊びをしたわ。


彼の目の前でいつもみたいに服を脱いで、彼も服を脱いで裸で抱き合うのは一緒。


その後私は彼にキスをしたの。彼は驚いたけど受け入れてくれた。


そのまま彼と私は結ばれたわ。


痛かったけどそれ以上に彼と繋がれたことが嬉しかったの。


次の日に私は両親の仕事の関係で引っ越してこの村に来たわ。


彼が今何をしているのか知らないし、あれから一度も話していない。


私は結婚して子供もいるけど、今でも私にとって最愛の人は彼なのよね。



『まさか、おばちゃんの話で一節丸々を使ってしまうとは!』


訳の分からないことを助態は考えていたが、女性陣の反応は全く違った。


反応は様々だが、みんな泣いたり涙ぐんだりしていた。


「おばさんは、幸せなんですね?」


泣きながら純純が言う。


「えぇ。幸せよ。」


にこりと微笑みながら堂々とおばちゃんが言う。


「最愛の人に二度と会えなくて振り向かれなくても幸せなんですか?」


ルブマも純純と同じくらい泣いている。


「そうさね。今が幸せじゃないというわけじゃないっていうのもあるんだけど、この想い出があるから今の私があるのよ。そういう意味では幸せね。あなた達にもきっと分かるわ。その子と一緒に行動をしていくならね。」


その子と言っておばちゃんは助態を指さす。


「つまり…」


くびちが目の端の涙を指で拭き取りながらくびちが言う。


「今自分の想いが叶わなくても、今の自分が納得したり満足すればそれが幸せの想い出になるってこと?」


「えぇそうよ。今のあなた達にとって大切な人と幸せな想い出を作れば、それは将来のあなた達の幸せにきっと繋がるわ。もちろん当時の私はそんなことを知らなかったけど、それでも彼と繋がれて幸せだったわ。嫌なことがあってもその想い出があるから耐えられたこともあったしね。」


「でもそれで全部に耐えられるわけじゃないだろう?」


もふともが言うと、それに対してはおばちゃんは頷いた。


「そうね。だけどあの時私が望むことが出来なければ、私はきっと今でも後悔したままだったと思うわ。」


「その後悔をしなかっただけでも幸せってことっすね?」


意外にもぱいおがおばちゃんの言うことを一番理解していた。


「まぁ。人によるのでしょうけど、少なくとも私は後悔しなかったこと、そして幼い頃でも自分の願いが叶ったことがとっても幸せだったわ。」


「つまり、ウチらも助態さんにして欲しい願いを叶えて貰えってことっすね。」


ぱいおがまとめると、おばちゃんも頷いた。


「その子が1人の女の子と行動を共にしているなら何も言うつもりは無かったんだけどね。1人の男の子と複数の女の子。形は違えど昔の私を思い出してちょいとお節介をやいてしまってね。」


おばちゃんはまたまたその子と言って助態を指さした。


言われた助態がメンバーを見渡す。


純純は助態に見られて俯いて頬を染めた。


くびちは、これが私の涙の味よ。と言って指で目尻の涙をすくって助態の唇にその指を付けた。


もふともは、何見てんだい。と言いながら頬を染めた。


ルブマは涙を拭いて助態に微笑んだ。


ぱいおは、ウチは別に今のところして欲しいことはないっすよ。と言いながら涙と鼻水を助態の服で拭った。(「あー!俺の服が!」「ウチの盾の仕返しっす。」)


ぶららはパンツをわざと見せながら、ボクがして欲しいことはただ1つ。分かるよね?と言った。


ぷーれいは涙で腫れた目で助態を見つめ、けけけけけ結婚してください!と言った。(くびちとルブマとぶららが、「何言ってんのよ。」「ダメに決まってます!」「ボクの助態だよー。」と同時に言って無理やり否定させる。)


ハクダクとアンアンとあへはそれぞれに、人間はよく分からないなどと口にしていた。


全員を見渡した後助態は、みんなの願いを叶えるのがどれだけ困難かを再確認した。

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