手土産(焼鳥)
しょうわな人
第1話 今日も妻と
俺が仕事帰りにいつも寄る赤提灯が一軒ある。今日も仕事が定時に終わって、帰りに寄る予定で歩いていたら、向かい側から俺の元妻が今の旦那と手を繋いで歩いてくるのが見えた。
妻の浮気により離婚した俺だが、別に慰謝料も請求せずに、キレイに別れてやった。貯金も半分渡したし。ただ、貯金は元妻がかなり使い込んでいたので額はかなり減っていたが。
俺を見つけた新婚夫婦は何の用事か、俺に向かって歩いてくる。そして元妻が開口一番に、
「ちょっと
そんな事を言ってきた。
ん?何の事だ。俺は身に覚えがないからハッキリとそう言ってやった。
「どちら様か知りませんが、私は余分な貯金なんてしてませんよ。言い掛かりは止めて下さいね」
俺の返事に白々しいみたいな目つきに変わる元妻だが、そこに口を挟んだのは元妻の浮気相手にして、現旦那の男だった。
「まあまあ、隠す事はないでしょう。
うん、やっぱり元妻と一緒になるぐらいだからコイツも頭は良くないな。あっ、結婚してたんだから俺もか……
少し落ち込みながらソイツに向かって俺は言ってやった。
「二人とも、別れる際には俺に付きまとわないって念書を出したのを覚えてないのか? まあ俺はコレで慰謝料が手に入るから構わないけど、お前らホントに似た者同士だよな」
俺の言葉にカッとなったのか元妻が喚き散らす。
「ふざけないでよ! アンタみたいなうだつの上がらない男が、何で高校卒業したてのあんな可愛い
凄い意見が出たが俺はさっきからスマホで緊急連絡を弁護士に入れていた。そして、その時はやって来た。
「はい、お二人ともそこまでです。一緒に警察に来て貰いましょうか。接近禁止を破ったようなのでね」
やって来たのは俺の同級生にして弁護士の
「サンキュー、助かったよ。
「
「ああ、頼んだよ」
「早く帰って美菜ちゃんを安心させてやれよ」
「大きなお世話だ」
そこで俺は満と別れて、赤提灯に向かった。が、店には入らずに親父さんにネギマと
親父さんは黙ってニコッと笑いながら手早く焼いて持たせてくれる。それを手に家に帰った。
「お帰りなさい。あ、今日も買って帰ってくれたの! 有難うー」
俺の可愛い妻が喜びを満面に表して出迎えてくれる。
最近はこの焼鳥で二人で晩酌(妻はノンアルだが)を楽しんでから、寝るのが習慣になっていた。
妻は幼い頃からコレを食べて育ったので、買って帰ると非常に喜んでくれる。
俺がこの可愛い妻と結婚した当初は、他の常連客から、俺達のアイドルを返せ! と攻め立てられたモノだが、妻が一喝してくれたお陰でそれも無くなった。
常連客だった俺のどこが良かったのか、高校を卒業して間もない妻から告白された時には驚いた。けれども、理由を聞いて納得した俺は離婚して半年たっていたし、バツイチだけど良いかなと確認をしてから、妻と籍を入れた。親父さんは喜んでくれたよ。
理由だって……
ご想像にお任せするよ。
手土産(焼鳥) しょうわな人 @Chou03
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます