第七エロ リンネーン
助態の願いを聞き入れた宿は、雪崩を発生させ、大鬼族を出現させた。
さらに、出現した大鬼族――ぽちん――は、助態たちを肩に乗せて運んでくれることを承知してくれた。
おかげで助態たちはあっという間に、人間が住んでいる町――リンネーン――まで到着した。
「ありがとなー。」
ぽちんはまた何かあれば助けてくれると言い残して、山へ帰って行った。
「それにしても助かったねぇ。」
町の宿屋を目指しながらもふともが言う。
もふともの言う通り、このままではずっと淫魔族の温泉宿に足止めを食っていた。
「ま、助態の願いが叶って良かったじゃないか。」
ぽんっともふともが肩を叩く。
しかし助態はどうせなら、もっとエロい願いをしておけばよかったと後悔していた。
「なーんか、しょーもないこと考えてませんー?」
ぱいおがジト目で助態を見る。
「か、考えているわけないだろう?」
笑って誤魔化すもどうやら誰も信用していないようだ。
「さてと。ボクはこの町初めてだし、そろそろ自由人らしくここらへんでお別れするよ!またどこかで会った時はよろしくね!」
ぶららが助態にウインクして、走り去って行く。最後まで助態にパンツを見せることを忘れない。
今日は紺色だ。
「あら♡」
助態が興奮するとすぐに、アンアンがその性欲を食べてしまうのも、もはやお馴染みになってしまった。
「慌ただしい奴だな。」
遠くにだんだんと小さくなるぶららの姿を見ながら、悲しみをこらえて助態が言う。
アンアンが仲間になって、助態以外のほとんどのメンバーにとっていいことは、正にこれだった。
助態が他の女に発情しないこと。
くびちとルブマが言うには、やっと安心して助態を監視しないで済むとのことだ。
『俺監視されてたのかよ。』
と思ったのは言うまでもない。
●
リンネーンの町はさほど大きくなかった。
ラーガの村と同じくらいの規模だろう。カローンよりは大きいけど湖よりは小さい。
「さてと、あるか分からんけど兎獣族の情報や、カローンの情報を聞きこむか。」
宿を確保した後に助態が言う。
「食糧とかも調達したいよなー。この辺で何か採れれば換金所に持っていくんだけど、この吹雪じゃなぁ。」
ぽりぽりともふともが後頭部を掻きながら言う。
「他にお金を稼ぐ方法と言えば、ラーガの時みたいにバイトか?」
「あ!アタイはもう嫌だからね!またスカートめくられたらたまんないよ!」
助態と2人で歩きながらもふともが言う。
とりあえず2人に与えられた任務は、兎獣族の情報とカローンの村の情報収集だった。
「くびちと純純がバイトを探してくれるって言ってたぞ?」
「何それ!聞いてないよ!純純がバイトするならアタイもする!」
「いやいやいや。もふともは俺と一緒に情報収集だろ?」
「いやだ!アタイは純純と一緒にバイトする!純純にどんな恰好をさせようかねぇ?ミニスカートとか似合いそうじゃないかい?」
鼻血を垂らしながらもふともが興奮して言う。
短い銀髪を左右に揺らしながらあれやこれやと妄想していた。
「純純ってほんとエロ要素ないよなー。」
どんな恰好が似合うか助態も考えながら言う。
「何言ってんのアンタ。純粋だからいいんじゃないか!1から教えられるんだよ?自分色に染められるんだよ?」
まるで男みたいな言い方だ。
「でも初めてってめんどくさいし。」
「そ!そうなのかい?」
ずいっと助態の顔の近くまで顔を寄せてきた。
「まぁ人によるのかもしれないけど、俺はいちいち教えたりするのがめんどくさいって思っちゃうかな。」
「そういうもんなのか…」
ちょっと残念そうにするもふともを見て、ふと助態は思い出した。
「そういえばもふともはまだ初体験してないんだっけ?」
「わっ、悪いかよ?アンタらと会うまでは盗みで食ってたような人間だぞ?男っ気どころか友達すらできたことないよ。」
ちょっと頬を染めながら、ま、今の暮らしは悪くないけど。と付け足した。
「それにあんただって、前の世界ではどうか知らないけど、こっちの世界ではまだシてないんだろう?なら童貞と変んなくないかい?」
もふともの言葉を聞いて助態の体に衝撃が走った。
確かにそうだ。
いくら生きてた世界でヤリまくったとしても、こっちの世界ではまだ童貞。それどころか1人ですら抜いていない。
助態はおもむろに、エクスカリハーを服の上から見下ろす。
「早く卒業せねば!」
真面目な顔で言うと、もふともがアホ。と突っ込んだ。
●
ルブマとぱいおとハクダクとアンアンは、村の外を一応見て回る。
何か採れる物はあるか、倒せそうな動物やモンスターはいないのかを確認するためだ。
しかし、視界は真っ白。
「勇者様の股間から出る白い液体とどちらが白いかいい勝負ですね。」
ハクダクが目を輝かせて言うと、ぱいおが聞き返す。
「ウチ男のそういうの見たことないんすけど、真っ白なんすか?」
「人によるけど、真っ白ってことはあまりないわよ?」
後ろを歩くアンアンが答える。
さすがは淫魔族。男のそういうのを勝手に搾取して勝手に種付けされて繁殖する種族なだけに、詳しい。
「い、いちいちえっちぃ話をしなくていいんですよ!」
「あーらルブマちゃんだって、お酒が入ると淫乱になるじゃないですかー。」
「い!淫乱って何ですか!そんなことはありません!」
顔を真っ赤にして否定する。
「そういえばルブマさん1人でシてるって言ってましたけど、最近大丈夫っすか?溜まってるなら1人で部屋に戻ってもいいっすよ?」
「溜まってないもん!」
顔を真っ赤にしてルブマは1人部屋に戻って行った。
「1人で絶対するっすね。」
「シますね。」
「確実にするわね。」
ぱいお、ハクダク、アンアンの3人はルブマの後ろ姿を見ながら頷いた。
すると3人の先から何やらいやらしい声が聞こえてきた。
「あっ♡だめっ♡やめて…」
「ここここここれはまずいっすよ!」
ひそひそ声でぱいおが他の2人に言う。
「姿は雪で見えないけど、確実にヤってるわね。」
アンアンが分析する。
「こっそりと離れますか?それとも覗きますか?」
ウキウキしながらハクダクが訊く。
「覗くって、ウチ他人のそういうのに興味ないっすよ?」
「え?ぱいおちゃんともあろう方が?私は凄く興味があります。」
ぱいおとハクダクが小さな声でそんなやりとりをしていると、さっきのいやらしい声が、助けてと言った。
「これってもしかして犯されてます?」
ぱいおが他の2人を見る。
「助態さん的には助けるんでしょうねー。」
ブツブツ文句を言いながら、ぱいおは声のする方へ向かう。
その後をハクダクとアンアンが付いて行く。
「視界が真っ白で何も見えないのがイラつくっすねー。」
ぱいおが言うと、後方からアンアンの声がした。
「この吹雪、例年だとあと数日は続くわよ。」
「エロ盛りの淫魔が言うなら間違いなさそうですね。」
どうもハクダクはかなりアンアンを敵視しているようだ。
「下ネタしか言えない獣の分際でうるさいわよ。」
フンッとアンアンが鼻を鳴らす。
「ちょっと2人とも。ケンカなんてしてる場合じゃないっすよ。あれ。」
ぱいおがあれ。と言って指を指した先には、吹雪で視界が悪くても分かる、水色の髪の毛の少女がモンスターに襲われている姿だった。
いや、正確には――
「犯されてる?」
アンアンの言葉通り、水色の髪の毛を二つ結びにしておさげにしていたであろうその髪型は、今ではボサボサとなり、辛うじておさげだった程度に分かるほど。
顔中泥だらけもとい雪だらけとなっていた。
うつ伏せにさせられ、片手を後ろに回され、頭を押さえつける形で背後からモンスターに挿入されていた。
「モンスターが人間をこういった形で襲うなんて聞いたことないわ…」
アンアンが吐き気を催す。
「さすがに酷すぎます…」
隣でハクダクも吐いている。
「でもこのまま放ってはおけないっすよ。」
2人の背中をさすりながらぱいおが言う。
「ウチらのリーダーの助態さんなら絶対に助けるっすからね。それに、さすがに犯されてるのを素通りはできないっす。」
犯されている少女がぱいおたちに気づいた。
「あっ♡お願い…んっ、助け…て…」
「感じてるんすか?」
呆れ気味にぱいおが言う。
そう言いながらも必死に近づこうとするが、雪と吹き付ける吹雪のせいでそう早くは前に進めない。
それを知っているからなのか、少女を犯しているモンスター――エロサル――は、腰の動きを速めながらも、犯すことをやめない。
「感じてなんか…ん♡…いま…せっんっ♡」
どうやらそのままモンスターに出されてしまったようだ。
「あぁぁ…また出されてしまいました…」
少女が泣きながら衣服を着る。
「「「また?」」」
ぱいお、ハクダク、アンアンが同時に訊く。
どうやらこれが初めてではないようだ。
●
ぱいおの知らせを聞いた助態ともふともは急いで宿に戻った。
バイトを探していた純純とくびちもハクダクの知らせを聞いて急いで戻って来た。
エロサルに襲われていた少女はぷーれいと名乗った。
チアガールを彷彿させる服装に、水色の髪の毛を二つ結びにしておさげにしている。
とても可愛らしい少女だった。
「何でかは分からないのですけど、私、外でモンスターと遭遇すると必ず襲われるんです。」
とぷーれいは言った。
襲われるとはつまり、さっきみたいに犯されるという意味だ。
なぜか命を狙われたことはないそうだ。
「不思議な体質ねぇ。」
アンアンが言う。
通常、モンスターは他の種族と繁殖行為をしない。しても繁殖できないからだ。
「そもそもモンスターが人間とか他の種族に欲情するなんてあり得ないだろう?」
もふともが言う通り、繁殖できない以前に性的興奮を覚えない。
でもぷーれいにはなぜか興奮するようだ。
「ぷーれいさんは外に何か用事があったのですか?毎回襲われるということは、その…用心とかした方がいいと思うんですけど。」
少し言いにくそうに純純が言う。
確かに言われてみればそうだ。
毎回モンスターに襲われることが分かっているのに、1人で外に出歩くなんて不用心にもほどがある。
「こんな格好をしているからなのか、毎回モンスターに襲われることをみんな知っているからなのか、私と一緒に町の外に行ってくれる人がいないんです。」
ヒラヒラのスカートの裾をぎゅっと握りながらぷーれいが言う。
「勇者様!」
純純が助態に詰め寄る。
助態には純純が何を言いたいのかが分かった。
「も…もし良かったら。どこか行くところがあるなら、俺達が護衛しようか?」
半分無理やりに言わされた言葉だった。
むしろ助態は今それどころじゃなかった。
助態はコスプレフェチでもある。
中でもナース服やチアガール、スク水は大好物だ。
踊り子の衣装だと言う、チアガールとなんら変らない服装は、助態の性癖に刺さっていた。
加えてさっきからチラチラ見えるパンツが気になってしょうがない。しかもそれを目ざとくアンアンが助態の性欲を吸い取るもんだから、ムラムラとげんなりが行き来していた。
「よろしいのですか?」
ガバッと起き上がって助態の手を握る。
その時に胸元がはだけてピンクのフリルがついたブラが見える。
「あれ、天然でやってるのかしら?」
疑いの目でくびちが言い、隣でルブマが苦笑いをしている。
話を聞いてみると、ぷーれいは近隣の都市の拠点になっているサイネ市に用があるらしかった。
助態たちも、リンネーンの町では兎獣族の情報やカローンの村の情報は出て来ない気がしていた。
吹雪が収まり次第、ぷーれいと一緒にサイネ市へ行くことになった。
●
ぷーれいも暫く助態たちと一緒にリンネーンの町に滞在することが決まったものの、吹雪は一向に止まなかった。
もふともがわがままを言うので、もふとも、くびちが純純と共にバイトを探すことになり、飲食店での給仕が決まった。
ルブマ、ぱいお、ハクダク、アンアンは相変わらず町周辺の探索だが収穫はなかった。
もふともに代わって助態と一緒に情報を集めるのはぷーれいだった。
「助態さんも私に欲情したりしますか?」
巨乳をボインボイン揺らしながらぷーれいが聞く。
こういうところが、人間には理性があるもののモンスターには理性がないから、欲情させるのかもしれない。
すらっとした白い細い足が前に進んで行き、小さなお尻がプリプリと動き、大きな胸が揺れる。
助態のエクスカリハーは当然、暴発状態になった。
「欲情か…しないと言えば嘘になるけど、恰好とかそういうのも含めてだから。」
正直な意見を言うと、なぜかぷーれいは微笑んだ。
正直な人は好きです。
そう言って助態にキスをした。
「みんなには内緒にしていてくださいね!」
軽くウインクをしてぷーれいは先を歩き出した。
目指すのは、山の工場と呼ばれる工場だ。
リンネーンの町は過酷な環境から作物が育たない。
その代わり工業が盛んで、その中心がこの山の工場と呼ばれる工場だった。
ここは町で一番人が集まる場所なので、話を聞けるかもしれないとぷーれいが教えてくれたのだ。
山の工場は名前とは裏腹に山とは全く関係ない場所にあった。
木や金属を加工して様々なアイテムなどを作り出しているようだ。
「例えばこの鉄の鋏は大切断って名前なんだけど、遠くからでもモンスターに攻撃ができる。ブレスとか遠距離攻撃してくるモンスターじゃなければ十分通用する。」
工場長のおっさんが力作を1つ1つ語る。
「今一番力を入れてるのがこれだ。」
そう言って工場長が取り出したのは、長い鉄の棒だった。
「ただの鉄の棒?」
助態が言うと、工場長はちっちっち。と舌を鳴らした。
「ただの棒じゃないんだぜ?叩いた先端が爆発する!そんでもって棒は破壊されないって優れものだ。」
「そんなものが作れるのですか?」
驚きながらぷーれいが聞く。
「今のところ案だけで作成には至ってねぇ。」
悔しそうに工場長が言う。
そこで助態はハクダクの存在に思い至った。
「ちょっと待っててください!」
そう言った助態は走り出してハクダクを呼びに戻り、事情を説明して爆発する鉄の棒の開発を手伝って貰うことにした。
報酬は、完成品を貰うこと。
何もしないで吹雪が止むのを待つよりもいいと思ったのだった。
ハクダクも快く引き受けてくれ、武器が開発できるまでリンネーンの町に滞在することになった。
●
ハクダクが山の工場の人達と武器の開発をしている間に吹雪は止んだ。
「下ネタしか話せない獣なんか放っておいて先を急ぎましょ?」
と言うのはアンアンだ。
無論、そんなことはしない。
吹雪は一度収まると暫くは発生しないらしいので、暫くは滞在しても平気だという理由が1つ、もう1つは――
「やっぱりあの武器が気になるの?」
アンアンが言う通り、助態にはとても気になる武器だった。
気になるというよりも使ってみたいという気持ちが強い。
「叩いたら爆発する棒だからなー。どんなものか気にはなるだろ?」
しかし女性陣にはこの気持ちが理解できないらしい。
『男特有の感覚なのかな?』
頭をポリポリ掻きながら助態はメンバーを見渡す。
ヒロインの純純は戦闘に関して無能。
魔術師のくびちは使えない魔術ばかり習得する。
シーフのもふとものスキルは純純のパンツを盗むことと金を盗むことに特化している。
アーチャーのルブマはそもそもまだ戦っていない。
騎士のぱいおは相手の攻撃を受けることに特化。
ぷーれいは犯される専門。
つまり、敵を倒せるメンバーがいないのだ。
アンアン、ハクダクがどれ程強いのかは不明だが爆発する鉄の棒が役に立たないわけがないだろう。
「ま、戦いには役に立つだろ?」
とメンバーを見渡した後に助態が言う。
「確かに本当にそんな物が作れれば、モンスターとの戦闘で有利になるかもしれませんね。」
純純が頷いて更に続ける。
「モンスターには遭遇しないにこしたことはないですけど…」
ぷーれいを見つつ言うところが純純らしい。
本当に心配しているのだろう。
「完成までにはどのくらいかかるの?」
くびちが助態に聞く。
「ハクダクが言うには数日中らしいけど。」
ハクダクには、リスの穴からリンネーンの町までの行程日数を間違えるという前科がある。
「最悪の場合にはかなりかかることもあるんじゃない?」
くびちの指摘はもっともだ。
そもそもルブマの家族がいるかもしれないカローンの村へ向かうことが目的の旅。その前で時間を費やしていたら意味がない。
「確かに…兎獣族を仲間にしてカローンに潜入するのが目的だし、ここで足止めくらうわけにはいかないねぇ…」
もふともが顎に手をやりながら言う。
いかにも考えている風だが、この町の生活に飽きてしまったのが本音だろう。
「いえいえいえ。私の家族のためにハクダクさんを置いて行くなんてできませんよ!」
「あと3日待って、完成しないなら武器は諦めるってのでどうだ?」
助態が提案し、みんながそれを了承した。
結局武器は完成せず、完成を諦めることになった。
「私は何とかこの武器を完成させたいので、皆さんとはここでお別れです!またいつかどこかでお会いしましょう!」
町を発つ時にハクダクが言う。
一緒に旅をしようとしたのだが、元々栗鼠族は工作が得意な種族でそういったものを作るのが好きなようだ。
旅よりもハクダクは武器の完成を選んだ。
こうして、メンバーが少し変わりながら一向はリンネーンの町を後にした。
目指すは地域の交流の都市、サイネ市だ。
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